Bel Accueil and the Lover from BL Harley 4425, f. 36
Bel Accueilは「歓待※」を指し、「礼節」の息子であり男性のはずですが、BL Harley 4425ではご覧のように女性?の姿をしています。(篠田訳の中では“彼“と訳され男性の姿が描かれた絵が引用されています)ここでは酷くチャーミングな姿で登場です。右端には大きな薔薇の蕾が描かれ、木立薔薇のようです。
※ Bel Accueil; 恋の対象に対する好意的な態度、振る舞いに対するアレゴリック的な表現。
薔薇の木々を囲む垣根を越えようかと思い迷っていると、美しく感じのよい若者「歓待」がわたしに向かってまっすぐにやってくるのに気付きました。彼は垣根に通じる道を譲ってくれたので、荊や野薔薇がたくさん生えていた所を横切ってまっすぐに他のものよりも芳しい香りを発散させている蕾に近づくことができました。
Roman de la Rose: Scene, Welcome speaking to Lover -- Lover, right hand on hip, left hand on breast, looking toward Welcome as woman, raising right hand, left hand on hip. Rose bush behind lattice is at right.
Roman de la Rose France, 1340-1350 MS M.185
「歓待」は蕾に近づき薔薇の木に触れるようにと勧めてくれました。そして蕾のそばの緑の葉を一枚摘み取り、わたしにくれたのです。わたしは勇気を奮い起こして話しました。
『友よ、中略 あるひとつのものを手に入れなければ、わたしは決して歓びが訪れることはありますまい。心の中にとても重い病を抱え込んでいるのですから。けれどもそれが何なのか。どういうふうに言えばよいのかわかりません。あなたをおこらせたくないからです。中略 』『どうか何をお望みなのかおっしゃってください』と彼は言った。『中略 形の美しいあの蕾、あれはわたしの死であり,生なのです。ほかには何も欲し物などありません』 すると“歓待”はぎょっをしてこう言った。『中略 なんということでしょう。わたしの名誉を台無しにしたいのですか。中略 たとえ誰のためであれ、蕾を、付いている木から離してしまいたくはありません。』
そのすぐそばには、薔薇の木々すべてを守る番人「拒絶※」とその仲間の 「中傷」、「羞恥」、「小心」が薔薇の花と蕾を守っていました。
Harley 4425 f. 30v Bel Accueil (Fair Welcome) and the Lover
薔薇の花に手を伸ばそうとする者のようすをうかがい、「拒絶」 とその仲間の「中傷」、「羞恥」、「小心」が草や葉で身を覆って隠れています。奥には赤い薔薇の花が咲いています。(イギリス所蔵の写本ではご覧の通り“わたし”は長髪になっています)
※ Dangiers; 拒絶は、 恋の対象に対するためらい、抵抗、否定的な態度を示すアレゴリック的表現。
Honte ; 羞恥は、「理性」の娘、「小心」の従姉妹
Peor ; 小心は、臆病の意。
Male Bouche ; 中傷は、「嫉妬」の城の番人の一人(後述)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます