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書評  093-4 「標準語に訳しきれない方言」   日本民俗学研究会編    2020年4月 刊   彩図社

2020-04-04 06:50:41 | 時評
【承前】 <近畿地方>
2. (指を詰める):  これは、標準語で言う<扉などに、うっかり指を挟んでしまうこと>の表現にあたる。

          近畿以外の地方では、ヤクザ映画隆盛の副産物なのか、(指を詰める)は、もっぱら恐ろしげなシーンの画像イメージが定着してしまった。 
          ヤクザ映画の大半が関西/西日本を舞台にしたので、(詰める)が隠語的色彩を帯びるようになったのであろう。
          21世紀も20年を経た現在、果たして近畿地方の電車のドア付近に『指詰めに注意!』シールが今も貼られているのか? 

        * 思えば、此の(詰める)は、何かを箱等の中へ押し込む(詰め込む)に通じる表現であり、狭い所へ何かが挟まる描写は、詰める側が指で
          なくても成り立つ。
      
3. (しーこいこい): これは<小さい子供におシッコを促す時に使う>表現である。 ← 標準語、或は他の地方に相似の表現はあるのだろうか?
          中にはメロディーを付けて歌うように(しーしーこいこい、しーこいこい)と促す場合もある。 (しーこっこ、しーといとい)というのも
          西日本の他の地方には有るようだ、と書かれている。

          そういえば、遠い記憶を手繰ると、私の母の声で(しーしーこいこい、しーこいこい)という節回しが耳に甦った。 
          母は島根であり、近畿育ちではないので、これは恐らく西日本に広く流布していた方言(オノマトペ)だったのだろう。
           殆んどの記憶は霧の彼方に消え失せても、幼い日の何気ない原風景は残るものだ、と今更ながら感じ入るしかない。 合掌。

4. (もーもーする): これはおシッコではなく、排便時に使われる表現だ。 東国方言の(ばんばんする)と同じであろう。
          ← (ばんばんする)を標準語と扱うべきかは不明ながら、農耕作業に耕運機ではなく牛が使われていた時代のを知る世代には
           (もーもー)の方がイメージしやすいかもしれない。                             < つづく >
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