ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

リュウキュウイノシシ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 野生の味

 猪鍋のことを単にシシ鍋と言うが、また、牡丹鍋とも言う。牡丹は「猪の肉の隠語」と広辞苑にあった。肉の色を牡丹に喩えたのかもしれない。隠語ということは、おおっぴらに「イノシシの肉を食う」とは言えなかったということ。イノシシの肉はまた、ヤマクジラという名でも呼ばれる。仏教の教えなのか、倭国では昔、獣肉を食うことが忌み嫌われた。ウマの肉を桜と呼ぶことなどもその頃の名残なのであろう。
 ※『動物の名前の由来』によると、�肉を牡丹と呼ぶのは花札から来ている。�のある札には牡丹がある。同様に、鹿肉のことは紅葉といい、鹿の札には紅葉がある。

  さて、ウチナーンチュは違う。ウチナーンチュは(たぶん)有史以前から獣肉を食い、仏教が伝来した後でも、「何で美味いものを食ってはいけないの。そんな教え、間違っているさー」と思ったのかどうか知らないが、ずっと獣肉を食い続けている。鳥や豚や山羊や牛を食い、犬や猫なども食った。昔は、肉は貴重品で、庶民は盆正月などにしか食えなかったらしいが、戦後少し経ってからは庶民も日常的に口にしている。

 犬や猫などは、その辺にいくらでもいるが、食用としては一般的ではない。イノシシはその量が少なくて一般的では無い。でも、イノシシは美味である。ふんだんにある犬や猫などを食おうなどとは思わないが、イノシシは食べたいと思う。
  シシ鍋を、私は2度食べている。1度目は、もう20年くらい前になるか、八重山出身の友人Yの家でご馳走になった。2度目は15年ほど前、九州を旅行している時に、大分の日田だったか、湯布院だったかの温泉宿で食べた。それ以来、イノシシの肉には出会っていない。出会いたいと願っている。来年はイノシシ年でもあることだし。ぜひ。
 八重山出身のYの家でご馳走になったと書いたが、西表島にはイノシシの生息数が多いらしく、で、イノシシが名物となっている。ただし、猟が解禁される冬場だけのもの。沖縄島でもヤンバル(山原、沖縄島北部の通称)、国頭村辺りの山には多くいるとのこと。数年前、国頭村の与那覇岳に登った際、途中の道で、イノシシが掘った後らしき現場をいくつも目撃している。イノシシは鼻で土を掘り、地中の虫や小動物、あるいは植物の根などを食うらしいのである。そういった場所は西表島でも多く発見した。
 来年はきっと、寒い時期にヤンバルへドライブし、イノシシを食ってやろうと思う。

 
 リュウキュウイノシシ(琉球猪):ウシ目の野生動物
 イノシシ科の哺乳類 ニホンイノシシの亜種で南西諸島の固有種 方言名:ヤマシシ
 イノシシはウシ目(偶蹄類)イノシシ科の哺乳類の総称であるとのことで、イノシシにもいろんな種があるみたいである。ここで言うイノシシはその一種で、子供の頃瓜坊(うりぼう)と呼ばれる、テレビや雑誌でよく見るイノシシのこと。
 イノシシという名の由来を調べる時間が無かった。なので不明。瓜坊(うりぼう)は、子供の頃背中に縦線が走っていて、それが瓜に似ていることから。方言名のヤマシシは山のシシということ。シシは獅子では無く肉のことを言う。これは和語でも同じ。広辞苑にはシシ(肉)の項で「にく。特に、食用の獣肉。」とあり、また、シシ(獣・猪・鹿)という項もあり、これには「(肉の意より転じて) けもの。野獣。特に、食肉のために捕獲する猪、鹿をいう。」とあった。日本庭園で見かけるシシオドシ(竹筒に水を流して、その竹がシーソーすることでコンと音を立てるもの)は、鹿脅しとも猪脅しとも書く。
 雄の下の犬歯が発達して牙となっているのが特徴。繁殖力旺盛で、寿命は25年ほど。交雑できるほど遺伝子は豚と近く、イノシシを家畜化したものがブタだと言われるが、あるいはまた、ブタが野生化したものがイノシシという説もある。ブタもそうらしいが、嗅覚が発達していて、匂いを嗅ぎながら鼻先で土の中を掘り、小動物などを捕食する。
 ニホンイノシシの亜種とのことで、それよりずっと小型となっている。
 頭胴長80~120センチ、体重35~55キログラム。
 
 ウリ坊
 
 木の根、草の根を食べるというイノシシの穿った跡。穿った主の姿は見えず。
 
 これは2007年の私の年賀状の一部。

 ニホンイノシシ(日本猪):ウシ目の野生動物
 イノシシ科の哺乳類 本州(およそ関東以南)、四国、九州に生息
 頭胴長110~160センチ、体重50~150キログラム
 雑食性、鼻で地面を掘り返し植物の根や茎、昆虫やミミズなどを食べ、草の葉や木の実なども食べるが、特に冬季は畑の作物も荒らすとのことで害獣になっている。畑に出没する冬場、猟が解禁(原則として11月15日から翌年2月15日まで)される。
 学名、ニホンイノシシ Sus scrofa leucomystax
    リュウキュウイノシシ Sus scrofa riukiuanus Kuroda

 訂正加筆:2012.6.17

 記:ガジ丸 2006.12.16 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『動物の名前の由来』中村浩著、東京書籍株式会社発行