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●「ブログde秀歌鑑賞」 №6  2011年12月【芦屋】

2011年12月16日 18時58分07秒 | 芦屋教室
芦屋教室 「ブログde秀歌鑑賞」 №  2011年12月(松村正直選)

今回は、去る2011年11月30日(水)に開催されました
「私の好きな歌-家族と読み解く河野裕子」講座にちなみまして
永田淳さん、永田紅さん、松村正直さんの歌を取り上げていただきました。

写真左上から時計回りに、河野裕子さん、永田 淳さん、松村正直さん、永田 紅さん

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その細き身を浮かしいる風止みて蜻蛉は翅を動かし初めぬ
     永田 淳(ながた・じゅん) 『1/125秒』


風に乗ってホバリングするように静止していたトンボが、風が止んではばたき始めた様子を
詠んでいます。
繊細な観察眼が光る一首で、蜻蛉の透き通る翅の動きが目に見えてくるようです。
歌人の永田和宏を父に、河野裕子を母に持ち、
中学2年から短歌を作り始めたという永田淳(1973~)の第一歌集に収められた歌で、
この歌集には、他にもオニヤンマ、熊蝉、オハグロトンボ、
マメコガネ、ミヤマクワガタ、馬追虫、つくつく法師など、さまざまな昆虫が登場します。
昆虫好きな少年の頃の気持ちを、大人になっても持ち続けているのではないでしょうか。

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人はみな馴れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天
     永田 紅(ながた・こう) 『日輪』(にちりん)


上句のフレーズが印象的な歌です。
確かにそう言われれば、10歳の子どもも、20歳の青年も、50歳の大人も、80歳の老人も、
みんな等しく初めて体験する年齢を生きているわけです。
人生は常に馴れることのない、未熟な日々の繰り返しなのかもしれません。
ユリカモメは毎年11月頃になると京都の鴨川にやって来ます。
冬の風物詩と言ってもいいでしょう。
ユリカモメの飛ぶ冬の曇り空のやや重たい感じが、作者の感慨とうまく響き合っています。
永田和宏・河野裕子の長女でもある永田紅(1975~)の第一歌集『日輪』の巻頭歌です。

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あなたとは遠くの場所を指す言葉ゆうぐれ赤い鳥居を渡る
     松村正直(まつむら・まさなお) 『駅へ』


日本語の「あなた」は、普段は二人称の「貴方」として使われますが、
もともとは自分から遠い場所を指す「彼方」の意味がありました。
カール・ブッセの詩にも〈山のあなたの空遠く「幸」(さいはひ)住むと人のいふ〉という
一節がありますね。
この歌を詠んだ頃、私、松村正直(1970~)は大分市のアパートでひとり暮らしをしていました。
そして、遠くに住む人のことを思って詠んだものです。
初出は2000年1月31日付の「毎日新聞」。
毎日歌壇で河野裕子さんに特選に取っていただいた歌ということもあって、
私にとって忘れられない一首となっています。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (伊関彰、森洋輔)
2019-03-30 22:10:54
平井佳織、森洋輔
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Unknown (永田紅)
2019-03-30 22:11:14
永田紅
返信する

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