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内館牧子著 「すぐ死ぬんだから」 を読んで ~ あなたはナチュラル派?アンチエイジング派?

2018年11月29日 08時00分00秒 | 図書室

 講談社 2018年8月 1550エン

年をとれば、誰だって退化する。
鈍くなる。
緩くなる。
くどくなる。
愚痴になる。
淋しがる。
同情を引きたがる。
ケチになる
どうせ「すぐ死ぬんだから」となる。
そのくせ、「好奇心が強くて生涯現役だ」といいたがる。
身なりにかまわなくなる。
孫自慢に、病気自慢に、元気自慢。
これが世の爺サン、婆サンの現実だ。
この現実を少しでも遠ざける気合と努力が、いい年の取り方につながる。間違いない。
そう思っている私は、今年七十八歳になった。
六十代に入ったら、男も女も絶対に実年齢に見られてはならない。



と、小説の冒頭から高齢者への挑戦的なメッセージを、内館牧子は女主人公ハナに言わせる。

一般的に言えば、人は年を取れば肉体的にも精神的にもその能力は衰えていくが、その事実への対応の仕方は大きく二つあろう。
一つの極は、「人は機械だの薬だのをやめて、命のロウソクが燃えるままにしとくのが自然なんだ。自然に燃え尽きれば、本人も周囲も後悔がないんだよ」「自然に年取り、自然に死ぬ。昔の人はみなそうだった」という「自然派」、「ナチュラル派」。
もう一方の極は、あくまで年を取っての老齢化に抗う方策を講じようとする「アンチエイジング派」だろう。

多くの高齢者はその間をいったり、きたり、右往左往して生きていくのが実態ではないか。

が主人公のハナは、明らかに「アンチエイジング派」。女性であるだけに、特に外見に対してアンチエイジングだ。

出た!手をかけない女が好きな「ナチュラル」。あんた達みたいなのは、ナチュラルって言わなくて不精(ぶしょう)って言うんだよ。

「人は中身よ」という女にろくな者はいない。さほどの中身もない女が、これを免罪符にしている。


と、ハナの毒舌は鋭い。ハナは年を取ったら「見た目ファースト」だ。して毒舌は続く。

「自然に任せていたら、どこもかしこも年齢相応の、汚くて、緩くて、シミとシワだらけのジジババになる。孫の話と病気の話ばかりになる。それに抗ってどう生きるかが、老人の気概というものだろう。」

そういうハナにも、試練がくる。連れ添った夫が急逝し、しかも長年不実だったことが判明する・・・
さて、ハナの「見た目ファースト」信念はこれからも貫いていけるのか、違う心境に向かうのか、それは読んでのお楽しみ(笑)。


内館牧子(うちだてまきこ)は御年、70歳。まだ頑張っているTV脚本家。ボクが最初に彼女脚本のTVドラマを見たのは 『思い出にかわるまで』(1990年TBS) 今井美樹と石田純一。ヤキモキさせられたなあ。その後、印象に残っているのは 『都合のいい女』(1993年フジ) で浅野ゆう子主演。女が自由に恋するといっても結局は男たちにとっては都合がいい女でしかないのではというテーマ(だと思う)。最近でのヒットは映画化もされた小説 『終わった人』(2015年) エリート銀行員であっても定年退職すれば社会的役割は、もっと言えば人間としても役目を終えた人なのではというテーマ。

そしてこの『すぐ死ぬんだから』では、高齢者がそれを口にして楽な方へ楽なほうへ流れていく・・これで100歳時代になっても流れていくの?というアンチテーゼ。

『都合のいい女』も『終わった人』も『すぐ死ぬんだから』も表題がいい。時代事象(トレンド)の隠れた本質を、見事にえぐった表題になっている。これはトレンディー作家(脚本家)の真骨頂だ。(倉本聰は比ではない)

もっとも、『すぐ死ぬんだから』で前提としている高齢者ていうか読者は、まだ五体がまがりなりにも動いていて、それでも何事にも意欲が失せ「すぐ死ぬんだから」状態になっている高齢者読者だ。病院で自宅で死を目前にして、延命治療を選択するかしないかを迫られている人生末期的高齢者ではない。末期的状況で、いかに死を受容したらよいかのテーマへは、未達テーマだ。

自分の歳に合わせてテーマを取り上げてきた内館が次に取り組む最後のテーマは、死の受容のあり方だろうか。いや、彼女自体が末期症状になった時には、もう書けないだろう(笑)。 
最後の自分の始末の仕方は、やはり自分が自分で見つけるしかない。この本は、その一助になるだろう。





8 コメント

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Unknown (けーご)
2018-11-29 09:16:54
おはようございます。
昨日某銀行主催の「いつまでも活躍できる脳を作る。」という題目の講演会を聴いてきました。
年配の方、特にリタイアした方やリタイアしたご主人を持つ奥様達の多くはうつ」であることが多いらしく、寿命を縮めている原因の根っこはそこにあるそうです。
老齢でのうつ対策としては、男性ホルモンを減らさないこと(女性も)、コレステロールを減らさないこと、非日常的な刺激を受け続けること(例として恋愛、ギャンブル、投資など)、そしてよく笑うことが良いと言ってました。よく笑って性欲の強い人(男性ホルモンが多い人、女性も)は長生きするそうです。
もうすぐ死ぬんだから、ってのはうつから来るコメントでもあるかもしれない(断定してません)から、やっぱりポジティブに笑って生きていけると楽しい人生になるんでしょうね!
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けーごさん、おはようございます (Sora)
2018-11-29 09:57:23
あはは、とまず最初に笑います(笑)。

たしかにねー。「もうすぐ死ぬんだから」あくせく何をやってもしょうがないや・・と思うか、だから今を目いっぱい生きようや!と思うかで、実は分岐点でしょうね。前者は鬱気味ですか。年寄りは生理的にも鬱になりやすいですからね。対策としては

>非日常的な刺激を受け続けること(例として恋愛・・ ~
うむ・・、ちと足りないかなあ。同じユニクロを着続けていてはダメだなあ(笑)。見た目ファーストだな。

けーごさん、貴重な受講レポありがとうございます。
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おはようございます(^^)/ (hiroko)
2018-11-30 10:04:04
うわぁ、考えさせられるテ-マですね、
ただ漠然と過ごす無精者の私ですが、やっぱり汚れたばあさんにはなりたくないと切磋琢磨している自分に気づいては苦笑いしています。
老いてゆくという事は残酷な事でもありますね、
気持ちだけはいつもアンチエイジングを目指しているつもりです。
年齢を聞かれこの頃は正直に答えるんですが、お世辞かどうか?若く見えるね、と言われて内心ほくそ笑んでいる自分がいます(;^ω^)
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hiroko さん、おはようございます (Sora)
2018-11-30 11:45:19
>うわぁ、考えさせられるテ-マですね~
はい、重いテーマになってしまいましたが。なかなかここまで小説仕立てで取り上げる作者はいないと思いまして。自分の老後、つまり今ですが、の在り方を考える材料にしたいと思って読みました。

>気持ちだけはいつもアンチエイジングを目指しているつもりです~
手当たりしだいにアンチエイジング策に血道をあげるというのはむしろ悪あがきで、失望、疲れてしまうだけ。その「気持ちだけは」がむしろ重要なようですよ。外見に注意を払うというのは、自分を慈しむことで「いやし」をもたらす。「飾る」というのは社会的存在であることを自覚させ、「はげみ」の効果をもたらす・・と作者はあとがきで書いてます。

>若く見えるね、と言われて内心ほくそ笑んでいる自分がいます~
あはは、いいじゃないですか。たしかお姉さまとの写真を拝見した覚えがありますが、50代後半ですよね(^^)。
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Unknown (スパンキー)
2018-12-03 15:53:47
お久しぶりです。

Soraさんが終末を考えることもあるとは、ちょっと私をほっとさせてくれました。
Soraさんはいつも元気そうで、体力も年下の私なんかよりずっとあると思うし、いや若い奴にも負けそうにない 笑

先日は我が神奈川県の丹沢あたりにも南下した様子。私はあの頂上には行ったこともないし、そもそも7時間もあそこを歩くのは、ちょっと無理!!

河原で焚き火か、大山が限度ですね 

よろしかったら、健康の秘訣、高年の哲学などあったらご教示ください。

また何処へ行かれるのかブログ楽しみにしています!!
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スパンキーさん、こんにちは (Sora)
2018-12-03 16:52:45
あらら、大御所スパンキーさんじゃないですか!
スマホが故障してから、スパンキーさんのブログアイコンが消えてしまいずっと拝見してませんでしたが、ずいぶんと一新されたのですね。先ほど再セットしたところです。

>そもそも7時間もあそこを歩くのは、ちょっと無理!! ~
馬力がないから、7時間も要するのかな。とにかく歩いていれば、進んでいますから、帰れると。一人歩きの特権ですよ(^^)。

>健康の秘訣、高年の哲学などあったらご教示ください~
そんなたいそなモノ、ないですよ(笑)。病気になった時、あのときに運動をしていたらと少なくとも運動不足は後悔したくないですね。で、一日おきにジムへ。

スパンキーさんのブログを読んでますと、大きなヘタリをも体験されたようですし、一方で会社経営の重圧もあって、そのはざまでほんとタイヘンだと思いますよ。ただリタイヤまでにあと少しなんでしょ。なんとか持ち堪えられますように(^^) 
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深い (jun)
2018-12-04 09:55:26
冒頭の挑戦的なメッセージ〜
当てはまるものが10個ありました(苦笑)

命の先が見えた時には自然死を望んでいますが、実際、その時になってみないと分かりません。もっと生きたい!と、悪あがきをするかもしれません。

〉すぐ死ぬんだからと、楽な方へ流れていく〜
楽な方へ流れていくのは簡単ですよね。気力がなくなればなおのこと。
今のところ私は、まだアンチエイジング派です。ブログのpc番プロフィール写真に「竹原ピストル」を貼ってあります。「オールドルーキー」を歌っています。「何度でも立ち止まって、また何度でも走り始めればいい。必要なのは走り続ける事じゃない。走り始め続ける事だ」と、歌っています。「走り始める」遅咲きの山デビューの私へのエールです。
友達の何人かは「毎日、午後は昼寝してるわよ〜。」と、言います。もったいないなぁと思います。人は人だから別にいいんですけど、いつ死ぬか分からない今日この頃。充実感を持って1日を終えたいと思います。私の1番の親友は、40代で肺がんになりました。完治したかと思われた15年後、脳へ転移しました。でも、がんセンターで手術・治療し今は元気にしています。彼女は、明るくオシャレで、ゴルフに熱中している女性です。すぐ近くに この親友がいるから、アンチエイジング派なのかもしれません。
それにしても時代のニーズに応える深い本の様ですね。
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jun さん、こんにちは (Sora)
2018-12-04 13:01:55
>当てはまるものが10個ありました~
あはは、10個もありましたか。よく高齢者の特徴を列挙してますよね。この本の表紙は、みんな帽子を被って、小さいリュックを背負って、ズックみたいなものを履いて・・ これも著者によれば高齢者の特徴なんですって。jun さんは・・ あはは、分かってます。こんな格好ではお出かけしないですよね(笑)。まだ。

>もっと生きたい!と、悪あがきをするかもしれません。~
私は、はじめから悪あがきをしているのかもしれませんが

>「走り始める」遅咲きの山デビューの私へのエールです ~
そういう意味での、竹原ピストルだったのですか。なるほど、jun さん、深いですね(^^)。ボーッとしていました。

>彼女は、明るくオシャレで、ゴルフに熱中している女性です。すぐ近くに この親友がいるから、アンチエイジング派なのかもしれません~
おっしゃるとおりですね。
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