BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

ハルキストは?

2014年09月11日 | 古本
 村上さんの短編集、例のタバコのポイ捨てシーンで町の名前がでて話題になった「ドライブ
・マイ・カー」が載っている。中では中頓別町が<北海道※※郡上十二滝町>と架空の町名
になり4ヶ所が書き直されている。(きっと元は北海道枝幸郡中頓別町になっていたと思う)
しかし全体の流れを読むとたとえ実町名だったとしても、そんなに不愉快な記述だとは思え
ない。小説の中のことがそのままなのだとは読者が思うハズもないのだ。そんなことなら
小説の中で地名が出る殺人事件が起きたり、事故があったりの展開は出来ないことになる。
 あらすじはこうだ。舞台俳優(家福)の主人公がワケあって専属運転手を雇うのだが、
その若き女性ドライバー(渡利みさき)が上十二滝町の出身ということだ。当然村上さんの
小説に田舎町出の無口な彼女が主役になることは無い。(運転はプロで都内の道も精通)
 しかしいままで春樹小説ではその地域が連想できるというだけで、そのイメージを求めて
旅に来る熱狂的ファンがいるのだという。実名の町名なら尚更ということになる。中頓別町
の町議会議員はなにを勘違いしたのだろうか。だいたい人口1900人に満たない過疎の町
に乗用車などそう走ってはいないのだ。過疎をバカにするのではない。静かな町で、車の縦列
駐車などに気を遣うほど狭い町ではないのだ。(主人公は縦列が出来るか気になったが)
 それよりは、いくら小説だとしても少々気になる記述があった。アタシはこっちの方が気に
なる。少々長いが引用させてもらう。(P-33)
 <家福には三日だけ生きた子供がいた。女の子だったが、三日目の夜中に病院の保育室で
死んだ。前触れもな突然、心臓が動きを止めてしまったのだ。夜が明けたとき、赤ん坊は既
に死亡していた。心臓の弁に生まれつき問題があったというのが病院側の説明だった。しかし
そんなことはこちらで確かめようもない。また本当の原因がわかったところで、それで子供
が生き返るわけでもない。幸か不幸か、名前はまだ決めていなかった。その子が生きていれ
ばちょうど二十四歳になる。その名前のない子の誕生日に、家福はいつも一人で手を合わ
せた。そして生きていればなっていたはずの年齢を思った。>
 しかしこれ民法の戸籍法に照らすと正確ではない。赤ちゃんが生まれると死産でもない限り
必ず名前は付けられる。それは生まれて数時間の命でも、数日間生きても同じだ。だからこの
場合は名前を付けて出生届と同時に死亡届を役所に出さなければいけない。だから名前を付
けていなかったというのは違うし、<その名前のない子の誕生日に、>というその辺の表現が
変わるはずだ。小説の中の記述だとしても、どう思うのだろうか春樹ファンは?・・・
 「女のいない男たち」 著者 村上 春樹  文藝春秋 定価1574+税
  ( 2014年4月25日 第2刷発行 )※合計6編の短編集

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