ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

ナイジェリア・エボラ熱との戦い

2014-11-16 | Weblog
 ナイジェリアではエボラ出血熱との戦いはどのようになされたのか? 共同通信が11月14日に配信しました。

 見出し「エボラ熱終息のナイジェリア 『疑い』で隔離 奉功 公共の利益優先 接触の医師犠牲」 

 世界保健機関(WHO)の12日の発表で死者が5千人を超えたエボラ出血熱には有効性が確認された治療薬やワクチンがなく、感染者の早期発見と隔離が抑え込みの成否を分ける。7月に感染が飛び火したナイジェリアが10月に流行終息にこぎ着けた背景には、「公共の利益」を優先して感染確認前から患者を隔離し最大都市ラゴスでの大流行を未然に防いだ私立病院の判断があった。
 7月20日夜。ラゴスの繁華街にあるファースト・コンサルタンツ病院に、リベリア財務省に勤めるパトリック・ソイヤー氏(40)が空港から搬送されてきた。症状は発熱と頭痛。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の会議出席のため入国した直後だった。
 ベンジャミン・オヒエリ院長(70)によると、約40床の小さな病院が選ばれたのはECOWASの指定病院だったことと、ほかの大半の病院が医療関係者のストで閉鎖状態だったからだ。
 ソイヤー氏は「マラリアが再発した」と説明。だが薬を投与し翌日になっても症状が改善しない。眼球に浮かんだ赤い斑点と血尿に気付いたステラ・アダデボ医師(57)が「エボラ熱かもしれない」と疑い始めたという。
 ソイヤー氏は妹がエボラ熱で死亡したことを隠していた。アダデボ医師は感染の恐れがある人が人口約1千万人のラゴスを歩くのは危険と考え、院内にとどまるよう伝えた。
 「重要な会議があるんだ」。ソイヤー氏は隔離措置に怒り狂って点滴の管を抜き、病室内に血が飛び散った。院長は「あれで何人か感染しただろう」と苦々しげに振り返った。
 院長によると、リベリア大使館関係者は病院に対し、事実上の監禁であり「外交問題になる」と警告、法的措置を取る構えも見せた。悩んだアダデボ医師らは弁護士と相談したが、公共の利益のために隔離措置を続けるべきだと結論付けた。
 数日後に感染が確認されソイヤー氏は死亡。ナイジェリア初のエボラ熱確認例となり、アダデボ医師の判断で接触者が最小限に抑えられたことが証明された。WHOは10月20日に同国での感染終息を宣言。感染者は20人、死者8人だった。
 だが代償は大きかった。医師ら計12人が感染、うちアダデボ医師や妊娠中の看護師を含む6人が死亡した。病院は約2カ月間閉鎖を強いられ、再開後に戻った患者は以前の約1割だ。院長は「機材をほとんど入れ替え、消毒しても、エボラ熱患者がいたという汚名は消えない」と肩を落とす。
 来年引退し、21年間共に働いたアダデボ医師を後継者にするつもりだったというオヒエリ院長。「経済的損失のことをよく聞かれるが、本当の損失はアダデボ医師のような貴重な人材だ。今でも彼女が毎朝、部屋に入ってくる気がしてしまう」と寂しそうに笑った。(ラゴス共同=稲葉俊之)
<2014年11月16日>

コメント