シュウチン最後の日

　今日もシュウチンは、いつもと変わらずに早めにトレーニングルームへ来て、汗を流していました。
　「一緒に写真を撮ろう。」と彼女は近づいてきて、ハグをすると、涙がこぼれそうでした。産休をしていたアーティストが完全に復活したので、今日が彼女の最後の日となってしまったのです。
　一回目のショーの後、みなのサイン入りの写真を渡す時、彼女はティッシュペーパーの箱をそのまま抱えて登場しました。様子を察したアーティスティックコーティネイターは、彼女に急ぎ目に言葉を贈り、写真を渡しました。その間、彼女はティッシュペーパーの角を丸め、鼻に詰めると、ティッシュペーパーを鼻の下に垂らしたまま挨拶をしました。たくさんの笑いと涙で、私達は彼女に拍手を送りました。　
　彼女にとって最後のショーとなる二回目、私が踊る時、彼女は舞台袖で観ていました。私は彼女の笑顔と努力を思い出しながら、この出会いに感謝をし、舞っていました。エピローグでは、リフト４に立つ彼女を見ると涙が出てきました。シェリーも何度も彼女のほうを見、涙を流していました。花火が上がると、「シュウ・チン!」と大きな声で何人もが叫びました。
　終わると彼女の為のパーティが開かれました。アーティストだけでなく、バックステージテクニシャンの方々もたくさんいらしていました。「あなたなら、また戻ってこられる。」誰もがそう声を掛けていました。
　１１ヶ月というこの短い期間でこれだけ愛され惜しまれながら去っていくアーティスト。彼女が辞めると聞いてからのこの一週間で、みなが彼女のことをいかに認めていたかが分かり、とても嬉しくなりました。
　彼女とはきっとまた会える、私もそう思います。ありがとう、シュウチン。