袴田京太朗 展「人と煙、その他」に行ってきました。
このビジュアルのヒトガタ。アクリルの透けた感じがなんともよいです。
袴田さんの作品は以前にも資生堂で見て強烈に印象に残っていました。
会場に足を踏み入れると壁面に突っ伏すかのようなヒトガタの群れ。
カラフルなアクリルを組み合わせた色合いがポップ。
なのだけどもよくよく近付いてみるとその表面は削られた痕跡の生々しさを感じ取ることが出来て少し印象が横滑りしてく。
そう、これは彫刻なのだ。
でも、ぱっと見の印象はどちかというと一体成形されたソフトビニールの人形、フィギュアなんかに見てしまう。
彫刻っていうのはやはりどちらかといえば重みを感じるのだけども、この壁面に向き合った彫刻たちにはそういう重さを感じない。どこかふわりと飛んでいってしまいそうなのを壁につなぎ止めているようにさえ見えてくる。
アクリルの層とカラフルな色合いはその中に無限への広がりも感じさせてくれる。
冒頭からの両側の壁面とその突き当たりは圧巻でした。29点組の「Families」、25点組の「扮するひと」。そして肩を組んだ二人「Butterfly」。
さて次は初期の作品のコーナー。
作風がまるで異なっていて驚かされます。
タンスの中に開けられた穴に貼られた金属の構造。引き出しが4つあるからか?「4人乗り」
「実物大の犬」は電気コードで作られた犬。犬よりも電気コードの先にある電球とその4つの電球の上に乗った4つ足の木製の台のほうの不安定さが気になった。
「奈落の瀧」、「奈落の煙」は漏斗のように下に行くと狭まっていきそれが瀧や煙の形だったり。
「花の柱」などの柱シリーズ5点は柱のてっぺんからその形にえぐられている。この中だと「魚の柱」が面白い。
続いては「Smoke and House」のシリーズのアクリル作品。
その名のとおり家と煙がつながってる。決まった形と無限に変化する形。この面白みに惹かれるのだろうか。
壁面にかかってた「2つの煙」は一見、うさぎの耳みたいでピンクの色合いもあってかわいいなあと。
「アンドリューの耳の煙」など耳の形のアクリルのも4点。煙とあるけどもどれも家がくっ付いてる。??耳が煙?煙は家??
天上からぶら下がる長いアクリルの作品たちは異様さが半端ない。
特に「Famili sticks」が気になった。
家族モチーフでそれぞれ(娘と娘)、(妻と妻)、(息子と息子)、(自分と自分)というタイトル。
(自分と自分)以外は天上からぶら下がってて下にはそれぞれ大理石彫刻でよく見るような人体フォルム。いずれも対になっている。
(自分と自分)だけはなぜか床に突っ伏していてしかも上から見たフォルムが耳のようなえぐれかた。色も片方は黒、片方は緑。謎がいっぱい。
最初、気付かなかったものの途中で奥さんに言われて気付いてびっくり。
ぶら下がった上のほうに眼をやるとなんどブロック状のヒトガタのパターンが!!下ほうではそう見えず、上に行くとこのパターンが横滑りしてそれとわかるような仕掛けになっている。
「布袋ー複製」は一見すると3分割した既存の布袋像をその欠落した部分をアクリルで複製しているかのよう。
でもよおく見てみると複製されたはずのアクリルはままコピーではなく微妙に配分をいじられている。
「ジュリアンーScatter」アクリルの小便小僧。その小便もアクリルで床に着地してて力強い。横にはノートパソコンがあり実際の小便小僧の映像が流れている。もちろん水の音も出ている。
その傍らに無造作に並べられたアクリル。ナンバーがふられていてこの小便小僧を構成するパーツだとわかる。
「トランペットー空洞」最初、あまりピンとこなかったのだけどじっくりと会場内を見て回ってしっくりとくるようになりました。
漏斗から注ぎ込まれたポリウレタンがトランペットの管を通って台座からもこぼれている。
この漏斗のイメージというかフォルムは他の作品にも感じ取ることが出来て作家にとって重要なモチーフなのだろう。
今後どう作風が変化してくのか気になるところ。
会場を出ると外にもうひとつ。さらに階段を降りると2つの作品が展示されています。
ラスト2つ。あの果実は何故に??
そして1階のミュージアムホールでは袴田さんの公開制作の映像が流れていました。
これは絶対に見たほうがいい!
一枚一枚アクリルを裁断して貼付けて。この行程がどれほどの作業なのか思い知りました。かなりの重労働です。かつプランがきちんとしていないと成立しない。
物販コーナーで本展のカタログがあり中を見てみると作者のノートの画像もあって、これは逆に展示して欲しかったなあと。
6/22まで。
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