歌わない時間

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ガーディナー『パーセル/アーサー王』

2008年03月29日 | CD パーセル
Purcell
King Arthur
Smith, Fisher, Priday, Ross, Stafford, Elliott, Varcoe
Monteverdi Choir
English Baroque Soloists
John Eliot Gardiner
4509-96552-2

1983年録音。51分45秒/39分38秒。ERATO。これはいいですよー。メリハリのきいた粋な『アーサー王』が聴きたければ、むしろピノックよりもこのガーディナーのほうがいいかもしれません。まあ、どちらも高い水準で満足させてくれるので、どちらを選んでも後悔はしないとは思いますけどね。

むかし、NHK-FMでこのガーディナーの『アーサー王』が抜粋でかかったのを聴いて、それ以来、いつかは手に入れようとずっと思っていましたが、なかなかCDにならず、結局入手するまでに10年くらいかかりました。とくに印象が強かったのはポール・エリオットがソロを歌う"Come, if you dare"です。曲そのものの華やかさ、ソロと合唱が交互に歌う面白さもさることながら、エリオットの美声と巻き舌に、勇み立つようなかっこよさを感じました。パーセルはエリオットにとってもっとも相性のいい作曲家のひとりだと思います。

エリオット以外のソリストもスティーブン・バーコーにしろアシュリー・スタフォードにしろ軽い声の人が選んであってこれが成功しています。ソプラノにジェニファー・スミスがいますけど、ここではそんなに重たさを感じさせず、いい感じでアンサンブルのなかに収まっています。"Fairest Isle"はソプラノのジル・ロスで、ロスのソロはこの曲のみ。あどけない無垢な歌いっぷりで、わたしは嫌いぢゃありませんけどねえ。

第4幕のパッサカリア"How happy the lover"の繊細で都会的な感じ。あの曲の美しさはこたえられません。そしていつも巧いなあと思うのは5幕の酒盛りのシーン。ここはいつ聴いても感心する。というのはパーセルとガーディナーと両方に。

去年の10月にトリニティ・クワイヤの『アーサー王』を聴いて、それ以来、この曲を聴く機会が増えました。『ダイオクリージャン』が、ちょっとおとぎ話的な雰囲気を持っているのとくらべると、こちらの『アーサー王』はもうすこしなまなましいというか何というか、英米人の愛国心をかき立てるような何かがあるような気がします。

ガーディナーの判断によって、パーセル協会版とはことなる楽譜によって演奏されている箇所があります。とくにフィナーレ。ソプラノソロ"Saint George, the patron of our Isle"はパーセル協会版より短く、後に続く合唱"Our natives not alone appear"と同じメロディーをソロが先取りして歌うかたちになってます。そして最終合唱のあとにシャコンヌ。