短編集。「ナイン」「太郎と花子」「新婦側控室」「隣り同士」「祭まで」「女の部屋」「箱」「傷」「記念写真」「高見の見物」「春休み」「新宿まで」「会話」「会食」「足袋」「握手」の16編。
井上ひさしの脚本、エッセイは読んだことは何度もあり、彼が書いた芝居もたくさん見たことがあるが、小説は初めて。この短編集を読む限り、よくできている。私小説のジャンルに入るだろうか。自身の経験したこと、見たことがテーマ。
東京のいろいろな地域が舞台になっているので、かなり前の風景が描かれていて、それは今とは異なるので興味深い。市井の人々の生活、思いも書き込まれている。著者自身が、かなり特異な体験のなかで育ち、仕事をしてきたこともわかるので、この視点からの評価も可能だろう。
最後の「握手」は中学校の教科書にも載ったことがあり、それを感動して読んだという記事を見たが、なるほど、心を震わせる人間の交流がそこにある。
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