時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

厚労省:日雇い派遣は秘書や通訳など18業務に?

2008年09月13日 | 格差社会
労働者派遣法改正について労使が話し合う厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会の部会が開かれ、日雇い派遣を例外的に認める業務を18業務とする厚労省案が示された。
この日の部会で示された厚労省案によると、日雇い派遣については、原則禁止した上で、「日雇い派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務」を例外的に認めることとした。専門性が高いとの理由で派遣期間の制限がない26業務の中から、建築物の清掃や駐車場管理などのほか、アナウンサーやインテリアコーディネーターなど日雇い派遣がほとんどない業務を除いた18業務を政令でリスト化するとしている。
この日の部会では、経営側から「看護師や美容師といった国家資格を持った人を加えるなど、幅広く認めるべきだ」と例外業務の拡大を求める意見が出る一方、労働側からは「ぎりぎり許容できる範囲」と提案を受け入れる意見も出たという。
厚労省案で日雇い派遣を認めるとされた業務は以下のとおりである。
▽ソフトウェア開発▽機械設計▽事務用機器操作▽通訳・翻訳・速記▽秘書▽ファイリング▽調査▽財務処理▽取引文書作成▽デモンストレーション▽添乗▽案内・受付▽研究開発▽事業の実施体制の企画・立案▽書籍等の制作・編集▽広告デザイン▽OAインストラクション▽セールスエンジニアの営業・金融商品の営業
しかし、これらの業務を見ると、日雇い派遣がふさわしいと思われる業務は極めて少ない。
調査、財務処理ソフトウェアの開発、広告デザイン、研究開発、事業の実施体制の企画・立案、セールスエンジニアなどは、日雇いで一体どんな業務ができるというのだろう。これらは、いずれもじっくりと腰を落ち着けて行うべき業務ではなかろうか。
今日のような日雇い派遣の実態は、1999年の派遣法の「改正」以降に問題が表面化、顕在化してきたものである。
このような法「改正」の背景には、財界による安上がりな労働力の確保という政治的な圧力があり、与党のみならず、民主党や社民党までが「規制緩和の推進」とか、「多様な働き方に応えるもの」などと諸手を上げて賛成してきた結果によるものだ。
ならば、それ以前の姿に戻して仕切りなおしをするのが当然であり、バナナの叩き売りのように、この業務は残しておこうとか、とりあえず、この業務は除外しようとかいうような場当たり的な対応が好ましくないことは明白である。
それらの問題が明らかになった以上、1999年以前のスタートラインに立ち戻って再考すべきである。

キヤノンは直接雇用、日亜化学は直接雇用拒否

2007年09月02日 | 格差社会
偽装請負で社会的に批判を浴びていたキヤノンが、請負労働者83人の直接雇用に踏み切った。待遇は「期間社員」ではあるが、まずは一歩前進である。
偽装請負は、実態は派遣社員であるにもかかわらず、請負契約を装い、派遣期間の制限(以前は1年間、現在は3年間)を越えて働かせる違法行為である。
キヤノンの御手洗会長(経団連会長)は、この派遣期間の制限が気に食わず、以前は派遣期間が1年間に達すれば、企業は派遣労働者に対して直接雇用の義務を負っていたものを、政府にこの期間を延長させ、現在は3年間を経なければ、派遣労働者は正規雇用に未知が開けない仕組みになっているが、御手洗会長はこれさえも気に食わず、「請負法制を見直せ」という圧力をかけている。
いずれにせよ、キヤノンは、違法な偽装請負をずっと続けてきたわけであるが、今回やっと正規雇用を受け入れたということだ。
しかし、今回の件はキヤノンが違法な請負を反省したためではない。請負労働者が労働組合を結成して会社側と交渉をして勝ち得たものである。しかも、労働組合が労働局に申告をしてから10ヵ月も経ってからやっと実現したものである。
労働者の粘り強い努力に敬意を表しておきたい。
さて、一方で、請負労働者の直接雇用を約束しておきながら、これを反故にしようという悪辣な企業も依然として存在する。
青色ダーオードで有名になった日亜化学(徳島県阿南市)だ。
以前に本紙でも、請負労働者の直接雇用に道が開かれたと報じた日亜化学であるが、労働組合との交渉の席で、突然「(直接雇用の)合意がなされたとの認識は持っていない。」などと発言し、以前の約束を反故にする態度に出ている。
昨年11月に、徳島県の立会いの下で、日亜化学と労働組合との間で、「同企業で3年以上働いてきた請負企業の労働者について、3年働いてきた経験を最も重視する採用選考を行って直接雇用する」などの3項目の合意を行い、当時、県知事も「大きな前進。全国の企業のリーディングケースになっていくのではないか」と絶賛していたが、日亜化学はこの合意の存在すら否定する開き直りの姿勢を示している。県の商工労働部は、昨年11月の合意の存在を認め、「労働者の申告に基づいて、調査に入っている。やれることをやっていきたい」と述べている。
労使関係では、労働者の立場は圧倒的に弱い。だからこそ、労働法制に基づいて、労働組合などを結成し、会社側と交渉を重ねるわけだが、今回の会社側の態度は、労働法制の根幹さえ否定する態度と言わざるを得ない。
こういう「偽装請負」や違法派遣は全国に蔓延しているに違いない。そしてそれらが、所得格差の大きな一因になっており、種々の「難民」を生み出す裁断の原因になっている。
製造業にまで広がった派遣業種に対する規制強化、派遣期間に対する制限の強化、請負、派遣労働者の待遇改善などを法的に定めることこそ求められている。
全国でこういう世論が盛り上がることを期待している。

絶対的貧困の解決を

2007年08月12日 | 格差社会
先に行われた参議院選挙の争点の一つとして、格差や貧困の広がりも争点の一つとして、国民の関心を集めた。
この選挙直前だっただろうか、北九州市で生活保護を打ち切られた50歳代の男性が餓死するという悲惨な事件が起きたが、この事件はけっして特別な事例ではない。この10年で餓死件数は800件以上あるという。遠い歴史上の出来事ならともかく、この現代日本において餓死する人がいるということは、想像もつかないことだ。
いま、生活に困窮し、生活保護を受給している世帯数は100万を超えている。多くが単身の高齢者や母子家庭であり、これ以外に、病気などの特別の理由により就業不可能な世帯が受給しているのだろうが、こういう世帯が100万軒以上もあることは大変な事態だ。
また、生活保護の受給にまでは至らないものの、その予備軍を含めれば相当な数になるだろう。預貯金を有さない国民は、約20%と言われている。突然の出費(病気やケガによる入院など)があれば、直ちに生活に困窮する層がこれだけ増えているということだ。
今までの記事でも述べてきたが、編集長は、格差の存在がおかしいと言っているわけではない。封建社会であろうが、資本主義社会であろうが、共産主義社会であろうが、個人間の格差を完全に解消することは不可能である。
しかし、その格差の広がりによって、生活ができないような絶対的貧困が生まれていることは許されないことである。
生産力が低く、できるだけ平等に分配しても、全体に生産物が十分に行き渡らないような社会ならば一部の構成員には生命を維持できない少量の生産物しか行き渡らないことがあり得るだろう。しかしながら、この高度に発達した資本主義国である日本において、日々の食事にも事欠くような国民が存在することは異常な事態である。
昨今の格差の広がりというのは、多くの国民を下層に追いやり、それに伴い、食事さえ満足に取れない最下層の人たちを大量に生み出してきた。
格差そのものの存在(相対的な貧困)を解消することは不可能であろう。しかし、絶対的な貧困の根絶はそれほど難しいことではない。
ある所からない所へ、所得を分配すれば済むことである。
しかしながら、日本政府は徴税権を正しく機能させることができていない。口を開けば、「お金がない」というが、これはまともな徴税能力がないことを意味している。ある所から取ってない所に回す、この単純な機能そのものを失っているのが、自民・公明の政権である。
しかも、何億円も収入や資産のある者から根こそぎ取り上げて、500万円で生活しろというような無茶なことを言っているわけではない。
生活ができないような同胞を救済するために、税金や社会保険料を仲立ちにして必要な拠出を行い、生活保護などのセイフティネットを充実すべきだと述べているだけである。
格差の縮小は望ましいことだが、それよりも絶対的な貧困、あるいは、こういう貧困に陥る不安を解消することが急務であると思われる。

最低賃金の引き上げを先送り

2007年07月06日 | 格差社会
政労使の代表らでつくる「成長力底上げ戦略推進円卓会議」でめざす中長期的な最低賃金の引き上げ目標の合意を今秋以降に先送りする方針を固めた。
参院選前に例年以上の大幅な引き上げで大筋合意することを目指していたが、引き上げの根拠となる最賃法改正案が今国会で成立せず、引き上げに反対する経済界の説得は難しいと判断したと報道されている。
最賃法改正案などの重要な法案を廃案に追い込む一方で、社会保険庁の解体法案などのくだらない法案を熱心に審議していたということだ。
要するに、政府、与党には、最低賃金を大幅に増額しようという気持ちがまったくないということである。
以前にも、記事の中で述べておいたが、最低賃金は都道府県ごとに、物価水準などを基に定められており、最低額は青森、岩手、秋田、沖縄の610円、最高額でも東京の719円である。
この最低賃金額で、1日8時間、月に20日間働いたとしても、東京では11万5040円であり、ここから、税金、社会保険料、家賃、公共料金を支払えば、おそらく、生活費はほとんど残らないだろう。最低額の610円では、同様に9万7600円である。東北地方や沖縄がいくら家賃や物価が安いとはいっても、これでは生活できないのは明らかである。
賃金というのは(これも以前に詳しく述べたが、)生きた労働者に備わっている労働力という商品を維持し、再生産するためのものである。したがって、労働者本人とその扶養家族の衣食住を保証し、社会的に見て最低限の文化的な暮らしを送ることができるだけの費用でなければならない。もし、これができないのなら、たとえば、お金のあるところから税金として取り立て、不足するところに回すという所得の再分配がきちんとできるような社会的な仕組みを作らなければならない。
世界第2位の経済大国と言われる日本の中に、ネットカフェ難民、バーガーショップ難民などと呼ばれるような「難民」のほとんどは、最低賃金よりも高い賃金で働いているだろう。それでもこのように次々と「難民」が生まれている現実は、とても、この最低賃金では、生活ができないことの現われである。
少なくとも生活できる賃金を保証することが必要だ。
これに対して、厚生労働省は「要請には法的な根拠がなく大幅アップは難しい」との見解を示しているようであるが、おかしな話だ。その法律を作るのは、われわれ人間である。必要な法案を作成して、国会に提出すればよいではないか。
多くの国民が、格差社会の根絶を願っている。最低賃金の底上げは、その第一歩である。ぜひ早期に実現するよう、政府、関係省庁、国会は努力すべきである。

グッドウィルユニオンに拍手

2007年06月26日 | 格差社会
日雇い派遣大手のグッドウィル(東京都港区)が給料から不透明な天引きをしていた問題で、厚生労働省は、天引きは賃金不払いで労働基準法違反にあたるとみて調査、指導する方針を固めたという。
一方、グッドウィルは、過去2年間の天引き分を返還すると発表した。対象は80万人で総額37億円に上るという。不透明な天引きは業界全体で横行しており、他社にも大きな影響が及びそうだ。
グッドウィルは、派遣1回当たり200円を保険料などとして天引きしていた。派遣労働者でつくるグッドウィルユニオンは「強制的な天引きで使い道も不透明」と返還を要求。今月上旬から組合員ら数十人が、各地の労働基準監督署に労基法違反として申告していた。
グッドウィルは、この問題が明らかになった際に、希望があれば返還するなどというアイマイな態度を取っていたが、世論の盛り上がりと厚労省からの指導により、とりあえず、2年分については全額返還する方針を固めた。大変喜ばしいことである。
同時に、2年以上前の違法な天引きについては、賃金請求権(2年の時効)を参考に支払わないとしていることは極めて不当だ。
労働者がこのピンハネ分を請求する権利があることを知っていたのならともかく、労働者をだまして、ピンハネしておきながら、請求権は時効だなどという言い訳は通用しない。
過去にさかのぼって調査し、全額を返還すべきである。
さて、今回のピンハネ問題であるが、その発端は、派遣労働者が作ったユニオンの追及によるものである。わずか数十人の組合員の行動が会社の違法行為を正し、結果的に、80万人の日雇い労働者に多大な利益をもたらすことになった。
もし、泣き寝入りしていたら、何も変わらないままに時が過ぎ、さらに多くの労働者が被害に遭ったに違いない。
ユニオンの活躍に拍手を送りたい。
労働者の立場は弱い。会社に対して物を言うことは、勇気のいることである。特に、このような日雇い労働者の場合、明日から仕事を回してくれなくなるかもしれないといった不安も生じるに違いない。にもかかわらず、勇気を持って会社の違法行為を告発した行動は賞賛に値する。
このユニオンの組合員はもちろんのこと、80万人の派遣労働者は、今回の件を通じて、ピンハネされた37億円を取り戻したにとどまらず、人間としての尊厳や生き方を取り戻したのではなかろうか。
この動きが、派遣業界全体に広がることを願っている。
また、非正規雇用者も、組合などに加入して、共同して声を上げることを期待している。

格差の源泉

2007年06月24日 | 格差社会
以前に、富の源泉や労働力商品のことについての記事を書いておいたが、ざっとおさらいしておこう。
アダム・スミスが着目し、マルクスがその仕組みを明らかにしたように、富の源泉は労働にほかならない。
たとえば、1000万円の資金を元手に会社を作ったとする。200万円は当初の人件費であり、800万円が工場や事務所、備品、機械、原材料などに当てられたとする。
何年か会社経営を行ううちに、経営が軌道に乗り、会社の金庫には、2000万円、3000万円という現金が積まれたとしよう。
800万円の設備投資は、ただ原価償却するのみで、何物をも生み出すわけではない。労働力の使用によって、原料が加工され、新たな商品を生み出すことによってのみ、会社は利益を上げることができたわけである。その際、労働力という商品は、労働者の生命に付随しているため、この価格は労働者の生命を維持し、労働力を再生させるための経費(生活費、賃金)として計算されるわけであるが、労働力は、その使用によって、この賃金分だけでなく、余剰の価値を生み出す。マルクスはこれを剰余価値と名づけた。
労働者は、自らの労働力を維持するための費用を賃金として受け取るわけだが、実際にはその5倍、10倍もの剰余価値を生み出しているわけである。
こうして生み出された剰余価値は労働者の物とはならず、工場や原材料を提供した会社の持ち主の物となる。これが合法的な搾取の仕組みであり、貧富の差の根源である。
しかし、現在の経済格差を仔細に眺めると、こういう合法的な搾取による富の蓄積だけでなく、不法な事例が数多く認められる。
たとえば、サービス残業がそれである。労働者を規定の時間以上に働かせておきながら、賃金を支払わないという、もっとも原始的な搾取方法の一つである。
また、そもそも労働力の再生産ができないような低賃金での雇用が横行していることである。
地方では最低賃金が610円というところがある。1日8時間、月に22日間働いても、額面でわずか107,360円である。ここから、税金、社会保険料などを差し引いて、まともな暮らしができるだろうか。
さらに、大企業による中小零細企業への単価切り下げなども、もう限界に達しているのではなかろうか。乾いたタオルを絞ると言われた大企業もあるが、中小零細の下請け企業の経営者も、命を縮めながら経営を維持しているのが実情であろう。
これでは、労働力が宿っている人間の生命すら維持することはできない。
まさに、生命の維持すら難しいような状態で労働者を長時間、低賃金で働かせる一方で、企業は富を蓄積し、一部の経営者のみがその分配に与(あず)かっているのが現在の格差の根源なのである。
誰にでも大企業の経営者になれる、大金持ちになれるチャンスがあるのだから、そうなればよいではないか、という議論があるが、誰が資産を形成するかを論じているわけではない。
誰が頂点に立つかということに、編集長はまったく興味はない。結局は、一握りの資産家と多くの貧困者という根本的な図式は、まったく変わらない。適切な富の分配によって、あるいは、この貧富が発生する図式そのものを解消しなければ、格差も根絶できないのである。

日雇い派遣労働者からのピンハネ

2007年05月27日 | 格差社会
携帯電話やメールで短期の仕事を紹介する「日雇い派遣」業界で、派遣会社が保険料などの名目で派遣1回あたり200~250円程度を給料から天引きする制度に対し、派遣労働者が天引き分の返還請求を始めた。
この金額の支払いは「任意」とのことだが、実際は十分な説明もされないまま、給与から差し引かれている。
業界大手2社は制度を廃止したが、労働者側は任意との十分な説明がなく使途も不透明だとして、過去に支払った分の返還を求める。徴収総額は大手で年間10億円規模に達し、返還請求の行方によっては業界の収益構造を揺るがす可能性もあるという。
日雇い派遣業界では、派遣会社が「データ装備費」や「業務管理費」などの名称で給料から天引きをしてきた。月に20日間働けば年間で5万~6万円程度になる。1日に3万人近くを派遣する大手のグッドウィル(港区)では、年間徴収額が約15億円に上るという。
派遣会社は、労働者が派遣先で物を壊した場合などの損害をまかなう保険料や、労働者の個人情報管理、装備品代などにあてたとしているが・・・。支払いは任意だと説明し、労働者も納得しているという。
しかし、労働組合などによると、スタッフ登録の際に「保険料として引くことになっている」などと言うだけで任意との十分な説明はなく、使途の内訳や保険の内容を明記した文書も交付されない。
ただでさえ、低賃金で働く日雇い労働者から正規の紹介料などとは別に、ピンハネしていたというのだから、いかにもあくどい商売ではないか。
労働組合が取り上げたところ、突然歯切れが悪くなり、とうとうこの天引きのシステムそのものを廃止したところを見ると、到底まともに説明できないお金であったことが想像できる。
これからの労働組合と派遣労働者の奮闘を期待し、応援したい。

東京都:年収500万円未満世帯、初の過半数、過去最多

2007年05月17日 | 格差社会
東京都が5年ごとに実施する「福祉保健基礎調査」で、年収が500万円未満の世帯が昨年度、初めて5割を超え、1981年度の調査開始以来、過去最多となったことが分かった。300万円未満の世帯も全体の3割近くで前回調査より約10ポイント増加していた。雇用機会や賃金で地方より恵まれている首都・東京でも低所得層の増加が顕著になっている実態が浮かんだという。
調査は昨年11~12月、無作為に選んだ都内の計6000世帯を対象に実施、3775世帯から回答を得た(回答率63%)。
それによると、年収500万円未満の世帯は51%で、2001年より13ポイント増えた。また、300万円未満の世帯も27%に達し、前回より9.3ポイント増加。2000万円以上は1.6%で前回より1.7ポイント減少、1000~2000万円は11.5%で3.2ポイント減るなど、高所得者層は減少傾向だった。
また、収入源については、28%の世帯が「年金や生活保護」を挙げ、「仕事をしている人がいない」世帯も過去最高の22%に達するなど、厳しい生活実態が垣間見える。
今回初めて行った所得格差の意識調査(複数回答)では、所得を決める望ましい指標として「本人の努力・実績」を選んだのは79%と最も多く、能力主義への期待の強さが表れた。次いで「仕事の内容・職責」が54%で、日本の慣行として長く続く「年齢・経験年数」は16%にとどまり、年功序列的な考え方には否定的である実態が浮かんだ。
所得格差の是正手段(複数回答)としては、「努力・実績が十分報われる環境整備」(53%)▽「中途採用など就労機会の拡大」(30%)--などが多かった。また、現在の社会状況についての問いには、「格差が固定化している」と感じる人は34%に上った。
79%が「本人の努力・実績」さえあれば、豊かな収入が得られると信じているにもかかわらず、半数の世帯が500万円未満での生活を余儀なくされているのは、どうも矛盾していないだろうか。
今は、多くの企業で「能力主義」賃金が導入されている。
もともとは、人件費を抑制するための方法として導入してきたものであるが、個々の労働の能力や実績をどのように判断し、給料の額に変換するのだろうか。もちろん、個々人を見ると能力の優劣は存在するに違いない。当たり前のことである。まったく均質な労働であれば、時間単位で測定し、実績に応じて給与を支払うことは可能である。しかし、異質な仕事間の給与額を相対的に決めることができるのだろうか。また、時間単位で測定できない業務も多い。ましてや、昔と違って、徹底した分業が進められており、仕事の成果を正確に評価することは容易ではない。
「能力の高い人には、高い給料を」という総論には賛成であるが、その運用の実態には異論を唱えざるを得ない。
また、この考えを推し進めると、障害者などにはとても生活できるだけの給与を保証できなくなるだろう。必然的に、障害者、病人や高齢者など労働の成果が上げられない人間は、この世に不要だという考えに到達せざるを得ない。おぞましいまでの現実だ。
今回の調査結果は、「本人の努力・実績」といういびつな評価方法が社会に浸透した結果であり、企業の思惑が成就したものと編集長は見ているが、読者諸兄はどのように感じられただろうか。

外国人研修:8割の企業で、長時間労働や基準外賃金未払い

2007年05月14日 | 格差社会
全国47都道府県の労働局が2005年に、「外国人研修・技能実習制度」で来日した外国人労働者が働く866事業所を監督指導したところ、その8割にあたる694事業所で、長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があったことが判明したという。
この問題は以前にも取り上げておいたが、これほど大掛かりな調査結果が判明したのは、今回が始めてである。
この制度を利用して来日している外国人は現在約16万人いるが、研修、実習を名目にしながら、実際は「格安の労働者」として扱われている実態が明らかになった。
制度上、研修は労働扱いではないため、実習生がいる事業所のみが指導対象になったが、研修生も同様の職場環境で働いているとみられる。
違反が最も多かったのは、非常用設備がない、衛生状態が悪いなどの「労働安全衛生法違反」328件。次いで、1日8時間、1週間40時間を超える長時間労働(労働基準法32条違反)326件。さらに、時間外・休日・深夜の割増賃金未払い(労働基準法37条違反)270件、最低賃金を支払っていない(最低賃金法違反)65件などとなっており、違反は延べ1516件に上っていた。
鳥取県の縫製会社では、中国人実習生12人を県の定める最低賃金(時給610円)を下回る285~476円で働かせていたとして、2社とその経営者を労基法、最低賃金法違反容疑で書類送検している。また、広島県府中労基署は、2005年の1年間に中国人実習生6人を含む19人の賃金と時間外賃金の計約3700万円を支払わなかったとして、寝具製造会社と役員を労基法違反容疑で書類送検している。このほかにも、似たような事例により、指導や勧告が相次いでいる。
青森では、縫製会社の研修生が長時間労働に耐え切れずに逃走し、保護を求めるなどの事件も起きている。また、パスポートや通帳の取上げなどの人権侵害も明らかになっている。
外国人労働者による労基署などへの相談件数は年々増え、2005年には全国で約1万件に上っているという。
こういう外国人労働者を研修や実習目的で受け入れている企業は、圧倒的に中小零細企業が多い。大企業による下請けへの単価切り下げや安い外国産の商品に対抗するため、このような企業では人件費や諸経費を徹底的に切り詰めてきたが、それにも限界がある。とうとう、研修生や実習生名目で外国人労働者を受け入れ、不法な労働行為をさせることによって、かろうじて経営を維持しているのが実態であろう。
外国人研修生、実習生を受け入れておきながら、不法な労働を強いる行為は許せないが、これを取り締まるだけでは問題は解決しないだろう。
中小零細企業の経営が維持できるような価格保証制度がなければ、経営そのものが成り立たないのは容易に想像できる。かつては、Made in Japanが世界を席巻したが、いまはMade in Chinaなどが世界市場を席巻しようとしている。
経済のグローバル化の中で、中小零細企業にも方向転換が求められていることも事実であろう。
また、バブル期を上回る高収益を上げる巨大企業の陰で苦しんでいるのは、一般労働者、非正規雇用者だけでなく、下請けである中小零細企業も同様であろう。
したがって、中小零細企業も、親会社に対して、下請け単価の切り上げなどを求めて声を上げる時ではなかろうか。
この点を改善しない限り、外国人研修生、実習生の悲劇は根絶できないと思われる。また、現在日本で進んでいるワーキングプアなどを解決する近道であると思われる。

ネットカフェ難民

2007年04月04日 | 格差社会
以前から、ネットカフェやまんが喫茶を宿泊施設として利用している若者が増えているということを聞いていたが、最近は新聞やテレビでもずいぶんと報道されるようになってきた。ネットカフェ難民と呼ばれているそうで、ホームレスと異なる点は、ただ、ネットカフェという屋根のある所で寝られるということだけである。
1泊1000円~1500円くらいで、狭い個室には、パソコンと椅子があるだけ。
店によって構造は多少異なるのだろうが、隣とは簡単な仕切りがあるだけで、ドアの高さが低くて上から中が覗けるような店もあるようだ。プライバシーも何もあったものではない。また、リクライニングシートやシャワーが完備されたところもあるようだ。
ビジネスホテルやカプセルホテルで宿泊するよりも格段に安いが、本来の利用方法を逸脱したこのような利用方法は、たとえば消防法などの法令に触れることはないのだろうか?そんなことも気になっている。
また、狭い空間で十分に足も伸ばせず、エコノミー症候群になったり、不眠症になるようなことはないのだろうか。
実家を飛び出した若者、上京して働いていたものの職場になじめず、バイトで食いつなぐ若者など、事情はそれぞれであるが、家賃を払うお金に窮しているため、アパートなどの定住場所を確保できず、ネットカフェなどを寝ぐらにして、バイト先や派遣先の会社に通っている。
カフェの近くからマイクロバスに乗って、そのまま工場に直行などというケースもあるようだが、こうなると、新しい形態の日雇い労働者のようだ。おそらく、偽装請負の巣になっているのではなかろうか。
10代後半の未成年の若者も多く、もちろん女性も含まれている。
現在のこのような境遇をバネにして、やがてはアパートを借り、正社員になり、立ち直っていく若者もいるだろう。
しかし、バイトを掛け持ちして頑張っても、月収が15万円程度では、なかなかこういう状態から抜け出せないのが現実であろう。
こういう働く意思のある若者たちに、一時的にでも宿泊施設を提供し、多少の蓄えができれば、アパートなどを借りて自立できる、そういう短期の宿泊施設を国や自治体の責任で作れないのだろうか?
また、企業が非正規雇用者を正規社員に登用するよう、政府や自治体は法的な規制を行うべきであろう。
こういう重層的な取り組みによってのみ、現在の格差を解消できるのである。

自治体首長へのアンケート「小泉改革で格差広がった」

2007年03月19日 | 格差社会
4月の統一地方選を前に、全知事、市区町村長の計1882人(2月1日現在)を対象に読売新聞社が行った「全国自治体首長アンケート」で、インターネットの画面で回答する方法で、1月末~2月末に1718人から回答を得た。その結果、全体の9割が「小泉改革」によって中央と地方の格差が広がったと感じていることがわかったという。
この結果を見て、編集長はどうも驚きとともに怒りを禁じ得ない。
現在は、自治体首長のほとんどが保守系無所属である。無所属とはいうが、実質上は自民党、公明党が全面的に支援し、しかも多くの自治体では民主党までが相乗りしているケースがほとんどだ。
これらの首長は、おそらく前回の選挙において小泉首相を天まで持ち上げ、同じように「改革」を叫んで当選した面々がほとんどではなかろうか。町村長などはともかく、県知事や大都市の市長などは、小泉首相の直接の応援を受けたり、首相と並んで握手したポスターを張り出したりした面々も相当数存在するのではないかと思われる。
一部の良識ある人たちが、小泉流の「改革」の危うさを指摘してきたが、その声はあまり省みられることはなかった。
多くの国民が、小泉政権の狂気のような「改革」に熱狂したのだから、これらの自治体首長だけを責めるわけにはいかない。しかし、もし、その「改革」のために地域格差が広がり、さらに格差社会と言われるような社会の現実を感じているのなら、誠実に自らの行動を反省し、出直すべきではなかろうか。
過去の自らの行動には頬かむりをしながら、一方で、国民世論の動向を気にしながら、今になって批判を口にするのは、政治家として節操がないと言わざるを得ない。

低賃金で外国人研修生転がし

2007年03月13日 | 格差社会
日本の高い技術を学んでもらおうと国際貢献の一環で設けられた外国人技能実習生・研修生制度を悪用し、賃金を不当に安く抑える「研修生転がし」と呼ばれる手口が各地で横行しているという。
同制度では、研修生は1年間、座学や実務の研修を受け、国からの委託で自治体が行う技能や日本語などの検定に合格すると、実習生としてさらに2年間の技能実習を受けられる。研修生への手当は受け入れ企業などの裁量だが、実習生は労基法の適用対象となり、最低賃金が保証される。
ところが、受け入れ企業が、研修生が労働基準法で定められた最低賃金の半分以下の「研修手当」で雇用できることに目を付け、実習生に昇格する直前に「実技試験に落ちた」などとうそを言って帰国させ、新たに別の研修生を受け入れているケースもあるという。
日曜日も休みなく1日8時間以上働いて、手当は月に5万円という研修生もいたというから、ひどい話である。
経済のグローバル化の中で、日本の労働者は、中国、東南アジアなど人件費の安い国々の労働者との競争を余儀なくされている。
しかし、今回の事例は、その廉価な外国人労働者を違法にこき使って、更なる人件費削減を行っていたということであり、これがさらに日本の労働者の待遇の低下に繋がっていく。
さらに、「実地試験に落ちた」などとウソの宣告をされ、失意のうちに日本を離れた外国人労働者は、今どのような人生を歩んでいるのだろう。
国が作った研修生制度である。このような違法な労働条件で働かせることを国や自治体はなぜチェックして防止することができなかったのだろうか。
こういう制度を悪用した企業には、厳しい罰則を設けるべきであるが、現実的には、こういう外国人労働者を研修生として受け入れ、過酷な労働を強いていた企業のほとんどは、中小零細企業ではなかろうか?
外国人研修生も、あるいは彼らを受け入れた側も、経済のグローバル化の犠牲者かもしれない。
いずれにせよ、外国人研修生の待遇が改善され、この制度が近隣諸国との友好に役立つ制度になることを心から願っている。

男性非正社員の結婚の割合は正社員の4割

2007年03月09日 | 格差社会
非正社員の男性が結婚する割合は正社員の4割――こんな実態が7日、厚生労働省の調査で判明したとの報道があった。
また、既婚者について、子どもがいる割合を妻の仕事別にみると、非正社員は正社員の半分だった。非正規労働が増えるなかで、雇用や経済基盤の不安定さが結婚や出産を阻む原因の一つとなっていることが、改めて浮き彫りになったと記事は伝えている。
この調査は、2002年10月末時点で20~34歳だった男女を対象に、同年から毎年同じ回答者を追跡調査している「21世紀成年者縦断調査」で今回が4回目だそうだ。約1万9千人の回答を集計したという。
1回目の調査で独身だった正社員男性のうち、これまでに結婚したのは15%だったのに対し、非正社員は6%にとどまり、2.5倍の格差。無職は4%だった。結婚した女性の割合は、正規、非正規、無職で大きな差はなかった。
「結婚したい」と考えている独身者は、男性の場合は正社員69%、非正社員50%、女性では正社員73%、非正社員63%であり、男女ともに正社員の方が結婚希望の割合が高かった。
妻の仕事別に子どもが生まれた割合をみると、正社員の場合は33%で、非正社員の16%を大きく上回った。専業主婦は31%だった。厚労省は「正社員なら育児休業を活用しやすいなどの状況が影響している可能性がある」との見解を発表している。
本紙でも1月17日付「少子化と人口減少」の記事の中で書いたことだが、家庭の経済的な基盤が、結婚や出産に与えている現状を指摘しておいたが、今回の結果はそれを裏づける調査結果である。
全労働者の3分の1が非正規雇用者という状況では、出産、子育てどころか、結婚さえままならないという現状が今回の結果で浮き彫りになった。
厚生労働省は、労働、雇用問題だけでなく、少子化問題に責任を負う官庁である。今回の結果を今後の立法や行政指導にどのように役立てていくつもりなのだろう。
大企業で蔓延している偽装請負の取り締まりはもとより、派遣社員の待遇改善、最低賃金の引き上げ、サービス残業の禁止など、やる気さえあればすぐにでも解決できることは多い。
今回の調査結果を本当に活かすのであれば、こういう諸点について直ちに是正措置を講じるべきではあるまいか。

自治体が偽装請負

2007年03月04日 | 格差社会
全労働者の3分の1が派遣などの非正規雇用と言われる中、地方自治体が違法な「偽装請負」を行っていたことが判明している。
京都の京丹後市では、転籍、再雇用した元非常勤職員などを給食調理や学校用務などに派遣する請負会社を設立し、派遣事業の認可が下りる以前から、職員の募集、採用を計画し、京都労働局から派遣法違反で指導を受けているにもかかわらず中止せず、再び指導を受けるなどの問題になっている。
出資者も、派遣先もすべて自治体という、派遣法が禁じている特定企業への派遣を目的とした違法行為である。
兵庫県篠山市でも、市が100%出資する請負会社をつくり、図書館や学校に勤務する非常勤職員として派遣していた。
請負の場合は、請負会社が直接、業務に関する命令を出さなければならないが、実態は市の職員が業務を命ずる偽装請負であることが判明しており、兵庫労働局も是正を指導する事態になっている。
非正規雇用が広がり、それによってワーキングプアといわれる貧困層が増加する中、本来、法律を遵守し、住民の生活や安全を守るべき自治体がこのような「偽装請負」を公然と行っていたことはとんでもないことである。
派遣される労働者は、請負会社に給料をピンはねされ、収入は確実に低下する。そして、請負会社には、自治体の幹部が役員などとして天下りし、甘い汁を吸う構造になっているのである。
小泉流の「構造改革」によって、「民間にできることは民間に」という安易な経費削減、民間委託が進められてきたが、結果、切り捨てられたのは職員の給与や住民への直接的なサービスであった。
いま、全国の企業に派遣や請負などの非正規雇用が広がる中、地方自治体は率先してこのような業態を排除し、雇用の安定化、住民サービスの向上のために努力すべきである。

紳士服大手「コナカ」に労働組合結成

2007年02月28日 | 格差社会
インターネットのブログでのやり取りをきっかけに、紳士服大手「コナカ」(本社・横浜市)に今月、労働組合が誕生したという。全国の店舗に散らばる社員らが、労働条件の不満を書き込むうちにブログで「団結」し、会社に改善を求めようと話が進んだ。サービス残業や休日出勤の是正などを求めていくと報じられている。
組合は「全国一般東京東部労組コナカ支部」。茨城県の店舗に勤める25歳の副主任が委員長に就き、書記長は他店の同僚が引き受けた。
1年ほど前に、NPO法人「労働相談センター」(東京都葛飾区)に、コナカでの長時間労働などを訴える匿名の手紙が相次いだ。同センターはブログで、具体的な事例を寄せるよう従業員と家族に呼びかけたところ、ポツポツと書き込みが始まったそうだ。
組合の委員長も、相談先を探してブログにたどり着いた。朝8時半に出勤し、閑散期でも夜8時半、繁忙期には9時、10時まで働く長時間労働や、残業代の制限、有給休暇が取りづらいことなどに疑問を感じていたという。
コナカの人事部は、長時間労働の実態は把握しておらず、調査中というから、職場にはサービス残業が横行していた可能性が高いが、団体交渉には真摯に対応したいということである。
労働者は、一般に弱い立場にある。不満があっても、会社の言いなりになるしか仕方がないとあきらめている例が多いと思われる。会社の帰りに屋台で一杯やりながら上司や社長の愚痴を言い合って、憂さ晴らしをしても、本質は何も変わらないのである。
今回のように、労働組合を結成し、団体交渉などを通じて、自らの人生は自ら切り開いていくことなく、職場環境も、自らの人生も打開することはできないのだ。
勇気ある行動と素晴らしい人生に拍手を送るとともに、労働組合が職場でしっかりと根を張ることを願っている。
そして、このような取り組みが、ワーキングプアと呼ばれる貧困層をなくし、サービス残業や過労死を防ぐもっとも有効な手段であることを確信している。全国の職場に広がることを応援したい。