永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(870)

2010年12月21日 | Weblog
2010.12/21  870

四十六帖 【総角(あげまき)の巻】 その(47)

「正身もいささかうちなびきて、思ひ知り給ふ事あるべし。いみじくをかしげに盛りと見えて、引き繕ひ給へるさまは、まして類あらじはや、とおぼゆ」
――中の君ご本人も少しはお心も折れて、打ち解けられているご様子です。ご容姿を調えていらっしゃるそのお姿は、たいそう艶やかで今がお美しい盛りと見え、並ぶ人もあるまい、と思われます――

「さばかりよき人を多く見給ふ御目にだに、けしうはあらず、容貌よりはじめて、多く近まさりしたり」
――(匂宮としても)あれほど周りに美人を見ておられる御目にさえ、中の君は、どこという欠点もなく、ご器量も姿形もすべてが、近づいてなお一層美しく見えてご満足のご様子に――

 山里の老婆たちも、醜くすぼんだ口元をほころばせて、

「かくあたらしき御有様を、なのめなる際の人の見奉り給はしかば、いかにくちをしからまし。思ふやうなる御宿世」
――このようにお美しい中の君のご様子ですのに、もしも、いい加減なご身分の方がお逢いもうされますなら、それこそどんなに残念だったでしょう。この御方とは、本当に申し分のないご縁ですこと――

 と、うなずき合いながら、それに引き換え、

「姫君の御心を、あやしくひがひがしくもてなし給ふを、もどき口ひそみきこゆ」
――大君の、薫に対して妙に肩肘を張っておられるお心持ちを、口をゆがめて悪しざまにお噂申すのでした――

「盛りすぎたるさまどもに、あざやかなる花のいろいろ、似つかはしからむをさし縫ひきつつ、ありつかず取り繕ひたる姿どもの、罪ゆるされたるもなきを」
――(老女たちの)盛りを過ぎた身に、派手な花の様々の色の似つかわしくないのを、縫い付けた衣裳を着込んでいて、この晴れがましい時にこそふさわしいとばかり装っている様子はまことに見ぐるしい――

 と、大君は見渡されて思いながら……。

では12/23に。