映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ノア 約束の舟

2014年06月23日 | 映画(な行)
感動の持って行き所がない・・・



* * * * * * * * * *


「ノアの箱舟」については、キリスト教をよく知らない方でもおよそのところはご存知でしょう。
本作は旧約聖書に語られる、その、ノアの物語。
神の宣託で世界が大洪水に呑まれ、滅びることを知ったノア。
彼は強い使命感に突き動かされ、
家族とともに動物たちを載せるための巨大な箱舟を作り始めます。



神によって作られたヒトですが、この頃には“悪”がはびこり、
世の中が乱れに乱れていた。
・・・なにしろ、人類史始まってまもなく兄弟を殺してしまったあの「カイン」の末裔ですからね・・・。
それを忌々しく思った神は、ヒトをリセットしてしまおうと考えた。
なんとも身勝手ですが、そんなことを言うと信仰深い方々にお咎めを受けそう。
そもそも「神」は理不尽で気まぐれで、残酷なものです。
つまりはキリスト教であれなんであれ「神」の原点は、
人の手の及ばない「自然」の営みであるからなのかもしれません。
「ノアの箱舟」神話も、遠い昔の大洪水の記憶なのだと思います。
さて本作、そんな分析をするための作品ではありません!

 

本作の最も重要なシーンは、ラスト近く、
ノアが赤ん坊を殺そうとするシーン。
ノアは頑なに「人類を滅ぼす」ことが神の意志だと信じています。
だから自分たちの家族もこれ以上増えるべきでないと思っている。
自分たちが老いて死に絶え、やがてこの世から人の存在が消え去ることが神の望み。
それなのに、あろうことか子供が生まれてしまった。
このままこの子を生かすべきではない・・・と。


しかし、それは確かに自分の孫。
信仰と自身の感情の間で、彼は大いに逡巡する・・・。


いや、言いたいことはわかるのですが、残念ながらこのシーン、
私にとっては全く胸に迫りませんでした。
やはり、無宗教のなせる技なのでしょうか。
このノアを“狂信者”としか思えず、しらけるばかり・・・。
いや、私だけではありませんよ。
赤ん坊を殺そうとするノアに家族みなは反発。
特に、次男のハムは長男セムに嫉妬し、父への裏切り行為すらしてしまう。
妻と娘は赤ん坊を連れて、箱舟を脱出しようとさえする。
そんなわけで、ノアとその家族は
強い愛と信頼で結ばれているというわけではないのです・・・。
いじけたノアはぶどう酒で呑んだくれる始末・・・。



また、予告編では全く触れられていなかった「トランスフォーマー」?みたいな岩石巨人たちが登場。
はじめ、あれ?これはファンタジーだったのかと思ったのですが・・・。
家族から疎まれるダメ父親像とか、変なファンタジー色とか・・・
極めて現代的ではありますが、
だからなのか焦点ボケ。
どうにも「感動」の持っていきようがない残念な作品でした。


ただ、セムとハムの関係性にカインとアベルが重ね合うところはよかった。
そこに登場する、兄の婚約者イラ。
これはむしろ「エデンの東」の構図に似ていますね。
そのためか、兄のほうがただの凡庸な男に思え、
弟のほうが魅力的です。

「ノア 約束の舟」
2014年/アメリカ/138分
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス ローガン・ラーマン

スペクタクル度★★★☆☆
満足度★★☆☆☆