共存共栄を考えない奴
今年もまたシークヮーサーの季節がきた。職場のシークヮーサーの木は今年もまた、たくさんの実をつけてくれている。今週から少しずつ収穫して、しばらくは泡盛のシークヮーサー割りが私の酒となる。シークヮーサーは砂糖と白ワイン、バターを加えてソースになり、チキンソテーやポークソテーなどの酒の肴にも使われる。
私の今住んでいるアパートから徒歩で20分位の所に伯父の家がある。その家の庭にも高さ3m位のシークヮーサーの木が2本あった。それらも、量は多くは無かったが、毎年実をつけてくれていた。その2本とも今は無い。10年ほど前に枯れてしまった。
当時、既に伯父は亡くなっていて、伯母と従姉が2人で住んでいて、庭の手入れもやや疎かになっていたのだが、その伯母からある日電話があって、
「シークヮーサーの木が弱っているみたい、見に来て。」ということなので、行って、見た。シークヮーサーは2本とも、その根元に白い木屑が落ちていた。虫の幼虫が幹に穴を開けた際の細かい木屑だ。シークヮーサーが弱っていると電話があった時に、その原因はすぐに予想できたのだが、その予想道りであった。虫はカミキリムシ。
カミキリムシの幼虫はシークヮーサーの幹を食べながら太く長い穴を開け、そこに巣を作る。穴を開けるとき、木が枯れない程度に開けてくれれば、木は枯れずに済む。そうすれば、来年もまたそこに巣を作ることができ、カミキリムシにとっても良いことではないかと思うのだが、カミキリムシは共存共栄を考えない奴なのである。
まあ、ちっぽけな虫の脳味噌のことなので、共存共栄といった知恵が働かないのはしょうがないのであろう。人間はしかし、虫と違ってでっかい脳味噌。富のために地球環境を破壊するなんてことは、住処を無くすバカな行為であると知っているはず、だろ?
ゴマダラカミキリ(胡麻斑天牛):甲虫目の昆虫
カミキリムシ科の甲虫 体長30ミリ内外 方言名:カラジクェー
日本全土に分布する。本土では6~9月に出現とあるが、沖縄では5月から出る。
カミキリムシは髪切虫とも漢字で書くが、天の牛とは面白い。長い触角を牛の角に見立てたのかもしれない。方言名のカラジクェーは髪食う者という意味。カラジクェーはカミキリムシの成虫一般の呼び名だが、本種の幼虫のことを特にマミクムシという。クスノハカエデ(方言名:マミク)の幹が本種の幼虫に食害されやすいことから。
カミキリムシには鋭い大顎があって、噛む力が強い。その幼虫もまた「てっぽうむし」との別名もあるように木の幹の内部に潜り込み、トンネルを掘るようにして食害する。沖縄の特産品シークヮーサーも。しばしばカミキリムシに食われて枯れ死する。
ゴマダラカミキリは、その色模様から目立つということもあるだろうが、普通に良く見かけるカミキリムシで、私にも馴染み深い奴である。
顔
交尾
記:ガジ丸 2005.8.14 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行