臭気は強烈
私が子供の頃、まだ祖父母が生きている頃、祖父母の日常語はウチナーグチ(沖縄口)で、私の父母や、その他大人と言える年齢(戦前生まれとなる)の人達と話す時もほぼウチナーグチであった。父母や伯父伯母たちも同様であったが、彼らは皆、子供達(戦後生まれとなる)と話す時は標準語を使うことが多かった。
標準語を使うことが多かったが、たまにはウチナーグチもあった。物の名前などはウチナーグチになることが多く、例えば、身近なもので言えば、アンダ(油)、シシ(肉)、カマブク(蒲鉾)、イユ(魚)、アタビー(蛙)、トゥイ(鳥)、ゥワー(豚)、マヤー(猫)、イン(犬)、ガジャン(蚊)、フェー(蝿)などたくさんある。私はきっと、祖父や祖母が話しているのを聞いてそれらを覚えている。
カメムシの類を沖縄ではひっくるめてフーと言う。フー、これは全く記憶が無い。祖父は庭の一角に野菜を育てていて、おそらく、野菜の名前や野菜につく虫の名前などをウチナーグチで発音していたと思う。カメムシもいたはず。でも、フーとは聞いていない。
カメムシは臭いものということは子供の頃に教えられている。その時の名前は確か、ヒーヒリムシだったのではないか。ヒーヒリムシ、屁をひる虫という意。
ミナミトゲヘリカメムシを調べていたら、「臭気は強烈で、長時間にわたって残り続ける」とあった。臭いカメムシの中でも強烈って、いったいどんな屁?興味ある。
ミナミトゲヘリカメムシ(南棘縁亀虫):半翅目の昆虫
ヘリカメムシ科 九州~沖縄島、西表島、台湾、中国などに分布 方言名:フー
名前の由来、カメムシは「頭部の突き出た形がカメに似ていることから」、ヘリは「体の側面の縁が出ているカメムシの仲間ヘリカメムシ科の総称」。ミナミトゲについて資料はないが、ミナミは九州以南に分布することから南だと思われ、トゲはハリカメムシの類でいう肩の針が棘状になることからであろうと推測できる。
ミカン類の害虫として知られ、未熟果からも成熟果からも吸汁するとのこと。特に8月から10月頃にミカン園でかなり発生するらしい。8月から10月頃と言えば、ちょうどシークヮーサーの未熟果から成熟果の時期となる。
体長は18~23ミリ、成虫の出現時期は5月から10月。「臭気は強烈で、長時間にわたって残り続ける」と『沖縄昆虫野外観察図鑑』にあった。強烈な臭気に「いったいどれくらい?」と興味はあるが、敢えて嗅ぎたいとは思わない。
記:2014.10.11 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『琉球列島の鳴く虫たち』大城安弘著、鳴く虫会発行