赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅰ.『安倍晋三回顧録』に学ぶ

2023-05-18 00:00:00 | 政治見解



Ⅰ.『安倍晋三回顧録』に学ぶ :230518情報


安倍元総理は、日本の政治家中で最も傑出した人物だったと私は大変に高く評価しています。読者の多くもそれに異を唱える人は少ないと思います。なぜなら安倍元総理の「日本を守る」思いが、今日の祖国を守ろうとする国民の意識を喚起したからで、戦後骨抜きにされた国民の愛国心を目覚めさせるきっかけを与えたからと言えます。

さて、最近、出版された『安倍晋三回顧録』には、内閣総理大臣として、国民の敵と戦い、いかに日本と国民を守り抜こうとしていたのかの思いが書かれています。

丁度、その内容について、伊勢雅臣さんが解説しておられますので、許可をいただき全文を転載させていただきます。『安倍晋三回顧録』を読むきっかけになればと思います。


■1.安倍元首相の肉声が聞こえてくる『回顧録』

『安倍晋三回顧録』[以下引用はすべて同書から]がAmazon総合1位と、売れに売れています。首相退任後に行われた36時間ものインタビューを書籍化したものです。早速、読んでみましたが、安部元首相が語っている口調までもが思い起こされて、肉声を聞いているような気がしました。

480ページもありますが、次々に襲ってくる難題にどう考えて向かっていったのか、が赤裸々に語られていて、まさに「知られざる宰相の『孤独』『決断』『暗闘』」という副題がぴったりの内容です。引き込まれるように読み終わってしまいました。

もっともこれは安倍元首相から見た光景であり、他者から見ればまた別の見方もあるでしょうが、そこは冒頭に編集者が、この本は「安倍晋三の『陳述書』」であり、それが正しいかどうかは「歴史という法廷」で裁かれる、と前置きしています。[p7]

ここでは、安倍首相の言葉に耳を傾けて、どういう思いで、どのように決断をしたのか、そのごく一端を見てみましょう。それだけでも、安倍元首相が誰とどう闘ったのか、驚くべき内容が次々と出てきます。


■2.背後にいる官僚たちとの「暗闘」

『回顧録』の中で最も印象に残ったのが、官僚との「暗闘」です。中国や北朝鮮などとの交渉は外目にも見えますが、元総理がこれほど背後の官僚たちからの攻撃と闘ってきたとは思いませんでした。その端的な例が、集団的自衛権の憲法解釈変更の問題です。

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・・・山本庸幸法制局長官とは、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を可能にする話を随分としたのです。でも、堅かった。
集団的自衛権は国連憲章第51条で加盟国に認められています。日本も国連加盟国ですから「国際法上、日本にも権利がある」と私が言っても、山本さんは、「憲法上認められません」と主張を変えず、ずっとすれ違いでした。ならば代わってもらうしかないと思いました。12年の衆院選で、自民党は行使容認を公約していましたから。[安倍、p105]
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「堅かった」のは山本庸幸氏の個人的な考えというだけではなく、内閣法制局自体に、巣くっている慣習からでした。
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内閣法制局といっても、政府の一部の局ですから、首相が人事を決めるのは当たり前ではないですか。ところが、内閣法制局には、長官を辞めた歴代長官OBと現在の長官が集まる参与会という会合があるのです。この組織が、法制局では絶対的な権力を持っているのだそうです。

そこで、法制局の人事や法解釈が決まる。これは変でしょう。国滅びて法制局残る、では困るんですよ。第1次内閣の時も、法制局は私の考えと全く違うことを言う。従前の憲法解釈を一切変える気がないのです。槍が降ろうが、国が侵略されて1万人が亡くなろうが、私たちは関係ありません、という机上の理論なのです。でも、政府には国民の生命と財産に対して責任がある。法制局は、そういう責任を全く分かっていなかった。[p106]
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■3.「命を懸けて仕事をしていただいた」

こういう組織的抵抗を排除するためには、その組織のトップを変えるのが常套手段です。安倍元総理は小泉内閣の官房長官時代から、集団的自衛権に関する勉強会をやっていて、その中に外務省国際法局長だった小松一郎氏がいました。

「小松氏は国際法の専門家で、小松さんならば国会答弁を乗り切れると思い、交代を決めた」[p106]のでした。

小松氏はがんを患い、行使容認の閣議決定直前の14年6月に他界されました。

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戦後長く続いた憲法解釈を変更するわけですから、小松さんにはものすごい負荷をかけてしまった。
小松さんの存在抜きには、実現できなかったと思いますよ。奥様から「本人は、ここまで素晴らしい仕事ができて悔いはない、と言っていた」という話を伺いました。命を懸けて仕事をしていただいたと思っています。[安倍、p107]
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まさに内閣法制局という岩盤との戦いでした。


(つづく)




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