久しぶりに奈良市の靈山寺を訪れた。このお寺に初めてお参りしたのは、平成5年7月だった。
西国四十九薬師霊場の巡拝をこの年から始めた。第二番めの霊場である。その後何度かここに来ている。このお寺の薔薇園が、綺麗なので花のいい時期を見計らって訪れるのが楽しみである。
「人生の輪廻をテーマにした」といわれる1200坪の花園には、200種類2000株の薔薇が植えられている。花の期間も今頃から11月頃までと、見頃が長い。
参道を右に逸れて突き当りが薔薇園の入口である。
入った途端薔薇の甘い香りに包まれる。大山蓮華は「和」の香りだとすれば、薔薇は明らかに「洋」の香りだ。
香りに華やかさがあると思う。そしてその華やぎの中に不思議な安らぎがある。
淡い藤色の花が、今回一番好きだなぁと思った。
じっと見つめていると、ハチが開いた花の中に入っていった。
なかなか出て来ない。
きっと甘い蜜がたっぷりとあるに違いない。
顔を近づけると、微かに花の中から、羽音がする。
覗かれているのも知らぬげの作業か、食欲である。
気になっていた行事が一つ片付いたことの開放感もあり、薔薇の園で過ごす至福のときである。