ギフチョウを自生地に近い、栗林に呼ぶために、栗林にカンアオイ畑をつくることになってから、まる6年が経過しました。昨年も報告しましたが、今年も私のカンアオイ栽培を報告します。といっても昨年とほとんどかわりはありません。
1、種とり
6月にはいると種とりの時期になります。種子は早くとっては、ダメで発芽しません。種子の色は茶色です。うす茶や白では発芽率は悪いと思います。ところが、種子の入った実からはそれが判断できません。それで、実をとってみて、中をわって確認するしかないようです。
ギフチュウが葉っぱを食べたカンアオイは、自生地では、どこにカンアオイがあったかどうかもわからなくなるかもしれません。またギフチュウは、カンアオイの実も少しかじってしまうこともあります。かじられた実は急速に子房?が粉状化し、種子がさらけだし、そこへ、アリが種子を持って帰るということになります。
ただし、いい株にめぐまれれば、そこだけで、100粒くらい種子はありますから、数とれればいいなあと気楽に考えることです。
また、種子をとった株には、お礼として、マグアンプの大粒の肥料を株元に3つくらいあげておいてください。自生地では、種子をとることに抵抗はあるかもしれませんが、自然の状態でカンアオイの種が周囲にアリにはこんでもらって、それが大きな株になるのは、数年以上かかることでしょう。自然にカンアオイを増やすというのは、そう簡単ではないと私は思っています。
2、種まき
種は取り蒔きがいいでしょう。すぐに蒔けない場合は冷蔵庫に保存します。実から種だけとっておいたほうが、あとあと作業は楽になります。手が臭くなりますが、これは仕方ありません。
16穴のプラグに播きます。管理しやすいからです。土は山の土を私はつかっています。普通の土でかまいませんが、乾燥に強い土がいいと思います。値段の高い土にしなくてもいいのですが、雑草がたくさんはえてくるような土でも困りますね。
1穴に20粒くらい種をいれます。これは、1個からでもいいのですが、どうせ植え替えするのですから、20も芽がでてもいいのです。20入れるとしたら、このプラグだけで、360粒の種子をいれることになります。
発芽は来年の3月ですから、発芽率をあげるためには、重要なことがふたつあります。一つは絶対に乾燥させないこと。もう一つは種子をアリにもっていかれないことです。昨年6月に種まきしたプラグも芽が5つもでていないのも、ありましたし、200近く芽がでているのもありました。そこの違いが私には、わかりません。数打てばあたるでやっています。
種をいれたら、土に水を十分すわせ、よく圧迫し、かるく土をかけます。そして、工夫をします。それは、その上に杉葉チップを1層ふりかけます。これは表面の乾燥を防ぐためです。乾燥した杉の葉をミキサーで砕いて使います。
種蒔き後の置き場所
これも、大事なことですが、管理が楽なほうが、いいでしょう。私は、暗い杉林においときます。その時に、近くで拾った杉葉をもういっそう雑にかけておきます。これは、強い雨から守るためです。昨年は、杉林のイノシシの通り道だったらしく、10プラグがイノシシによってけちらかせられ、発芽することはありませんでした。
乾燥が絶対にだめで、強い雨にもあたりたくないということは、暗い軒下がいいかもしれません。それでも、時々水やりをしないといけないでしょう。私は、発芽するまでは、水やりは1回もしません。
そうして、来年の3月までおいときます。3月になれば、上の大きな杉葉は取り除いたほうが植え替え時がらくになります。
3月になり、発芽が確認されたら、杉林から作業場にもってかえります。あまりながく暗い杉林においとくと、苗が徒長して、移植の時に折れたりします。上の画像は、今年1番たくさん発芽したプラグです。200株近くできたでしょうか。
3、植え替え
5月になれば、植え替えを開始します。ポットに丁寧に植え替えしていきます。私は5cmポットに2株ずついれています。これは、数がたくさんあることと、もう1回植え替えをするからです。苗があまりないようであれば、植え替えは1回でいいのです。7,5cmポットか9cmポットにいれてやればいいでしょう。カンアオイは、他の植物に比べて大変植え替えが楽な植物です。また根がからみあうこともなく、すぐに、土やとなりの苗のねっことわけることができます。小さな根っこなのですが、植え替え時に枯れることはほとんどありません。
植え替え、終了です。大きな育苗箱に5cmポットが6列かけ9で、54ポットはいります。それに2苗ずつですから、1つの育苗箱で108苗を育てています。これを、屋根付きの作業場で育てます。屋根は、透明のプラスチックトタンなのですが、それでも、日射しが強いので、屋根の下に遮光ネットをはっています。
ここで、大事なのは、その前の発芽苗もそうなのですが、絶対に西日をあてないことです。25度以上の西日が10分くらいあたれば、すぐに苗は焼かれてしまいます。春は急激に温度が高くなる日があるので、要注意なのです。
上の状態で、本葉がでてくるのを待ちます。けっこう水やりがたいへんです。今年は、20育苗箱になりました。2000苗育てています。
本葉が2枚でてくると2回目のポット移植をします。今度は1株ずつ。7,5cmか9cmポットに植え替えします。
今年は、上に書いたように、2000株ありますから、それを1株ずつにするとさすがに、作業場にははいりません。どうしましょうか。
上の画像は、昨年8月から9月にかけて移植した株の現在の状況です。作業場で冬を越しています。昨年秋1000株くらいあったものをほとんどを山に移植したのですが、100株くらい残しています。このポットのまま、ギフチョウの自生地にもっていくと、産卵してもらえることもあります。
水やりが大変なのですが、雨にあたらないため、あとで述べる、白絹病が発生することはありません。また肥料を多めにやることで、株が大きくなり、来年には、種をつけるくらいになるでしょう。自然で、ここまで、株が大きくなるには、5年はかかると思います。それを1年で大きくさせるのです。けれど、肥料が多いということは、それだけ、軟弱になり、病気の抵抗性は弱くなります。
上のポット苗も7月になれば、山に移植の予定です。
4、カンアオイの病気
これも、今までに何回も報告してきました。私が一番困っていることです。2000株も育てているのに、明るい未来が見えてこないところです。
私が、きづいたのでは、3種類の病気があります。白絹病、黒星病、委縮病です。黒星病は、私が、ほかの植物の病気を見てそれと同じような病気だと考えているだけなので、正確な病名はわかりません。11月ころから発生します。葉っぱに黒いしみのような斑点ができしだいに拡大していきます。葉っぱを除去することで、株自体はやられることはないようです。ただし、何百枚も除去しないといけません。委縮病は、葉が変形している病気です、本葉がでるうちから病気になっている苗もあります。作業場に蔓延しているのでしょうか。ただし、株の命まではとらないようです。
一番怖い白絹病の画像です。ある日、急に株が元気なくなり、おかしいなあとおもっていると、数日後には、枯れてしまいます。ほってみると根本に白い菌糸がからんでいます。
この病気は、栗林カンアオイ畑に蔓延しています。毎年100株くらいはやられているのでしょう。勢いはとまりません。500株くらいは、まだ栗林カンアオイ畑には、あるので、ギフチュウを育てるには、食料が不足することは、ありません。しかし、数年後には、どうなっているかはわかりません。
最初、カンアオイを密植させすぎたのも広がる原因となっています。場所によっては、植えたカンアオイがほとんどのこっていない地帯もあります。
手のうちようがないので、栗林カンアオイ畑には、もうカンアオイは植えていません。
周囲の山にかってに植えています。そこにもすこしずつこの病気がきているようなので、今は、そうとう離れた場所でカンアオイを育ててみようかと思っています。また今は自分が育てて、カンアオイポットを自生地に植えることもできません。それをすると、自生地のカンアオイも感染してしまう可能性があるからです。
土壌や器具をすべて、消毒するのは、不可能です。
また新しいカンアオイ畑をどこかにかってにつくっていくことはなるでしょう。
最後は、すこし、きびしい現状を書きましたが、カンアオイを種から育て、その葉っぱをギフチュウが食べてくれるのを見るとうれしくなります。しばらくは、苗作り、山への移植と精をだしてみます。