ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

図書館のベストセラー

2013-02-25 | Weblog
 双葉文庫『夜行観覧車』のことを前に書きました。テレビドラマが好評で、妻から図書館で予約してほしいと頼まれました。買っても680円なので「予約者が多いからいつ回って来るかわからへん。本屋で買っとくわ」とわたしが言うと、「ずっと持つほどの本でもないし、急がないので図書館でいい」
 この時点で京都市立図書館の貸し出し冊数と予約者数は120冊! 市内に20館ほど図書館があるのだが、ほとんどの館が複数冊数を持っておられる。在庫総数は約40冊。76番目の予約者として申し込んだのだがその後、友人から借りたとのことで、図書館予約は結局キャンセルになりました。

 本屋の売り上げが毎年低下し苦境にある原因のひとつは、公共図書館の充実したサービスのお陰です。生活にゆとりのない現代日本、たくさんのひとが本を買わずに図書館で借りる。蔵書しない、「無所有」というトレンドは一段と強くなっているようです。わが家では本に限らず、万端の無所有はすでに習慣化したライフスタイルかもしれません。
 ある本屋さんと夜行観覧車の話しをしましたら、「わずか680円の本ですよ。買ってくださいよ」。彼は嘆息しながらわたしを睨みつけた。申し訳なく、恥ずかしい思いをした。
 本屋と図書館。両者は共存関係にありますが、ただ同じ本を1館で何冊も持つ複本購入はいかがなものでしょうか? ほとんどの図書館が経費削減のため、書籍購入予算が減っています。ベストセラーはだいたいが一過性のブームです。1館1冊でいいのではないでしょうか。ほかに購入すべき図書は数多いはずです。

 ところで湊かなえ著『夜行観覧車』はその後、図書館での評判はどうなっているのか調べてみました。今日現在の予約数は294冊! 市内館蔵書は延べ36冊。いま借りている読者と、首を長くして待っている方を合わせると330人にのぼります。京都市の人口は150万人ほど。全国では人口単純計算で80倍になります。現時点での『夜行観覧車』の図書館利用は全国で推定2万人以上ということになります。すでに借りて読んでしまった読者を合わせると、おおよそ3万人。本屋さんが嘆くはずです。さらに古本流通も盛んですから、新本屋が圧迫されているのは明らかです。ちなみにこの文庫本の発売は昨年末でした。わずか2ヵ月間でこの惨状です。

 図書館でほかの湊かなえ本をみてみました。数字は予約者数です。
『白ゆき姫殺人事件』528、『母性』528、『望郷』297、『サファイア』280、『往復書簡』149。

 湊さん以外の本屋ベストセラーの図書館予約者数も記します。
『聞く力』550、『置かれた場所で咲きなさい』373、『永遠の0』303、『スタンフォードの自分を変える教室』263……。切りがないのでもう調べません。

 いま発売中の「週刊文春」2月28日号で、CCC・TUTAYA社長の増田宗昭さんがこう語っておられる。「不景気のなか高齢化が進んでいるから、今後、図書館を利用する人が増えてくる。生活における図書館の重要性が高まる…」
 とっくに利用者は激増し、また高齢者のみならず老若男女を問わず、莫大な本が無料で貸し出されているのです。館内利用も多い。日本の読書文化は決して凋落していない? 家計が苦しく、買わないだけなのでしょうか?
<2013年2月25日>

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