BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

糠 南

2011年10月02日 | その他
 恐らく駅舎としては日本で一番小さい(?)あの駅に、いま人が降り立つのだろ
うか。スチール製物置に窓を付けた改造型だ。その身の丈に合った寸法が微笑まし
い。そもそもがどうしてここに駅が出来たのか、理由がもう不明になっている。
 しかしかろうじて駅周りには小さな畑があり、何種類かの作物が育っていること
で人の気配を感じる。入り口の戸を開けると、飲料ケースを逆さにしたその上に
座布団が載っていた。一人専用駅舎のようで、延ばすと左右の壁に手がつくだろう。
 お爺さんかお婆さんが、ひとり座って汽車を待つ情景が目に浮かぶのだが、もしか
するともうその席さえ、必要とさていないのかも知れない。座布団は薄っすらとホコ
リっぽく、おしりという圧力がかかった形跡がない。
 けれどもあの小さな窓から誰かが、乗るべき列車の方向をみつめ、待っていたのだ。