ジャネット・ニール/坂口玲子訳『天使の一撃』(ハヤカワ・ミステリ文庫)。英国推理作家協会賞新人賞受賞作。英原著は1988年刊。邦訳は1990年刊。もうだいぶ前に品切れになってます。
この『天使の一撃』については当然ここで書いていたつもりになっていましたが、調べてみると書いてなかった。ネットで検索しても、ほとんどこの本の話は聞かない。ただ、わたし自身がむかし某所(!)に書き込みしたのが引っかかりました。あと、ブログをはじめる前にわたしがやっていた日記サイトでも少し書いていたけど、その内容はもうネット上には残ってないし、そこで、また忘れる前に、ここでこの本についてまとめておくことにします。
『天使の一撃』はかんじんのミステリとしての深みがイマイチで、いつの間にか品切れになってしまいましたが、ヘンデリアンとしては面白く読みました。ロンドンの高級官僚の日常が音楽ネタをからめて描かれています。ヒロインが貿易産業省の官僚で、そしてアマチュアの合唱団員でもある。仕事のあとに『メサイア』の練習に行くんです。
さらに、ヒロインの弟が、クラシックからポップスまでこなすプロのシンガーなんですわ。そのシンガーが、小説のわりとはじめのほうで『メサイア』のソロを歌う。そしてその演奏のあまりの素晴らしさに、姉は袖をぬらすのです。読んだ当座はそんな歌手いるもんかと思いましたが、ラッセル・ワトソンみたいなのを想定すればよかったのですかね。ただし、ニールの好みはワトソンのようなのぢゃなく、ポール・エリオットみたいな、もっと澄んだ軽い声のテナーらしい。
ポール・エリオットはホグウッド盤の『メサイア』のテナーのソリストです。作者のニールは、ホグウッド盤を当時愛聴していてポール・エリオットのテナーソロを念頭におきつつ、あそこの件りを書いたに違いない。ニールの文章からわたしはそう確信しましたよ。『メサイア』歌いのテナーはあまたいますが、エリオットほどのメロウボイスはまたとない。ただし、声の美しさ、英語のディクションの端正さとひきかえのようにして、テクニックにおいてやや聞き劣りするのがエリオットの弱点なのですが…。
わたしはこの本のことを、広島にいたころ先輩から教えていただいた。『メサイア』が出てくる小説があるって。ヘンデリアンには、古本屋をあさって読んでいただきたいと思う。ジャネット・ニールが音楽好きだから必然的にそうなるのだろうが、この小説の中のイギリス人の、音楽に対する親近感は、わたしのような歌う人間にはとても好ましく映る。
この『天使の一撃』については当然ここで書いていたつもりになっていましたが、調べてみると書いてなかった。ネットで検索しても、ほとんどこの本の話は聞かない。ただ、わたし自身がむかし某所(!)に書き込みしたのが引っかかりました。あと、ブログをはじめる前にわたしがやっていた日記サイトでも少し書いていたけど、その内容はもうネット上には残ってないし、そこで、また忘れる前に、ここでこの本についてまとめておくことにします。
『天使の一撃』はかんじんのミステリとしての深みがイマイチで、いつの間にか品切れになってしまいましたが、ヘンデリアンとしては面白く読みました。ロンドンの高級官僚の日常が音楽ネタをからめて描かれています。ヒロインが貿易産業省の官僚で、そしてアマチュアの合唱団員でもある。仕事のあとに『メサイア』の練習に行くんです。
さらに、ヒロインの弟が、クラシックからポップスまでこなすプロのシンガーなんですわ。そのシンガーが、小説のわりとはじめのほうで『メサイア』のソロを歌う。そしてその演奏のあまりの素晴らしさに、姉は袖をぬらすのです。読んだ当座はそんな歌手いるもんかと思いましたが、ラッセル・ワトソンみたいなのを想定すればよかったのですかね。ただし、ニールの好みはワトソンのようなのぢゃなく、ポール・エリオットみたいな、もっと澄んだ軽い声のテナーらしい。
ポール・エリオットはホグウッド盤の『メサイア』のテナーのソリストです。作者のニールは、ホグウッド盤を当時愛聴していてポール・エリオットのテナーソロを念頭におきつつ、あそこの件りを書いたに違いない。ニールの文章からわたしはそう確信しましたよ。『メサイア』歌いのテナーはあまたいますが、エリオットほどのメロウボイスはまたとない。ただし、声の美しさ、英語のディクションの端正さとひきかえのようにして、テクニックにおいてやや聞き劣りするのがエリオットの弱点なのですが…。
わたしはこの本のことを、広島にいたころ先輩から教えていただいた。『メサイア』が出てくる小説があるって。ヘンデリアンには、古本屋をあさって読んでいただきたいと思う。ジャネット・ニールが音楽好きだから必然的にそうなるのだろうが、この小説の中のイギリス人の、音楽に対する親近感は、わたしのような歌う人間にはとても好ましく映る。
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