4/2(日)13:00 からの公演を見終えた後、前述のようにカフェで A チームメンバーとテレビ電話したり、AKB48 劇場で知り合った人たちと雑談するなどしていた。
その際、私が K チームのことについてブツブツ言っていたら、それはアンケートに書けば良いではないか、と指摘された。その時初めて、自分がアンケートのことをすっかり忘れていたことに気づいたのだった。
A チームを 30 数回見に行っていた間、私はできるだけ毎回、アンケートを記入してボックスに入れて来るようにしていた。もちろん時には諸々の事情で書けないこともあったわけだが、それでも 8 割以上は書いているはずだ。それというのも、毎回「今日はこういうところが良かったよ」というのを、メンバーやスタッフに伝えたいと思っていたからなのだった。
基本的に私は、よほどのことがない限り、アンケートでは「良いところをほめる」方向で書くようにしていた。この人は今日、普段に増して良いパフォーマンスを発揮したとか、今日はこの人のこういう工夫や努力を見つけたとか。それは私が感動の何パーセントかをお返ししたいからということもあったし、また、表現者に対して客として関わる場合の、誠意ある向かい合い方だと思っていたからでもある。
何かを表現する仕事、というのは、必ずしも細かいレスポンスが得られるわけではない。もちろんステージであれば、全体としての盛り上がりがどうであったかということは、その場で体感できよう。しかし AKB48 のようなグループでの公演では、その中での個々人のパフォーマンスが評価される機会はあまりなさそうだ。だからと言って個々人がパフォーマンス向上へのモチベーションを持てなければ、グループとしての全体の向上もない。
表現者にとって最もモチベーションが向上するのは、自身の表現が理解されることだ。この場合に即して言えば、個々人が頑張った、努力したところを、客がきちんと見つけてレスポンスを返すことで、表現者は自分が評価されていると感じ、観客が漠然とした無関係な多数ではなくなるのだ。もちろん私は評論家でも採点官でもないので、各人の努力や工夫を毎回漏れなく見つけられていたなどとは思わない。でも気づいた範囲ではそういうことをするように心がけていたつもりだ。
一方、アンケートで文句をつけるのは、良いところを見つけて伝えるより、ずっと容易だ。文句を書いた側は、自分がさも高所から相手を断じているかのように錯覚できるから、そういうことが好きな人はいるだろう。しかし、それが生産的であることは少ない。つまり、表現者にとってプラスになるとは限らないのだ。だから私は、よほどのことがない限り、マイナス評価はつけないようにしていた。もちろんごくたまには、あえて苦言を呈することはあったけれども、その場合でも頭ごなしに否定するような書き方は避けて来たつもりだ。
前置きが長くなったのは、K チームの公演に対してのアンケートを書くにあたって、私がいかに逡巡したかを説明したかったからだ。本当はできるだけ良いところをほめたかった。彼女たちだって決して不真面目に取り組んでいるわけではなく、彼女たちなりには頑張っているつもりなのだろうと思うから、それを悪し様に言うのはどうなのか、とずいぶん迷った。しかしそれでも、この時のアンケートで私は、公演内容について「不満」の欄にチェックを入れざるを得なかった。推定 30 回ほどアンケートを記入して来たが、そんなことはもちろん初めてだった。
抽象的な印象になってしまうのだが、A チームの時には、劇場はメジャーデビューに向けたスタート地点だった。K チームの場合には、ここがゴールになってしまっているような気がしたのだ。AKB48 の一員になりたいと思っていて、それが実現した、という安心感が透けて見えるような気がしたのだ。ここでそれをほめてしまったら、彼女たちはここ止まりの、つまりこの劇場でしか通用しない存在になってしまう。そんな風にして彼女たちの有望な前途をスポイルしてしまいたくなかった。
だから腹を決めて「不満」にチェックを入れた。たかだかアンケートの 1 枚に過ぎないが、私は一人の客として、それだけ迷い、悩んだ末に、これが私なりの誠実な対応だと信じて選択したつもりだ。この気持ちが届いてくれれば良いのだが。
その際、私が K チームのことについてブツブツ言っていたら、それはアンケートに書けば良いではないか、と指摘された。その時初めて、自分がアンケートのことをすっかり忘れていたことに気づいたのだった。
A チームを 30 数回見に行っていた間、私はできるだけ毎回、アンケートを記入してボックスに入れて来るようにしていた。もちろん時には諸々の事情で書けないこともあったわけだが、それでも 8 割以上は書いているはずだ。それというのも、毎回「今日はこういうところが良かったよ」というのを、メンバーやスタッフに伝えたいと思っていたからなのだった。
基本的に私は、よほどのことがない限り、アンケートでは「良いところをほめる」方向で書くようにしていた。この人は今日、普段に増して良いパフォーマンスを発揮したとか、今日はこの人のこういう工夫や努力を見つけたとか。それは私が感動の何パーセントかをお返ししたいからということもあったし、また、表現者に対して客として関わる場合の、誠意ある向かい合い方だと思っていたからでもある。
何かを表現する仕事、というのは、必ずしも細かいレスポンスが得られるわけではない。もちろんステージであれば、全体としての盛り上がりがどうであったかということは、その場で体感できよう。しかし AKB48 のようなグループでの公演では、その中での個々人のパフォーマンスが評価される機会はあまりなさそうだ。だからと言って個々人がパフォーマンス向上へのモチベーションを持てなければ、グループとしての全体の向上もない。
表現者にとって最もモチベーションが向上するのは、自身の表現が理解されることだ。この場合に即して言えば、個々人が頑張った、努力したところを、客がきちんと見つけてレスポンスを返すことで、表現者は自分が評価されていると感じ、観客が漠然とした無関係な多数ではなくなるのだ。もちろん私は評論家でも採点官でもないので、各人の努力や工夫を毎回漏れなく見つけられていたなどとは思わない。でも気づいた範囲ではそういうことをするように心がけていたつもりだ。
一方、アンケートで文句をつけるのは、良いところを見つけて伝えるより、ずっと容易だ。文句を書いた側は、自分がさも高所から相手を断じているかのように錯覚できるから、そういうことが好きな人はいるだろう。しかし、それが生産的であることは少ない。つまり、表現者にとってプラスになるとは限らないのだ。だから私は、よほどのことがない限り、マイナス評価はつけないようにしていた。もちろんごくたまには、あえて苦言を呈することはあったけれども、その場合でも頭ごなしに否定するような書き方は避けて来たつもりだ。
前置きが長くなったのは、K チームの公演に対してのアンケートを書くにあたって、私がいかに逡巡したかを説明したかったからだ。本当はできるだけ良いところをほめたかった。彼女たちだって決して不真面目に取り組んでいるわけではなく、彼女たちなりには頑張っているつもりなのだろうと思うから、それを悪し様に言うのはどうなのか、とずいぶん迷った。しかしそれでも、この時のアンケートで私は、公演内容について「不満」の欄にチェックを入れざるを得なかった。推定 30 回ほどアンケートを記入して来たが、そんなことはもちろん初めてだった。
抽象的な印象になってしまうのだが、A チームの時には、劇場はメジャーデビューに向けたスタート地点だった。K チームの場合には、ここがゴールになってしまっているような気がしたのだ。AKB48 の一員になりたいと思っていて、それが実現した、という安心感が透けて見えるような気がしたのだ。ここでそれをほめてしまったら、彼女たちはここ止まりの、つまりこの劇場でしか通用しない存在になってしまう。そんな風にして彼女たちの有望な前途をスポイルしてしまいたくなかった。
だから腹を決めて「不満」にチェックを入れた。たかだかアンケートの 1 枚に過ぎないが、私は一人の客として、それだけ迷い、悩んだ末に、これが私なりの誠実な対応だと信じて選択したつもりだ。この気持ちが届いてくれれば良いのだが。