フランコ・ゼフィレッリ監督「ブラザー・サン,シスター・ムーン(Brother Sun,Sister Moon)」(伊、1972年、121分)
舞台は12世紀のイタリア、アッシジです。ひばりにも説教をといた若き日の聖フランチェスコの話です。
裕福な商人の息子フランチェスコ(グレアム・フォークナー)、父親以上の商才があるとの評判。十字軍に参加するアッシジの青年達とともに、彼は手柄をたて、戦利品をたくさん持ちかえってくると意気揚揚で出かけます。
ところが戦場で熱病に冒されたフランチェスコは、ほうほうのていで家に戻ってきました。ベッドで生死の境をさまよい、十字架の幻影を見るフランチェスコ。ある朝ふと目を覚ますと、自分のなかの中の何かが変わっていることに気づきます。
父親は、いらいらしていました。息子は命を取り止めたのですが、以前の聡明さは消え失せ、一日中、花を眺め、小鳥と話しているのです。あまつさえ、ある日のこと、彼は家の窓から父親の財産を片っ端から投げ捨ててしまいます。「財産は心の重荷だ。自由になろう!」
怒った父親は、息子を裁判にかけます。好奇心で笑う人々。裁判で彼は言います、「あなたからいただいたものは名も財産も全てお返しします。」
街中の人々が見守る中。靴を脱ぎ、上着を脱ぎ、・・・。「小鳥は財産を蓄えるでしょうか?それでも父なる神は養ってくださるではありませんか。神の栄光があれば何一つ要らないのです。私は上の御心に近づきたいのです」。裸のまま、日の光をまぶしそうに浴び、街を出ていくフランチェスコ。その様を見て、誰一人笑うものはもういませんでした。
彼は打ち捨てられ廃墟になった教会を、貧しい人々と共に再建しはじめます。ひとり、またひとり彼の群れに加わる若者が現れました。それを心よく思わないのはアッシジ協会。フランチェスコは同志とともにローマに赴き、教皇に自分たちの信仰を証します。
フランチェスコに心を寄せる娘クララ(ジュディ・バウカー)。彼女も男女の愛情ではない永遠の愛で彼の側にいることを決心します。
再建された教会ではじめてのミサに多くの人々が集まりました。皆で歌う賛美歌が天に上っていきます。
イタリアの美しい風景。美しい若者達。素晴らしい音楽! 心が洗われる作品です。