ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

リュウキュウイヌ

2011年04月21日 | 沖縄の動物:哺乳類

 あっ、アカインだ!

 小学生の頃、私には遊び仲間のグループがいくつかあった。隣近所に住む2、3つ歳の差がある数人のグループ。家は離れていたが、漫画が大好きで、よく一緒に漫画を描いていた同級生のグループ。通り一つ隔てたところに住む同級生Yを中心とした優等生のグループ。少し離れたところに住む勉強もスポーツもできて、ケンカも強かったクラスのリーダーSを中心としたグループなどがあり、そしてもう一つ、Sの近くに家のあった同級生Nを中心としたグループがあった。Nはいわゆる劣等生で、大人たちから見れば悪ガキの代表。ちょっと危険な遊びは、たいてい彼がリーダーであった。
 他人の家の屋根から屋根へ飛び移り、走り回って忍者のような真似をしたり、建築現場から木材をかっぱらって、それで筏を作って大きな池で乗り回したり、近くの外人住宅地に向かってわけもなく石を投げたり、ゴムカン(ゴムで石を飛ばすパチンコのことを我々はこう呼んでいた)でスズメなどを撃ったりしたことなどが記憶に残っている。

  Nのことで最も印象に残っているのは、じつは、そういった遊びとは別にある。セミを食べるという話は父母からも聞いていたので、彼がセミを食べたという話を聞いてもそう驚くことでは無かったが、ある日、一緒に遊んでいると、「あっ、アカインだ!」と急に叫んで、彼が走り出した。しばらくして戻ってきて、「ちぇ、逃がしたひゃー。」と残念がった。アカインとは犬のこと。赤い毛をした犬のことを言う。その後、彼から衝撃的な言葉を聞く。「あれはマーサンドー(美味しいよ)」とのこと。
 犬を食べるという話は、父母からも聞いていなかったので、「犬を食うのか」と私は驚いたのである。あとになって、沖縄では犬も食用としていて、沖縄の伝統的な薬膳料理には犬肉の料理や猫肉の料理があることを知った。

  以前、北朝鮮系中国人の女性数人と付き合いがあった。彼女らから、朝鮮には犬肉料理が現在でも普通にあり、肉屋さんでは犬肉も普通に売られているということを聞いた。なるほど、犬肉も普通に食えるんだなと認識し、Nのことをその時思い出した。
 羊頭狗肉という言葉がある。「見かけが立派で実質がこれに伴わないこと」(広辞苑)ということだが、「羊の頭を看板に出しながら実際には狗(イヌ)の肉を売ることから」(同)とある。つまり、羊の肉は上質で、犬の肉は下等ということ。犬肉はまあ、あまり美味しいものではないということだ。そうであろう。美味しければ、犬肉料理はもっと一般的になっているはず。私が子供の頃は、沖縄は全体が貧乏であったが、その中でも特に貧乏だったNにとっては、犬肉でもご馳走だったのであろう。

 
 リュウキュウイヌ(琉球犬):ネコ目の家畜
 イヌ科の哺乳類 琉球列島に分布 方言名:トゥラー、アカイン
 改めて考えると、身近な動物である犬、猫、鼠などの名前の由来が解らない。イヌやネコやネズミという発音からも、犬猫鼠の漢字からも、全く見当がつかない。ウシ、ウマ、ブタ、シカ、クマ、タヌキ、キツネなども不明。それらの動物たちは、人間が名前を付ける以前からそれぞれそれらの名前を持って存在していたかのような感じもする。
 沖縄の方言では、犬のことはインと言う。これは日本語のイヌの沖縄読み。リュウキュウイヌの方言名であるトゥラーは虎、体に虎のように線が入っていることから。アカインは赤犬、赤毛であることから。リュウキュウイヌにはいろんな色模様があるようで、赤いトゥラー、黒いトゥラー、白いトゥラーなどもいるとのこと。
 リュウキュウイヌは猟犬として飼われたとのこと。古くからいて、本土ではほとんど消えてしまったらしい縄文犬の血を、今なお維持しているとのこと。中型犬。

 記:ガジ丸 2006.12.17 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行

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