天然記念物の陸貝
沖縄の海岸へ行くと、どこにでもヤドカリはたくさん見られる。岩場の潮溜まりでガサゴソ動いている小さな奴はいくらでもいる。その多くは水生のヤドカリ。キャンプで砂浜にテントを張ると、夜、外でガサゴソ音を立てる奴がいる。我々が食べ残したものを漁りにくる奴、オカヤドカリである。これは大きな奴である。浜の天然記念物である。
大きな(成長した)オカヤドカリは、アフリカマイマイ(別項)の貝殻を宿貝としているものが多い。アフリカマイマイが大きいからである。その殻の中に閉じこもっているときはオカヤドカリなのかアフリカマイマイなのか判別できない。が、顔を出すと一瞬で判る。一瞬の内に私の心も嫌な気分になったり、楽しい気分になったりする。アフリカマイマイは気味悪いが、オカヤドカリは、表情に愛嬌があって可愛らしく感じる。
ヤドカリを表すウチナーグチ(沖縄口)はアーマンと言う。これはおそらく水生のヤドカリもオカヤドカリも区別しない。アーマンは実物も目に慣れ親しいが、アーマンという言葉も子供のから、これは耳に慣れ親しい。親はたまに口に出す言葉であったが、一緒に海で遊んでいる友人たちがアーマンと言っていたわけでは無い。『浜ぬアーマングヮー』という民謡があった。「浜のヤドカリ(グヮーは小さく可愛らしいものという修辞)」という意味。この歌のお陰でアーマンは耳に親しい。歌に関してはいずれ別項で。
オカヤドカリ(陸宿借・陸寄居虫):ヤドカリ亜目の甲殻類
オカヤドカリ科のヤドカリ 奄美諸島以南、インド、他に分布 方言名:アーマン
陸(海岸から離れた場所にもいる)に生息するヤドカリなので、オカヤドカリという名前。ヤドカリは宿借りという意味で、他の巻貝の殻を借貝にする。脱皮成長して大きくなるたんびに宿貝を替えるので、服借りという名前がよろしいのでは、と私は思う。
幼生は海中で成育し、親になると陸上生活をする。沖縄で見られるオカヤドカリの仲間は、本種の他にナキオカヤドカリ、ムラサキオカヤドカリがいる。じつは、写真のものがこれらのうちのどれなのか私には判別できなかった。文献に写真が無かったのである。
ナキオカヤドカリは本州中部以南、南西諸島、インド、西太平洋などに広く分布している。日本でも普通に見られことができる。音を出すのでこの名がある。
ムラサキオカヤドカリは小笠原諸島、九州南部以南、南西諸島などに分布する。この種も音を出す。体色が紫色をしているのでこの名がある。日本で最も普通。
今年(07年)6月に発見。07年10月19日追加
ヤドカリは宿借、または寄居虫と書き、「エビ目(十脚類)ヤドカリ亜目の甲殻類のうち巻貝の空殻に入る種類の総称」(広辞苑)とのことである。成長するにつれて宿貝を替えていく。ヤドカリは(食って食えないことはないかもしれないが)普通食えないが、ヤドカリ亜目の仲間には、あの、美味で知られるタラバガニがいる。美味かどうかは知らないが、食用には十分適したヤシガニや、また、アナジャコもこの仲間である。
記:ガジ丸 2006.8.21 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集