落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

貧困ってなんだ

2008年12月14日 | lecture
昨日、ピープルズプラン研究所で行われた一度に読み解くセックスワークと人身取引という講義の3回め(第1回第2回)に行ってきた。
今回のお題は「人身取引の舞台裏 貧困の女性化・労働力の女性化・移住の女性化」。

・国際的な人身取引ビジネスの背景には、90年代以降急速に進んだ貧困層の拡大がある。
東西冷戦が終結し、グローバリゼーションという経済の一極集中現象が移動労働を盛んにし、同時にそれを地下経済化する要因となった。

・貧困層のジェンダーバランスはここ数年偏りが進行しつづけ、経済政策の恩恵を受けない女性が急激に増えている。
たとえばタイは1997年のアジア金融危機の際IMF(国際金融基金)からの援助を受けたが、このときIMF側から「金融の自由化」と同時に「公的支出の抑制」という条件が出された。結果、女性の教育や経済保護が犠牲とされてしまった。

・こうした経済学的側面からとらえたジェンダー論は90年代まで語られてこず、最近になって研究が始まったばかりの分野である。

・「貧困」の基準でよくいわれるのは「1日1$以下で生活している状態」。
これに対し絶対的貧困とは「安全な水と医療の提供を受けられない状態」。
相対的貧困とは「その地域内での下位10%の層」を差す。

・日本の女性の政治経済への参加率は非常に低水準で、たとえば賃労働に就いている女性は50%未満。
タイは70%。女性が外へ出てお金を稼ぐことに対する抵抗感がないという国柄にもよる。

・国際的にどの地域でも女性が就く仕事は限定されるため、女性は非正規ルートで国外労働=出稼ぎに出ることになり、法の保護も受けられず、人身取引の被害にも遭いやすい。

・日本に多い外国人女性労働者は80年代フィリピン人→90年代タイ人→90年代後半コロンビア人→2000年代中国人→現在ロシア人と、入国者数の多い国籍が年代ごとに移っていく傾向がある。
これは人身取引を行う地下組織が「仕入れ先」である相手国の取締りが厳しくなるごとに仕入れ国を換えるからである。

今回は人身取引そのものというより、その背景にある経済問題とジェンダーについての話。
比較的地味なネタだったせいか、出席者がすごく少なくて淋しかった。
講師の青山女史は近々パートナーのイギリス人女性と現地で市民婚をするそうで、そのために次回と次々回の日程が変更になった。おめでとうございます。


関帝廟。