歌わない時間

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コンソート・オブ・ミュージック『イギリス・マドリガル集』

2011年12月17日 | CD ルネサンス-イギリス
The Silver Swan
English Madrigals - Gibbons・Wilbye・Morley
The Consort of Musicke
Anthony Rooley
458 093-2

1975,81,82年録音。2CD。73分20秒/72分05秒。DECCA/L'Oiseau-Lyre。それぞれ1枚のアルバムとしてリリースされたギボンズ、ウィルビー、モーリーの3枚を、CD2枚に組み直したもの。いま振り返るとおっとりした感じの演奏ですが、しかしみずみずしさは失われていません。エリザベス朝のマドリガルが好きなら、手もとに置いて損はない。

カークビー以外の主なキャストは、75年録音のギボンズに、クリスティーナ・パウンド、ケビン・スミス、マーティン・ヒル、ロジャーズ・カビィクランプ、デイビッド・トーマス。81年録音のウィルビーと82年のモーリーはメンバーがかなり重なっていて、ポピー・ホールデン、ジャクリーン・フォックス、イブリン・タブ、キャシー・カス、メアリー・ニコルス、ジョセフ・コーンウェル、アンドルー・キング、ジョン・ミルン、フランシス・スティール、リチャード・ウィストライク、など。

冒頭、いきなりカークビーのソロでギボンズの〈The Silver Swan〉。なんか感慨深いですなあ。なにせ1975年ですよ。はっきり言ってこの時カークビーの声はあどけなく、テクニックはまだ未完成で、フレーズの最後の処理などに詰めの甘さが聴いてとれる。そしてこのあとカークビーはぐんぐん巧くなって、70年代後半以降のダウランドや、パーセル、ヘンデルなどの仕事で、やがて押しも押されもしない古楽の女王へと成熟していくわけですな。ヒルやカビィクランプも若々しく、彼らの録音をあれやこれや聴いてきたわたしとしてはうれしい。美声のヒルのソロがないのが残念。しかしあらためて思うのですが、このギボンズは聴いて楽しむというよりは──いやもちろん聴いても楽しいんですが──むしろ、ああこういう曲歌ってみたいなあと思わせられる演奏だなあと。

75年のギボンズと、80年代に入ってからのウィルビー/モーリーではかなり感じが違います。前者は、カークビーの声だけでなく演奏全体もちょっと固い。コンソート・オブ・ミュージックはこのギボンズのあと、70年代の後半に例のダウランドのリュート歌曲全集を完成させて、そのあと、ここに聴くウィルビー/モーリーを録音したって順番になるのですよ。このCDを聴いても、あのダウランドの全集はこのグループを成熟にみちびいた大仕事であったということがよく分かる。

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