歌わない時間

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『獄門島』

2006年01月20日 | 演ずる人びと
『獄門島』の映像化は六回で、最初は1949年の片岡知恵藏主演の映画。早苗は三宅邦子。次が1977年で、この年、古谷一行の横溝正史シリーズと石坂浩二の東宝版が競合。古谷版の早苗は島村佳江。これが7月30日から4回の放送で、同年8月下旬には、石坂版が封切られた。こちらの早苗は大原麗子。浅野ゆう子が鬼頭千万太の三人の妹のひとりとして出ていたのは有名。その後、1990年に片岡鶴太郎・遙くららのテレビドラマがある。これはその三姉妹がすごい。牧瀬里穂・高橋由美子・持田真樹。さらに1997年にはふたたび古谷一行で単発のドラマが制作される。早苗は秋吉久美子。これはなぜか「こどもの日特別企画」としてのドラマだったそうだ。変な企画だ。これには売れる前の藤木直人が鵜飼さんの役で出ている。過去、三善英次やピーターがやった美青年の役。そして最近のが2003年の上川隆也のドラマで、早苗は高島礼子。これは三姉妹を三倉茉奈・佳奈でやったそうである。つまり三人を二人で手分けしたのだろう。マナカナが殺される役で出たのが珍しい。『獄門島』でマナカナがどんな芝居をしたのか、ちょっと見てみたい。

わたしが実際に見ているのは1977年のふたつ。石坂版と、古谷版の連続もののほう。この古谷版はキャストが凝っていて、劇団昴の島村佳江を早苗に抜擢、その他、前進座から中村翫右衛門、河原崎国太郎を招き、嘉右衛門は民藝の滝沢修だった。ほかに有島一郎、金子信雄、浜木綿子、三善英史、葉山葉子なども出ていた。派手さでは石坂・大原の映画版に遠く及ばないが、ていねいな作りで、地味ながら味のある作品になっていた。

それにしても、金田一ものはたいていそうなのだが、ここでも金田一耕助はまったく無能な探偵である。彼は戦友の鬼頭千万太に妹たちを守ってくれと言われたはずなのに、けっきょく何もできなかった。しかし映像で見ているとそのことがあまり気にならないし、なにより横溝正史の悪文につきあわなくてすむのがありがたい。