映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

エクスマキナ

2017年01月10日 | 映画(あ行)
女の物語?



* * * * * * * * * *

世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社のプログラマー、ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、
社長ネイサンの所有する山間の別荘に宿泊するチャンスを得ました。
ヘリコプターでなければ行けないようなその人里離れた山荘を訪れてみると、
そこにいたのは女性型のアンドロイド、エヴァ(アリシア・ビカンダー)。
そこでは極秘でネイサン(オスカー・アイザック)が人工知能(AI)開発の研究をしていたのです。
ケイレブはそこでエヴァのAIの完成度について、判定に協力することになります。
ケイレブは硬質で不思議な雰囲気を放つエヴァに次第に惹かれていきますが・・・。



ロボットに感情、特に愛情はあるか・・・という大きな命題を扱っています。
けれども私が思ったのは、これは「ロボットの物語」というよりもむしろ、
「女の物語」なのではないかと・・・。
だってAIを搭載するのはなにも女性型ロボットである必要はないですよね。
ここではネイサンが単に女好きだったということかもしれないけれど・・・。



エヴァは、この山荘で何体目かのロボットとして作られました。
そして外の世界へ出ることを禁じられ、殆ど監禁状態であったわけです。
彼女を作ったのはネイサン、つまり父親ということになりますが、
彼女にとっては絶対的な支配者。
しかし、彼女は外の世界を見たいし、知りたい。
そこへやってきたのがケイレブで、
もしかしたら彼が自分を外の世界へ連れ出してくれるかもしれない、と考える。
だから、彼女がケイレブに示したのは愛情なのか、それとも単に愛情のフリなのか、
という問題になります。
AIが愛情を持つのだろうか、
それとも、周到な計算の末の「演技」なのか。

けれども考えてみてください。
エヴァが本当の人間であろうと、AIであろうと、
ケイレブはその真実を知ることはやはりできないのです。
人は結局自分だけのことしかわからない。
(ときには自分自身のことすらもわからないけれど。)
だからこんな実験をすること自体が、私には無駄のようにも思えました。
それよりも、自由を求め男の庇護を離れて、自立していこうとする“女”の物語、
としたほうが私にはしっくり来るのです。
まあ、制作者の意図とは離れるでしょうけれど・・・。



全体にミステリアスで硬質の雰囲気は悪くないです。
ところどころスケルトンで機械じかけの中が見えるエヴァの造形がナイスですね。


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アリシア・ヴィキャンデル,ドーナル・グリーソン,オスカー・アイザック,ソノヤ・ミズノ
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


「エクスマキナ」
2015年/イギリス/108分
監督:アレックス・ガーランド
出演:ドーナル・グリーソン、アリシア・ビカンダー、オスカー・アイザック、ソノヤ・ミズノ
SF度★★★★☆
満足度★★★☆☆