映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「西の魔女が死んだ」 梨木香歩

2008年04月25日 | 本(その他)

「西の魔女が死んだ」 梨木香歩 新潮文庫

ここでの「魔女」というのは、おとぎ話に出てくるいわゆる魔法使いのおばあさんとはちょっと違う。
本から引用してみると、
「体を癒す草木に対する知識、
荒々しい自然と共存する知恵、
予想される困難をかわしたり耐え抜く力、
・・・とりわけそういう知識に詳しい人たち。
・・・そういうある特殊な人たちの持っているものは、
親から子へ、子から孫へと自然に伝えられるようになった・・・。」

西の魔女というのはこのストーリーの主人公まいのおばあちゃんで、英国人。
まいは、このおばあちゃんから魔女の血を受け継いでいます。
魔女といってもそう特別なものではない。たいていの人が失ってしまったものをまだ持ち続けている。
しかし、それを磨くには修行が必要。
それは自立した大人になるためのエクササイズでもあるのですね。
やさしくそして、しなやかで強いそのおばあちゃんの生き方は、
古風かも知れないけれど、憧れを感じます。
それをしっかり受け止めて学ぼうとするまいにも好感を持ちます。

梨木香歩の描く女性たちはどうしてこんなにも生きることに真摯なのでしょう。
きちんと生きなくてはね・・・、とちょっぴりそんな気にさせられる。
そこが、彼女の作品の魅力なんです。

私はこのおばあちゃんの描写で、ターシャ・チューダーを連想してしまいました。
草木を愛し、広い庭を花いっぱいにし、未だに昔ながらの生活を営んでいる、おばあさん。
もうかなりのご高齢のはずですが、とてもお元気です。
ガーデニング好きの方なら憧れの人。
まいのおばあちゃんの生活の様子が、良く似ているのですね。
・・・そうか、つまり、ターシャ・チューダーは、魔女だったのです。
そう考えた方が納得が行く。
コーギー犬好きの魔女ですね。

死とは、その魂が、肉体を離れてより自由になること・・・、
だから、おばあちゃんがなくなっても、そんなに悲しむことはない・・・、
そう訴えかけながらも、やはり寂しく悲しい・・・余韻が残ります。

ここでうれしいのは、まいのその後が、次の短篇で語られていること。
なかなかいい感じに成長していっているようで、ほっとして本を閉じることができます。

満足度★★★★



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すごい読書家ですね~! (RIN)
2013-01-29 13:12:01
小生ミステリーは読まないのでそちらのジャンルみてませんが、、それにしてもすごい!

梨木さんのなかではこれが一番好きです。映画は見てません。(自分のイメージ壊したくなかった、、、)

万城目学、、「旅の夜風」の作曲者万城目 正と同じ姓だなと言う感じでしたが最近の朝日かなにかでチョットふれてましたので「かのこちゃんとマドレーヌ婦人」読みました。最後がイイ!じつは小生15~6年前、柴犬飼ってまして17才の頃認知症になりました。何処からともなく雄のパンダ猫がやってきたうちの犬によりそってくれ散歩も途中までつきあってくれました、が、犬が死ぬと何処かに去ってしまった経験があります。それもあってかのこ・・・に出会えたのはラッキーだと思ってます。
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訂正 (RIN)
2013-01-29 13:15:38
マドレーヌ婦人→夫人
パンダ猫がやってきた→やってきて

蛇足 旅の夜風 ♪花も嵐も踏み越えて~、、
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旅の夜風 (たんぽぽ)
2013-01-29 19:53:18
>RINさま
蛇足を入れておいていただいて、ありがとうございます。
題名だけではわかりませんでした。
色々勉強になります。
犬も認知症になるのですか・・・
猫さんの話、いいですね。
認知症の犬には「犬」のオーラが発してなくてよかったのかも。
うちにいたコーギーは、子犬の時に猫にひっかかれて、アゴの下にうっすら傷が残っていましたが・・・。

ちなみにこの記事に書かれているターシャ・チューダーさんは、2~3年前に亡くなりました。でも今でも私の憧れの方です。
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