時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

たった7人に200億円の実質減税

2007年04月28日 | 経済問題
「貯蓄から投資へ」ということが言われ始めたのは、小泉内閣の時代だった。株価が低迷し、これを何とか吊り上げて、見かけ上の景気回復を演出しなければならなかった小泉内閣が掲げたスローガンの一つである。
そのために、株式の譲渡益には通常は国税と地方税がそれぞれ10%、合計20%かかるところを、現在は特例として10%に軽減されている。
わずかばかりの預金利息にも20%の税金がかかるが、株式投資でのもうけならな10%の税金で済みますよということで、国民を投資に駆り立てたわけである。そのおかげで、一時7000円台までになった株価も上昇に転じた。
さて、国税庁の平成2005年度分申告所得税標本調査によると、2005年に100億円超の所得を申告した7人の株式等譲渡益の合計は、約2000億円である。
本来なら、この7人は400億円の税金を納めなければならないのだが、この特例のおかげで、なんと200億円が減税され、200億円の納税で済んだことになる。
この調査を見ると、7人の大金持ちだけでなく、一部の資産家に多大な恩恵をもたらしていることが読み取れる。
たとえば、株式等譲渡益の申告をした31万4163人のうち、1億円以上の申告所得があった人はこのうちわずか1.6%、5024人である。そしてこの5024人の株式等譲渡益は、総額2兆6519億円のうち、1兆5005億円と実に56.6%を占めている。31万4163人のうちのたった1.6%の資産家が56.6%の譲渡益を手にしているわけだ。
そして、この5024人の実質的な減税額は、1500億円にのぼるのである。
アメリカ、イギリスでは、株式の譲渡益も他の所得と合算されて、総合課税がなされており、分離課税を採用しているフランスでも、株式譲渡益には27%の課税が行われている。
日本の現在の特例税率10%という税率がいかに異常な税率であり、一部の資産家のみを優遇する制度であるかは明瞭ではないか。
「貯蓄から投資へ」を合言葉に、庶民も含めて株式などへの投資を煽ってきたが、結果は、ライブドア事件に見るとおり、犠牲になったのは庶民である。
また、トヨタなどの優良株なら1万円くらいには、と思って購入した庶民も、今では年初来の最安値を伺うような展開に呆然としているところではあるまいか。
投資というのは、所詮はギャンブルであり、資金力のある投資会社、ファンドなどの思惑によって動くものである。素人が手を出してそれほどもうかるものではないのである。
いずれにせよ、一部の資産家を優遇するだけのこの制度、早々に改めるべきであろう。