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日本経済の現状は、移民受け入れに反対することの国家的リスクを教えてくれる良い教訓

2024-04-25 10:48:05 | 書評
★【日経ビジネス】「日本は反面教師、米国にはもっと移民が必要だ」アン・O・クルーガー 米ジョンズ・ホプキンス大・高等国際問題研究大学院教授
 私は日本政府の外国人管理方針が国益に反する近視眼的な誤った姿勢だと繰返し訴えてきた。ここでクルーガー教授が述べる提言こそ日本政府は耳を傾け政策の根本的転換に生かすべきである。
 江戸いろは歌留多から諺になった『無理が通れば道理が引っ込む』という語句があるが、日本政府は国益から見ると筋が通らないな政策(=無理)を選び、科学的論議(=道理)を拒んでいる。
 その背景には国民の抱く<異人嫌い><共生・多様性の忌避><治安悪化の妄想>があるのだが、この感情を国民が本気で克服しようと思わない限り、経済停滞・人口/労働力減少は悪化するばかりだ。
  『移民の誘致競争=奪い合い』は既に始まっている。今の政策だと日本は増々「働く魅力のない国」に留まり、見向きされなくなる。それは子供でもわかる理屈だ。


* 日本経済の現状は、移民受け入れに反対することの国家的リスクを教えてくれる良い教訓になるだろう。第2次世界大戦後に急成長を遂げた日本の人口は2010年の1億2810万人をピークに(原文ママ。人口統計では日本の総人口のピークは
 2008年)、24年初頭には1億2400万人まで減少した。今後もさらに減少を続け、55年までに1億人を割り込むと予想されている。
 1990年代以降の日本の経済停滞の一因は人口問題、つまり生産年齢人口が93年の8680万人から2010年には8150万人へと減少したことだ。日本は当初、移民受け入れに反対していたが、やがて移民を奨励するさまざまなインセンティブを導入した。
  しかし、これらの施策はわずかな成果しかもたらさず、日本の人口は減少し続けている。

 ← 米国からは日本が「移民を奨励するさまざまなインセンティブを導入した」と映っているようだが、実態は名称と待遇改善を少し施しただけの臨時労働力確保策でしかないことは日本国民が知っている

* 人口と労働力の減少によって、労働者の生産性向上につながる新しい資本財に向けられるべき投資が労働者の補充に振り向けられるならば、経済成長を阻害する可能性がある。さらに、労働市場への新規参入者の平均学歴は定年退職者のそれを
 上回っている。米国で出生した米国人労働者数は2019年以降減少しているものの、米国の労働力人口全体は移民のおかげで2%増加している。米議会予算局の試算によると、高い移民率によって今後10年間の年間平均国内総生産(GDP)成長率を
 0.2ポイント押し上げる効果が見込める。
 歴史的な低失業率といつまでも続く労働力不足のさなかで、移民が米国人の仕事を「奪っている」と主張するのはおかしな話だ。同様に、移民は罪を犯しやすいという極右ポピュリストの主張を裏付ける証拠はほとんどない。
  それどころか、移民は米国生まれの米国人よりも法律を守る傾向があることが、研究によって繰り返し示されている。
 ← 感情的メディア報道ではなく、客観的な犯罪統計は日本にあるのか?

★ 短期的には混乱が生じる可能性があるにせよ、長期的に見れば移民は受け入れ国に経済的利益をもたらす。米国の公共政策の議論は、移民の悪影響について非生産的な議論に終始するのではなく、
 移民の最適な比率の決定や合法性の確保、(米国社会への)スムーズな適応の促進や、生産性の向上に焦点を当てるべきである。さらに政治家らは、移民や亡命希望者の出身国の経済成長を促し、
 所得水準を向上させる方法を探るべきである。 ← この提言は、そっくりそのまま日本政府にあてはまる

◎ 米国の合計特殊出生率(女性1人当たりの生涯出生数)が07年時点の2.1から20年には1.64に低下したことを考えると、現在のレベルの移民受け入れでも人口減少を相殺するには不十分かもしれない。
 足元の労働人口規模を維持するためには、米国は毎年160万人(人口の0.5%相当)の移民を受け入れなければならない。移民を受け入れなければ、米国の人口と労働力は毎年約0.5%減少するだろう。

◆ 自国において国民の労働力が減少していく中、その補充が急務と認識する国が増えるにつれ、移民の誘致競争は激化するに違いない。日本のような経済停滞の時代を迎えないようにするためには、
 先進国全体の政治的議論によって合法的な移民の受け入れを促し、より効果的な移民政策を採用する方向にシフトしなければならない。
  ← 果たして日本政府・霞が関官僚に、この国際的枠組みに乗り遅れないよう国民を説得する気概と準備はあるだろうか???
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