【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

「トップ・ガールズ」(原作:キャリル・チャーチル、演出:鈴木裕美) 渋谷BUNKAMURA シアター・コクーン

2011-04-06 00:05:14 | 演劇/バレエ/ミュージカル

                                     

 いきなりパーティーの場面で、風変りな女性たちがぺちゃくちゃ会話をしています。ホスト役は、ロンドンのキャリア・ウーマン、マーリーン(寺島しのぶ)です。話をよくきいているとその面々は、ヴィクトリア朝時代に世界を旅した女性探検家・ イザべラ・バード (麻実れい)、日本の帝の寵愛を受け日記文学に名を残す 二条 (小泉今日子)、ブリューゲルの絵画「 悪女フリート 」に登場する女傑(渡辺えり)、女性であることを隠し法王になった ヨハンナ (神野三鈴)、中世の「カンタベリー物語」に登場する貞淑な妻 グリゼルダ (鈴木杏)だということがわかります。

 マーリーンは、男性たちとの熾烈な競争の末、遂に重要ポストを勝ち取った女性です。ウェイトレス(池谷のぶえ)が案内する席に次々と集まって来たのは、上記の歴史や芸術作品に名を残す古今東西のパワフルなヒロインたちでした。 

 彼女たちは、パーティの目的にお構いなく、自分の人生に起こった出来事や出会った男たちとのあれこれ、自分が女性とし成功した苦難の道を、相手がそれを聞いていようがいまいが話し出します。
 
 彼女たちから飛び出す荒唐無稽な物語は、すべてが異なる時代の出来事ですが、現代の私たち自身の問題として、生き方や在り方を問いかけているのです。ここまでが、いわばイントロダクションです。

 進んで舞台はマーリーンの今の姿を描く現実社会へと移ります。”ガールズ・トーク”のヒロインたちは、マーリーンの現実での人間関係を構成する一員として登場してきます。彼女たちは複数の役柄を演じ、このなかでマーリーンが成功の代償に何を犠牲にしてきたかが次第に明らかにされていきます。

 原作は英国の女性劇作家キャリル・チャーチル。彼女がこの作品を執筆したのは、英国初の女性首相マーガレット・サッチャーが政権を獲得した翌年、1980年のことでした。初演は、1982年8月、ロイヤル・コート劇場です。

 この作品は、 女性であることの不自由さや負の歴史を最大の武器に、生きることを享受する知恵に満ちた愛すべき女性への敬意が描かれています。

 演劇の後半部分、キャリア・ウーマンとして成功し、ビジネスの最前線で働くマーリーン寺島しのぶと田舎暮らしのジョイス(麻実れいさん)との激しいやりとりが圧巻です(二人は姉妹です)。それにしても寺島しのぶさんは、想像以上に細身でした。また、渡辺えりさんは、いまや怪優に変身しつつあります。

 「場」が変わるときに、普通の芝居では、幕がおりたり、舞台が真っ暗になり、その間に装置が帰られるのですが、この演劇では舞台の照明は消えますが、うす暗く、装置を移動したり、組み替えたりするのが客席からみえます。変わった趣向でした。

<配役>
・マーリーン 寺島 しのぶ
・二条/ウィン 小泉 今日子
・フリート/アンジー 渡辺 えり
・忍耐強きグリゼルダ/ネル/ジニーン  鈴木 杏
・法王ヨハンナ/ルイーズ 神野 三鈴
・ウェイトレス/キット/ショーナ 池谷 のぶえ
イザベラ・バード/ジョイス/キッド夫人 麻実 れい