歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

カークビー&ルーリー『Time Stands Still』

2009年04月09日 | CD ルネサンス-イギリス
Time Stands Still
Emma Kirkby
Anthony Rooley

1985年ライブ録音。45分56秒。Hyperion。サブタイトルが"Lute songs on the theme of mutability and metamorphosis by John Dowland and his contemporaries"。'mutability'は「無情。変わりやすさ」ですと。'metamorphosis'は「変容」。

カークビーの声のコンディションは最高。ちょっとした表情の変化がじつに魅力的で、けっして大袈裟にならない表現ながら説得力は無類。いちいちピタリと決まります。カークビーのすべてのCDのなかでもっとも完成度の高いのが、この録音。わたしはそう思うし、そういう意見をwebでも複数読みました。

カークビーが全盛期に遺したすばらしいプロダクション。ダウランドがすばらしいのは言うまでもないことですが、トーマス・キャンピオンやジョン・ダニエルなど、ダウランドのライバルたちの曲もなかなか心にくく、エリザベス朝の音楽の稔りを垣間見ることができます。

ルーリーのリュートはあくまでもカークビーを引き立てるサポートに徹していて、頼もしく、好ましい。最後に拍手が入っているのですが、これがなぜかね、じーんと心を打つんです。ああ実際にこんなすばらしいプログラムでカークビーが歌い、それを聴いた聴衆がいたんだ、というそのことになぜだか心が温かくなるんですよ。

カバー写真は、古楽の録音にしばしば使われる、イギリスはドーセットのフォード・アビーだそうです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿