歌わない時間

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佐藤大介『オーディション社会 韓国』

2014年03月02日 | 本とか雑誌とか
佐藤大介『オーディション社会 韓国』(新潮新書)読了。でも読んだのはだいぶ前です。去年の夏、『シークレット・ガーデン』をNHKで見て、現代韓国事情について自分があまりにも無知なことを悟り、手ごろな本を物色したんですよ。あまり右がかってないものをね。この本は共同通信社のソウル特派員だった人が書いた本で、2011年6月発行。すでに日本と韓国との仲がこじれてから書かれた本ですが、実際読んでみると、上からでもなく下からでもなく、ありのままに、書き手が自分の目で見てきた韓国の現状を伝えようとしていると思いました。

でもタイトルの『オーディション社会』というのは成功していませんね。素直に「超競争社会」としたほうがよかったのではないか。じっさい腰巻きには、「就職のために整形/家計の半分が教育費/先進国1位の自殺率……/「超競争社会」はこんなにツライ!」とある。そんなツライ国に生まれなくてよかった、というのが、わたしの正直な感想でした。

『シークレット・ガーデン』の始めのほうの回で、キム・ジュウォン(ヒョンビン)が、キル・ライム(ハ・ジウォン)が借家住まいであることにひどく拘泥っている描写がありました。借家住まいの女を恋愛の対象にするなんてオレとしてはあり得ない、みたいな文脈だった。わたしはこれに腑に落ちない感があったのですが、第6章「お住まいはどちら?」で納得した。韓国においては、「上位二〇パーセントの高所得層が、韓国の土地の九〇・三パーセントを所有している」(p.170)そうですよ。ものすごい格差社会。ふつうのサラリーマンがマイホームを手に入れるのはたいへんなことらしい。キム・ジュウォンはもちろん「上位二〇パーセント」の中の人なので、金持ち君であるキム・ジュウォンにしてみれば、賃貸の女というのはそれだけでもう、恋愛対象から外れてしかるべき、取るに足らぬ存在なのですね。たしかにそれくらいイヤミな性格の男ではあった。

第7章「家庭崩壊と自殺大国」。そういえば高齢化率は韓国のほうが日本よりも深刻なんですもんね。わたしは『美しき人生』を、韓国ではまだこういう大家族のドラマが成立するんだ、と思って郷愁を感じていたわけですが、韓国にあってもヤン家のような大家族は今どきめづらしい。ソウルではダメで、舞台をチェジュ島にもってきたのも、チェジュ島ならまだなんとかなる、という意図もあったんだろうと思います。

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