ギフチョウを栗林に呼ぶという計画をたてて丸5年が経過し、6年目にはいりました。2013年4月、栗林で初めて、ギフチョウをみつけ、その後、近くで幼虫を見つけ、自生地があることがわかりました。それで、栗林にカンアオイを植え、ギフチョウを呼ぶことにしたのです。とにかく、栗林にカンアオイを植えて、栽培することにしました。その時から、種まきをし、苗を育てて移植しているのです。カンアオイ畑には、1000株以上はあるでしょうか。今年は、周囲を含めて、600個以上の卵が産み付けられました。幼虫は、相当数減っていますが、今年は、カンアオイの葉が不足することはありません。
今回、カンアオイの種まきから栽培までの、私の5年間の失敗成功を書くことにしました。私と同じようにギフチョウの幼虫を育てるために、カンアオイ栽培をしてみたいかたは、参考にしてもらえばと思います。
1、種取り、
6月中旬から下旬にかけてです。実をわってみて、種子の皮が茶色になっているのが目安です。それが、白かったら、種取りの時期は、早すぎて、その種子は発芽しないと思います。ただし、あまり遅くなると、実が熟し、分解し、アリがもっていってなくなります。ギフチョウの自生地でないカンアオイなら、種をとっても心配ないと思いますが、管理されている自生地なら、種とりは無理ですね。管理されていないギフチョウ自生地なら、種をとっても、私は、かまわないと思っています。というのも、自生地で、カンアオイの新しい苗ができるのは、それこそ、ギフチョウの生存率3%より低いのではないかと思うからです。種をいただいて、健全な苗ができれば、自生地に移植してあげればいいと思います。また、種をとるときに、株元に肥料をあげとけば、株も大きくなり、次の年は、種をたくさんつくってくれます。大きい実であれば、種子は30個以上はいっていることもあります。20実もとれば、500個くらいは種子が集まります。
2、種蒔き
山野草は、取りまきが原則です。それで、カンアオイも種をとったらすぐに蒔きます。セツブンソウやカタクリなどは、遅れると、どんどん発芽率は悪くなります。過去5回種まきをしたのですが、いずれも取りまきです。それで、今年は、100個くらい残して、冷蔵庫にいれて保存し、来年の2月に蒔いてみることにします。それでも発芽率が悪くなかったら、そっちのほうが管理はすごく楽ですから。
私がつかっているのは、上と下の画像のように、16穴の育苗プラグトレイです。ポットや、育苗箱にも蒔きましたがこれが一番管理しやすい感じがします。以前、ジフィーセブンに蒔いてみたのですが、その後の発育が弱いのと、カラスがなぜかジフィーセブンには、ちょっかいをだしてきて、移植したら、全部ぬいてしまうのです。それで、もうやめにしました。用土は、種まき用などの値段の高い土をつかう必要はありません。培養土か畑の土(ただし、雑草がたくさんはえますね)でもかまいません。私が使用しているのは、以前は、鹿沼土、赤だま土、腐葉土を混ぜたものでした。これもたくさん使えばけっこう値段がするので、今は、ギフチョウ、カンアオイ自生地の砂防ダムにたまった黒土をつかっています。(かってに掘っているので、いつかおこられるかもしれません。)
1穴に10個くらいは、種をいれます。軽くふく土します。深く種まきしたら、発芽しません。上にのせておくだけだと、アリに盗まれる可能性は高くなるので、そこは、注意が必要です。10個というのは、苗のポット移植を前提にしているからです。1個とか2個なら、発芽しなかったら、さみしいからです。それと、10個なら、このプラグで、160個の種を処理することもできるからです。私は、2000以上の種を蒔くので、それでも、このプラグトレイが15以上必要になってきます。
さて、種をまいたて、軽くふく土したら、もう一工夫します。杉葉をひろってきて、それを料理用ミキサー(園芸用のみにつかいます)で、水をいれて砕きます。そのくだいたものを1層プラグにかけておきます。なんで、こんなめんどうなことをするかというと、カンアオイは、芽がでるまで、9か月もまたないといけません。その間、大乾燥させては、いけないからです。少しでも乾燥させないために、こういうことをしているのです。
3、種をまいたあとのプラグトレイ置き場
さきほど書いたように、乾燥させないためには、水やりすればいいのですが、めんどうですし、忘れたら大変です。それで、私は、このトレイを栗林隣の樫や杉の樹の下にもっていきます。そこは、直射日光がまったくあたりません。そして、もうひとつねん入りにすることがあります。今度はそこにおちている杉の葉をトレイにかけるのです。これは、乾燥を防ぐ意味と大雨や雨だれで、土が飛ばされ、種がながされるのを防ぐ意味があるのです。同じように、カタクリ、セツブンソウ、ササユリもしています。こうすることによって、次の年の3月まで、まったく放置しておけるのです。運が悪いと、イノシシにけちらされることはありますが。
4、次の年の3月
双葉がでて、発芽してきます。していなくても、上の杉葉や落ち葉などはとってやります。遅れるとひょろ長い苗になります。発芽が確認できたら、少し明るいところに移動させてやります。しかし、ここで、注意が必要です。落葉樹林などが、いいのですが、まだ3月下旬、4月上旬は、葉っぱがでていません。そのころ、年によっては、気温が25度を超えることがままあります。25度以上の直射日光を浴びると若苗は、一日でとけてなくなってしまいます。それで、とにかく、午前10時すぎてから、直射日光があたらないところに置いておくことが重要です。強い霜にもやられるます。
ということで、明るい日陰がいいのです。暗いと成長が遅くなります。そのあたりは、ジレンマです。
上の画像です。杉チップしているのがわかりますね。1つのプラグで100株くらい発芽して、苗ができています。ただし、こんなにいいのは、たくさんありません。プラグによっては、10株くらいしかないこともあります。まびきなどする必要はありません。全部苗にして、育ててあげます。
次の年の5月 ポットへの移植
5月初旬から、1回目の移植を開始していきます。上ぐらいに双葉が育ったら、十分です。7cmポットに1株、あるいは2株(あとで、もう一度移植しないといけません)。土は種まきをしたものと同じようなもので、だいたいなんでもいいのです。(ただし、鹿沼土、赤玉土単独というのはしたことがありません。)プランターの培養土というのが、雑草がはえなくていいのですが、わたしのように1000ポット以上つくるとなると、たびたびでるのですが、高価になるので、私は、種まきの土と同じく、砂防ダムにたまった黒土をつかっています。肥料は、必要です。カンアオイは、肥料は好きなようです。それで、私がつかっているのは、マグアンプです。これは、一番高いのですが、徐々に溶け込む効果があるので、安全第一に使用しています。20kgをネットで購入し、10年かけて、使用する予定です。1穴に10株あっても、カンアオイは根ばなれがいいので、心配いりません。怖いようなら、水で洗えば、10株くらいすぐに分けることができます。大きい株になってもそれは、変わりません。もともと根ふせができるくらいですから、株は強いのです。
植えたポットには、ここでも乾燥を防ぐ意味と、雨による、泥はねからの病気を防ぐ意味で、杉チップで表面を覆います。
ここで、またポットの置き場に注意が必要になります。明るい日陰がいいですね。何回もいいますが、10時以降、直射日光があたるところは、禁忌です。1カ月くらいは、強い雨にもあてないほうがいいでしょう。強い雨に打たれると、土が流されて、株も傷みます。6月下旬くらいになると、落葉樹の下などでも大丈夫になります。
次の年の9月からもう一度ポット移植開始
7cmポットから9cmポットに植えかえます。これは、7cmポットに、2株ずついれているからで、1株のものは、しなくてもかまいません。
苗が大きくなっていれば、ここで、直接、最終目的地に移植することも可能です。移植しなくても、土を掘って、ポットごと埋めておくと、乾燥に強く、水やりの心配をしなくていいことになります。
再来年の1月2月
霜に注意します。霜が強いと、やられます。
再来年の3月から
ポットから露地に最終移植します。植える時、マグアンプを下にいれてやると大きくなります。
再来年の4月
ポットにしろ、移植された露地物にしろ、ギフチョウは産卵してきます。産卵されてもかまいません。また葉っぱが全部たべられても、また葉っぱはでてきますから、安心して食べさせてください。といっても1匹の幼虫を5齢幼虫の最後まで、育てるには、この苗が、いくついるのでしょうか。10個あっても不安です。私は、1枚全部食べ終えそうになるまえに、葉っぱをちぎって、大苗のところにもっていってやります。
3年目(正確には、2年9月後)の3月
うまく、肥培がすすめば、種子を作ります。大きな本葉も3枚くらいはでて、かなりの葉っぱの量になります。
直射日光にあてないため、露地にしろ、ポットにしろ、寒冷さでカバーしています。今年は、それをしないうちに30度になったことがあり、若葉は焼けてしまったところがたくさんありました。
カンアオイの病気
大失敗し、カンアオイが病気になってしまい、蔓延しています。種をとってきて、苗にしてカンアオイの株を育てていることを上に書いたのですが、実は、最初は、早くギフチョウを呼びたくて、カンアオイの苗をやまどりしていました。ギフチョウの自生地でないところから掘ってとってきたのです。3年は、大丈夫でしたが、4年目にとってきた苗が病気を持っていたのでしょうか。わかるところで、3種類の病気になってしまい、困っています。ギフチョウを飼育されているかたのブログで、カンアオイやまどりは、怖い病気をもっているので、絶対にやめてください。と書いてあるのを読んではいたのですが。まさか自分がそうなるとは、おもってはいませんでした。病気になると、手のうちようがありません。ギフチョウの幼虫が食べる葉っぱですから、強い農薬をかけるわけにはいかないからです。あきらめています。今は、まだ病気になってダメになる株より、種から育てている株のほうが圧倒的に多いので、なんとかなっているのです。
1:白絹病
これが、一番怖い、株があっという間に枯れてしまいます。なすすべはありません。毎週数株は除去しています。罹患してから、枯れるまで、何日のことやら。これになった株を見つけると涙がでます。
2、黒星病
葉っぱに黒い斑点ができる病気です。バラの黒星病にちかかったので、これかなあと思っています。ほっておくと、これも株が枯れてくるので、早めに葉っぱを除去します。大きい葉っぱがこれにかかったら、つらいですね。けっこう多いです。幼虫は、この葉っぱにあたったら、黒い斑点のところを残して食べています。
3、委縮病
葉っぱが、委縮する病気です。委縮度に大小あって、ほとんどの株は、これにかかった感じです。ただし、ギフチョの幼虫は、この葉は食べています。上の画像は、昨年3月に発芽した苗です。病気に罹患したのは、双葉の時かもしれません。本葉がでてきたときは、すでに、委縮した葉っぱになっていました。
いじょうのように病気になっています。ポットやら、ポットをいれている育苗箱やら、土壌やら、すべて汚染されているのかもわかりません。この前から、ケミクロンgという塩素系の消毒薬で、新しく移植に使うポットや育苗箱を消毒して使うようにしています。
上の画像は、2015年に種まきし、2016年秋に露地に移したカンアオイの今の状況です。大きくなったのは、いいのですが、なりすぎて?、産卵はしてくれませんでした。
以上、今年までのまとめです。6月になれば、種取り種まきに忙しくなります。昨年まいた種は、ポットを中心にまいたためか、発芽率が悪く、700株くらいしかできていません。来年は、もう一度、しっかり、種まきして、1500株以上を目標としています。
カンアオイ栽培の私の過去記事(種まき)
2014年7月1日、2015年6月15日、2016年6月4日、2017年4月22日、2017年6月20日