君を守りたい―いじめゼロを実現した公立中学校の秘密 価格:¥ 1,050(税込) 発売日:2006-09 |
弁護士として「現場」に近いところにいる著者なのだろうから、やはり、特有のとんがった危機感にドライヴされていると感じる。
こういうのは、論点が明確で、すっぱりしていているがゆえに、魅力を感じる人もいるだろうけれど、適用した時の副作用を考えなければならない典型的な議論でもあると思う。
ちなみに、表紙にもある「いじめゼロを実現した公立中学校の秘密」は、実は著者が掲げるゼロ・トレランスの方針でいじめをなくしたのではなく、誤解を招く売り方だ。
もちろん、生徒たちによる自主的なパトロールによっていじめを感知する仕組みなど、「パトロール」という点で、著者が導入したいらしいスクールポリスのそれと、行動面では重なるのだけれど、とはいえ、生徒は警察ではない。
そして、なによりも、いじめが発見された場合にも、ゼロ・トレランスで例外なしに処分ではなく、著者が批判する人間教育的な配慮をもって対処される。おまけに、今ではパトロールもやめてしまって、生徒にいじめをゆるさない意識付けをすることでよい結果を得ているという。
著者が主張し、持っていきたいとする方向と、まったく違う方向の事例を、あたかも自説を支持するものとして提示しているのだけれど、この部分はどうなんだろう。正直、論理構成がよく分からなかった。