自閉症のKくん

2006年01月15日 | 健康・病気
Kくんは、3年前阪神が好きだった。
巨人や西武のファンが多い作業所の中で、
おれと一緒に阪神を応援し、そして阪神は優勝した。
なのに君は去年、ソフトバンクファンになってしまった。

君の作業所での主な仕事は、
袋詰めされた野菜を箱に入れることだよね。
それはKくんが数に正確だからだ。
絶対間違わないもんな。

おれや他の通所者がパレットに積んだダンボール箱を、
積み直すのはなんなんだい。
君のこだわりか。
その気持ちはよく分かる。
おれにもそういう性癖はある。

君は一日中独り言を喋っているね。
おれが「うるさい。黙って作業をしましょう」というと、
「はい、分かりました」といった30秒後に、また喋り出す。
困ったものだとおれは思っているが、
それはKくんの“才能”だからおれは耐える。
ただ、静かに作業をしている他の通所者のことも考えてくれよ。

君はきれい好きだ。
食べ終わった弁当箱をすぐ台所で洗う。
ついでに流しのまわりも丁寧に拭く。
でもちょっと洗剤を使いすぎだと思わないかい。
あれは薄めて使うもんだ。
Kくんの使い方だと1週間で1瓶なくなってしまう。
作業所は貧乏なんだよ。

君は毎日、おれの名前を連呼していろいろ質問してくる。
それは嬉しいが、他の通所者の相手もしなければならないんだ。
Kくんとばかり話しているわけにはいかない。

木曜日の夕方、作業終了の頃、君は何で興奮したか大声で叫んだ。
「うるさい。静かにしろ!」
君に負けないほどの大きな声でおれは注意した。
ダウン症のAくんが、おれの声で耳が痛くなった、といっていた。

君は、金曜日作業所に来なかった。
めったに休まないのに。
Kくん、明日、来てくれるよね。

コメント
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