マース煮が一番
若い頃バイトしていた職場に、釣大好きの先輩が数人いた。彼らは朝早く起きて、出勤前に釣をしてくることもたびたびあった。十分の釣果があった日の夕方からは、その魚を肴に宴会となることも珍しくなかった。彼らが釣ってくる魚は護岸から釣れるチヌ、カーエー、エーグヮーなどが多く、釣った本人たちが捌いて、概ね刺身で食した。
その時、エーグヮーの刺身を、確かに私も食べていると思うが、どんな味だったかさっぱり覚えていない。その後、飲み屋さんなどでエーグヮーを何度も食べているが、飲み屋さんで出されるエーグヮーの料理は、そのほとんどがエーグヮーマース煮である。というわけで、記憶にある限りでは、この魚はこの料理でしか、私は味を知らない。おそらく多くのウチナーンチュにとって、「エーグヮー」と言えば「マース煮」なのだと思う。
先月、養秀会(首里高校の同窓会)が主催する「宮良長包メロディー・・・」コンサートがあった。そのチケットを1枚余分に持っていたので友人のTを誘った。コンサートは唱歌の演奏が中心だったので、唱歌にはあまり興味の無い私は少し退屈し、あと2、3曲残した時点で、Tと共に会場を出、そのまま近くの居酒屋へ飲みに行く。
互いの近況の話をしつつ、その時、酒の肴に私が選んだウチナームン(沖縄物)はエーグヮーのマース煮。エーグヮーとは、和語で言うとシモフリアイゴのこと。マースとは塩のこと。したがって、エーグヮーマース煮はシモフリアイゴの塩煮ということになる。この魚、多少臭いのだが、マース煮ではその匂いもいくぶん残るのだが、しかしながら、マース煮でその本領を発揮するらしく、食べると美味い。
出てきたエーグヮーマース煮をすぐに写真に撮る。動物としてのエーグヮーを紹介している「アイゴ」でもこの写真を使った。私自身、釣へは滅多に行かず、身近に釣好きの人も今はいないので、生のエーグヮーを見る機会はほとんど無いのである。
記:ガジ丸 2006.4.16 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行