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「カッコウの卵は誰のもの」 東野圭吾

2013年03月24日 | 本(ミステリ)
遺伝子が人生を決めるのか

カッコウの卵は誰のもの (光文社文庫)
東野 圭吾
光文社


                * * * * * * * *

往年のトップスキーヤー緋田宏昌は、妻の死を機に驚くべきことを知る。
一人娘の風美は彼の実の娘ではなかったのだ。
苦悩しつつも愛情を注いだ娘は、彼をも凌ぐスキーヤーに成長した。
そんな二人の前に才能と遺伝子の関係を研究する科学者が現れる。
彼への協力を拒みつつ、娘の出生の秘密を探ろうとする緋田。
そんな中、風美の大会出場を妨害する脅迫者が現れる―。


               * * * * * * * *

スポーツの才能と遺伝子。
科学的に証明できるかどうかはわかりませんが、関係があるのは確かなことに思えます。
本作では、往年のトップスキーヤーである緋田と、
今注目の若手スキーヤーである娘風美の遺伝子を比較してみたいと、
研究者柚木が申し出るのですが、
娘との血のつながりがないことを知られたくないために、緋田は拒否。
そんなところへ、風美の実の父親とおもわれる老人が現れます。
果たして彼の意図は?


一方、スポーツに優位な遺伝子を持つとされる少年・伸吾が、
ほとんど強制的にクロスカントリーをさせられています。
彼は本当は音楽がやりたい。
風美と伸吾は同じスポーツクラブに所属していて、ちょっと顔を合わせたことがあるという程度なのですが、
最後に意外なつながりが見え、一挙に事件解決に向かうところが、さすが東野圭吾作品。
登場人物皆、いい人すぎるきらいはありますが、だからこその感動作でもあります。
なかでも緋田氏のひたすら娘を思う気持ちと、
自分はどうあっても、正しく人の道を歩みたいという正義感が、
なかなか熱いのです。


肉体を形作るのはもちろん親から受け継いだ遺伝子。
けれどもあくまでもそれは心の入れ物。
人の本質は心なのではないかと・・・。
だからといって、それは全く別物というわけでもないのだろうな。
肉体と魂は双方が複雑に影響を及ぼし合って成り立つのでしょう。
風美を慈しみ育てた父が緋田でなければ、
こんなにもスキーに愛着を示さなかたかもしれないし、
スポーツの才能を持て余す伸吾の別の遺伝子には音楽の才能も潜んでいたりして・・・。
それは科学で解明されてしまってはつまらないですよね。
人は誰でもいろんな可能性を秘めている、と思いたいです。



「カッコウの卵は誰のもの」東野圭吾 光文社文庫
満足度★★★☆☆


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