北Qえれじー ~ 国分寺 編 ~ by Akira Io

写真家・ロシア語通訳あきらの日記。
南インド古典音楽の聖地チェンナイより帰国し、現在は国分寺に居住!

今年最後のまちかどSHOP! @高円寺 「インドへの道」 by シゲジー&寺原太郎

2008年11月14日 10時32分26秒 | まちかど倶楽部
あろはいさい。
あきらです。


今年最後のまちかどSHOPは、何と本日(笑)。
タブラ奏者シゲジーのイベント「インドへの道」での出店です。
例によって、南インドの古典音楽CD(アミット・ロイの「Timeless」ももちろん販売)や、
南インドの袋、インドな柄がキュートな封筒やカード類などを出させて頂きます!





インドへの道
 毎月第二金曜日、 インド滞在8年の練馬っ子タブラ奏者「シゲジー」こと森山繁が、
日本全国のインド音楽演奏家を毎月一人招いて行う生音インド古典音楽ライブ。


本日のお相手は、バーンスリー(竹笛)の寺原 太郎
レコーディング以来封じられていた、この時期にピッタリのあのラーガが聴けそうな予感大。



生音でアンビエントにマッタリーノ。
チャイ飲んでホッコリーノ。
な、カンジです。


まだお席に余裕はあるそうなので、ためらうことなくカモン!



時間 開場19:30 開演20:00

料金 前売り2000円 当日2500円
   カレー付き前売り 2500円! (いずれもチャイ付き!!!)

会場 高円寺さんさんふくし芸術館
    杉並区高円寺北2-39-33      

予約・お問い合わせ 080-5029-2795(インドへの道)

アミット・ロイ最新作 「Timeless」 ライナー

2008年11月10日 21時52分30秒 | まちかど倶楽部
あろはです。
あきらです。

早いもんでもう11月も半ばにさしかからんとしてますね。
最近はめっきり寒くなって、ホントもうかなわんよ。

久しぶりの更新、「Timeless」のライナーを載せます。

ちと長いですが、まぁ読んでみて下さい。
そしてCD気になったら、是非聴いてみて下さい。



ご購入詳細は、まちかど倶楽部のHPをご覧下さい。








「昨日、お父さんとグルジー来てた。」

  初冬の弱い日差しが窓からやわらかく差し込む我が家の台所で、アミット・ロイが感慨深げにつぶやいた。彼の父親とはシタール製作者として名高いヒレン・ロイ。グルジーとはインドで師匠を意味する言葉。アミット・ロイの師匠とは、国際的にも高い評価を受けていた名シタール奏者ニキール・ベナルジー。二人とも既に他界して久しい。台所に居合わせたのは僕の奥さんと太郎さんの奥さん。僕と太郎さんとU-zhaanの3人は、前日の「銀の旋律」公演の打ち上げで飲みすぎたのか、奥の居間で高らかにいびきをかいていた。公演続きの疲れた体で北九州に到着し、当初は「体キツイから水しか飲まない」と言っていたアミット・ロイも打ち上げでは顔をほころばせながら深夜まで飲み、その日の朝も起きるとすぐに台所で、満足そうに酒を飲んだ。

  このアルバムは2007年12月1日、福岡県北九州市の男女共同参画センター「ムーブ」にて行われた、アミット・ロイ「銀の旋律」公演のライブ録音である。公演の企画・主催は僕らの夫婦ユニット「まちかど倶楽部」。アミット・ロイにとっては10年ぶり四度目の北九州公演となった。
  僕がアミット・ロイと初めて出会ったのは、2006年のこと。U-zhaanの師匠であるタブラの巨匠アニンド・チャタルジーを日本に迎えて開催された彼のコンサートを撮影させてもらった時である。アミット・ロイの師であるニキール・ベナルジーのシタールが好きだった僕は、当然弟子であるアミット・ロイに、師匠のような演奏を期待していた。だが、実際に僕がステージで観たのは、師からの影響を受けながらもアミット・ロイが独自に創り上げてきた彼自身のスタイルであり、彼自身の音であった。僕はそれに驚き、感嘆した。そして撮影をしながら奇妙な感覚に陥った。カメラのファインダーを覗きながら、何かがうごめいているのを感じたのだ。不思議なことにその時の僕には、舞台の背景が右から左へゆっくりとスクロールしているように感じられたのである。それは、あたかも古い絵巻物が少しずつ開かれ、そこに隠されたとてつもなく静謐で、えもいわれぬ美しい音による物語が、ゆっくりとゆっくりとこの世に放たれている。そのように感じたのである。
  また別の機会の新宿ピットインでのコンサートでは、もし月面から地球を眺めたとしたら、このような音が流れているのではないだろうか?そう思わせるような音を聴かせてくれた。僕はその時以来、アミット・ロイはある意味絵描きなのだと確信した。インドの古典音楽をその土台とし、シタールを絵筆に、ラーガをモチーフに、そして聴く人の心をカンバスに彼の内にあるイメージを描く。彼の公演に足を運ぶ人や彼の生徒達は、きっとこのアミット・ロイという人の内にあるイメージの虜となってしまった人たちなのだろう。気づけば僕もその一人となっていて、彼の公演に通いもっと聴きたいと思いを強くするうちに、ついには地元でアミット・ロイ「銀の旋律」北九州公演を開催するに至ったのである。
  当初、僕はこの公演の模様をCDにすることは考えてもいなかった。正直なところ、公演の準備でそんな余裕は全くなかったのだが、記録として友人に「とりあえず録っておいて!」と客席からの録音を頼むことだけは忘れなかった。このCDのマスターはその何気なく、とりあえず録音を頼んでいた音源なのである。録音を頼まれた友人もまさかこんなことになるとは思っていなかったに違いない。「CDにするなら、最初から言わんかっ!」という声が聞こえそうであるが、いたしかたない。先のことまで見越して行動できなかった僕の不覚である。いやはや、かたじけない・・・。
  と、そのような事情のため、このCD、音質は良くないが、それでもあの時の公演の空気を封じ込めた臨場感あふれる作品となっている。客席からの拍手や咳払い、椅子のきしむ音、北九州市在住のインド人チャトゥルヴェディ氏がヒンディー語で「ボフト アッチャー ヘー!(very good!)」とつぶやく声も聞こえる。さらには、ステージ上のU-zhaanや客席からのキャバ!という声も聞こえるのだ。まるでインドの古き良き時代のライブ録音のような趣きではないか!ちなみにキャバ(キャバテ、キャー・バット・ヘーとも言う)とは、インド古典音楽のコンサートでよく使われるかけ声・合いの手のようなもので、字義通りの意味は「何てこった!」。演奏者がかっこいいフレーズを歌ったり、タブラ奏者がかっこよく演奏を決めたときには、演奏者同士や客席からこの声がかかる。演奏者と観客とのやりとりにより、演奏自体が盛り上がっていくこともあるのが、インド古典音楽の面白いところだ。
  このようなライブならではの盛り上がり、臨場感がこのアルバムにはおさめられている。「何かがないということは、何かがあるということ!」とは、僕のモットー。そして「良い音であるということは、必ずしも名盤の条件ではない」とは、公演のPAを担当してくれ、そしてこのCD制作を僕にそそのかした(笑)張本人である「なかまこ」氏の信念である。音質は最高ではないが、それにも関わらずCDという形にし、より多くの人に聴いてもらいたい。僕らにそう思わせて行動させた「名盤の香り」がこの演奏にはある。どうか、音質面には少々目をつぶっていただいて、あの時、あそこにしかなかった音に耳を傾けて欲しい。

  さて、ここからはこのアルバムについて紹介したい。まずは何といってもアミット・ロイの演奏。彼が演奏するのは「Nat Bhairavi Mishra」。早朝、未明の時間帯に演奏され、朝の祈りをイメージさせるラーガ「Nat Bhairavi」をベースに、途中映画音楽のメロディーを挟み込んだりと縦横無尽にアミット・ロイの唄心が発揮されている。シタールのソロ部分から始まり、タブラの伴奏が入ってゆっくりとリズムをつむぎ、徐々にスピードを上げクライマックスに達するという北インド古典音楽の典型的パターンであるが、しっかりと聴かせながらつくり上げていく構成力はさすが。トラック3で繰り広げられる狂おしいまでにエモーショナルなプレイも聴き所。そんなアミット・ロイの熱演をじっくりと堪能して欲しい。
次に挙げるのはアミット・ロイの作品としては、初めて日本人のタブラ奏者との演奏を収録したということである。U-zhaanは、今や日本を代表するタブラ奏者で、インド古典音楽だけでなく「ASA-CHANG&巡礼」というユニットや、UAやハナレグミなどでのライブサポート、HIFANAやPolarisにつじあやのに至るまで幅広くレコーディングにも参加し、最近もターンテーブリストL?K?OとのユニットOigoru(オイゴル)でアルバム『Borsha Kaal』をリリースしたばかりの売れっ子である。そのU-zhaanにとっても、インド古典音楽の伴奏がCDとなるのは、今回が初である。彼の魅力は単にテクニックがあるということだけに留まらず、インド古典音楽のみならず音楽全般に対して発揮する抜群の理解力、センスでもある。このアルバムでも、日本人タブラ奏者としてそのセンスを生かし、アミット・ロイのシタールの魅力を存分に引き出している。
  アルバムの最後を飾るのはアミット・ロイの故郷コルカタを擁するベンガル地方の美しい民謡「Bhatiyali」である。ここでは、アミット・ロイがシタール演奏のみならず、唄も歌っている。インドの古典音楽は、歌をメインとするだけあって、器楽奏者やタブラ奏者であってもたいていの人は、唄も歌える。特にアミット・ロイの唄の良さは、唄を通してレッスンを受けることのある彼の生徒の間では周知の事実ではあったが、ライブで披露され、一般の人の耳に届くということはなかなかなかった。もちろんCDに収録されるのも今回が初めてなので、存分に堪能して欲しい!
  この「Bhatiyali」ではアミット・ロイの愛弟子でバーンスリー(竹笛)の寺原太郎も伴奏に加わる。実は、太郎さんがアミット・ロイと伴奏とは言え演奏者として同じ舞台に立ったのもこの時が初めてという、このCDは実に初物尽くしのアルバムとなった。巨匠アニンド・チャタルジーをタブラ奏者として迎えて録音された二枚のCD「Air」、「Mist」をリリースし、海外でも精力的な活動を行っている太郎さん。普段は、主奏者として自らが光を放ち、演奏しているのだが、この時の彼の演奏は満ち満ちた月の光のようにピュアだった。アミット・ロイという自身が敬愛して止まない師との初の舞台。そのアミット・ロイからの「音の光」を受けて、何も考えることもなくただただその光を浴びて無垢に演奏している。その様子がきっとこの音からも伝わるだろう。インド古典音楽の深みに見事にはまり、この先何十年と笛を吹き続けるであろう太郎さんの演奏者としての記念すべき一つの場面に居合わせたことを、僕も主催者として心から幸せに思う。

  以上、色々と書いてきたが、こうして見ると実にいろいろなモノがつまったメモリアルなアルバムになっていると思う。わざわざ北九州まで演奏に来てくれたアミット・ロイ、寺原太郎、U-zhaanの三人、そして会場に足を運んでくれたお客さん、公演をあらゆる方面から支えてくれた人たちに感謝したい。上記全ての人たちの存在により完成したこのCDが、より多くの人に聴いてもらえることを心から願う。

  最後に、この「Sulphur Records」という名前は、山口県下関市在住の平岡氏から頂いた。いつも僕らを励まし勇気付けてくれる平岡さんと奥さんに感謝を捧げる。

                  Sulphur Records by まちかど倶楽部  代表  井生 明

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