アタシらは20人ばかり、スタジオの中でザワザワと仕事の準備をしていた。
そこえしばらく音沙汰の無かった〔女〕がヨロヨロと歩いてきて倒れた。みると
いつの間に身体は子供のように小さくなっていて、痩せこけていた。手は、中空で
物を捕り損ねた鳥の足のように丸まって、血の気も無く白く小さく、死人のように
冷たかった。アタシはその〔女〕の手を取り一指づつ開かせ、直前に読んでいた
藤沢 周平の短篇「賽子無宿」のラストシーンにあった、ある似たセリフをみんなの
前ではっきりと云った。しかし〔女〕からの反応は無かった。もうどこか遠い世界
へ行っているのか、アタシは焦った。
朝まではっきりと覚えている、久々の夢だった。読んだ本のある特定のシーンと
自分がみた夢遊の中で、混同していたようだ。夢と重なったのは以下のところ。
※ 藤沢 修平「賽子無宿」(さいころむしゅく)より
<お勢は悪寒で歯の根も合わない喜之助を温めるために、ひと夜裸で男を抱き
つづけたのだと言った。
そう言ったのは、次の夜喜之助に抱かれたときである。
―でも義理を作ったなどと思わないで。忘れてもらっていいの。>
沢木 耕太郎さんが選集した〔右か、左か〕というテーマの13人の短篇集。
普段 単行を買ってまでは読まない作家さんと出会えるのは楽しい。
沢木 耕太郎編「右か、左か」(日本文学秀作選) 文春文庫 定価648円+税
( 2010年1月10日 第1刷 )
「知的な痴的な教養講座」 著者 開高 健 集英社文庫 定価533円+税
( 2006年3月7日 第21刷 )
※痴的な話しが沢山で、知的になる一冊の文庫。
そこえしばらく音沙汰の無かった〔女〕がヨロヨロと歩いてきて倒れた。みると
いつの間に身体は子供のように小さくなっていて、痩せこけていた。手は、中空で
物を捕り損ねた鳥の足のように丸まって、血の気も無く白く小さく、死人のように
冷たかった。アタシはその〔女〕の手を取り一指づつ開かせ、直前に読んでいた
藤沢 周平の短篇「賽子無宿」のラストシーンにあった、ある似たセリフをみんなの
前ではっきりと云った。しかし〔女〕からの反応は無かった。もうどこか遠い世界
へ行っているのか、アタシは焦った。
朝まではっきりと覚えている、久々の夢だった。読んだ本のある特定のシーンと
自分がみた夢遊の中で、混同していたようだ。夢と重なったのは以下のところ。
※ 藤沢 修平「賽子無宿」(さいころむしゅく)より
<お勢は悪寒で歯の根も合わない喜之助を温めるために、ひと夜裸で男を抱き
つづけたのだと言った。
そう言ったのは、次の夜喜之助に抱かれたときである。
―でも義理を作ったなどと思わないで。忘れてもらっていいの。>
沢木 耕太郎さんが選集した〔右か、左か〕というテーマの13人の短篇集。
普段 単行を買ってまでは読まない作家さんと出会えるのは楽しい。
沢木 耕太郎編「右か、左か」(日本文学秀作選) 文春文庫 定価648円+税
( 2010年1月10日 第1刷 )
「知的な痴的な教養講座」 著者 開高 健 集英社文庫 定価533円+税
( 2006年3月7日 第21刷 )
※痴的な話しが沢山で、知的になる一冊の文庫。