自由な世界へ
9月のある日、網に囲まれた中にどうやって入ったのか知らないが、一匹のハチがベランダにいて、網の外に出ようと必死こいているのを見た。ガジ丸HPを初めて以来、虫にも優しくなっている私は、写真を撮った後、自由な世界へと逃がしてあげた。
それから1ヶ月ほど過ぎた10月のある日のこと、社長に頼まれていた仕事を仕上げ、その書類を提出した後、外へ出る。パソコンとにらめっこして疲れた脳と目を休めるために、青空を眺めながらストレッチをやる。その時、目の前を見たことの無い蝶が飛んで行った。そして、数メートル先の軒の上に止まった。すぐにストレッチを止め、カメラを取りに事務所へ入り、再び外へ出ようとしたら、電話中の社長に呼び止められた。その場で待っている。しかし、電話は長かった。10分はゆうに過ぎてからやっと、話ができる。さっき手渡した書類の細かい説明をする。それでさらに10分ほどが過ぎる。
その後すぐに外に出、蝶の止まった辺りを見た。やはりというか、蝶は消えていた。社長の、電話中のあの10分を残念に思いつつ、途中だったストレッチを続ける。するとまた目の前を、今度は目立つ色をしたハチが飛んでいった。ハチは職場の花壇にあるハギの花に止まった。そこにはもう一匹、同じ種類のハチがいた。
それらは、よく見ると、前にベランダにいたのと同じ種類のハチ。自由な世界を飛んでいると、友達にも出会うようである。「良かったね」と私は心から思う。ベランダのハチと職場のハチが同じ固体であったかどうかは不明だが、とにかく、自由というのは動物にとっても、人間にとっても良いことなのである。何者かに支配されることを恐れる私は、自由に飛び回るハチを見て何だか幸せな気分になるのであった。
クロスジスズバチ(黒筋鈴蜂):膜翅目の昆虫
ドロバチ科 本州、沖縄、東南アジアなどに分布 方言名:ハチャ(ハチの総称)
腰の部分が細長いので、見た目はキゴシジガバチの親戚かと思う。しかし、キゴシジガバチはアナバチ科で、本種はドロバチ科。と書きながら、アナバチとドロバチ、何がどう違うのか私には不明。まあ、学問的にはキッパリとした違いがあるのだろう。
壁に泥を塗り固めて巣を作るところもキゴシジガバチに似ている。ただし、キゴシジガバチの巣は横長だが、こちらは縦長の壷形をしているという違いがある。もう1つ、キゴシジガバチの幼虫の餌はクモ類だが、本種は蝶や蛾の幼虫という違いがある。
赤、黄、黒の縞模様で、形も独特なので虫に興味を持っていればすぐにそれと判断できる。私もベランダにいるのを見つけて、さすがに名前までは出てこなかったが、図鑑で見た覚えのあるハチだぞと気付く。図鑑を開いた。すぐに正体が判明した。
体長20ミリ。成虫の出現は4~11月。食物は鱗翅目(チョウ、ガ)の幼虫。
横から
巣作り
記:ガジ丸 2005.10.25 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行