ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

アイゴ類

2011年05月06日 | 動物:魚貝類

 和名より方言名が有名

 バッタの類はシェー、チョウ、ガの類はハベル、トンボの類はダーマーなどと、いずれもたくさんの種がいるのにも関わらずウチナーグチ(沖縄口)では総称する。多少の違いはどうでもいいや、大雑把に似ていれば同じ名前でいいや、という気分なのであろう。
 ところが、魚には、見た目がよく似ていても違う名前のついているものがある。バッタやチョウ、ガ、トンボなどはいてもいなくてもどうでもいいようなものだが、魚は生きる上で欠かせない重要なものなので、そうなったのであろう。

 シモフリアイゴ、ゴマアイゴ、アミアイゴはいずれもアイゴ科の魚で、近海に住み、ウチナーンチュには馴染み深い魚。けれども、シモフリアイゴ、ゴマアイゴ、アミアイゴなどという名前を知っているウチナーンチュは少ない。私も今回、初めて知った。でも、これらをウチナーグチの名前、エーグヮー、カーエー、スクなどと言うと、「なーんだ、そのことか」と多くのウチナーンチュが認識できるのである。
 この3種はよく似ている。少なくともアゲハチョウとタテハチョウの違いに比べれば、それらはほとんど同じものと言ってもいいくらいである。それでも、この3種には別々の名前がついている。どれも庶民の食料となり、名前をつけるほどに大事だからである。

 
 シモフリアイゴ(霜降藍子):食用魚
 アイゴ科の海産硬骨魚 奄美以南に分布 方言名:エーグヮー
 体の模様は状態によって変化するらしいが、小さな白点が全体に散らばっているものをよく見る。その模様からシモフリという名がつく。
 全長30センチ。内湾域に生息する食用魚で、磯臭さはあるが美味しい魚。背びれや臀びれに何本もの棘があり、刺されると非常に痛い。食性は付着海藻類。
 
 エーグヮーマース煮 マースは塩のこと。

 ゴマアイゴ(胡麻藍子):食用魚 ※写真無し
 アイゴ科の海産硬骨魚 奄美以南に分布 方言名:カーエー
 体にオレンジ色の斑点が散らばっているところからゴマアイゴという名。アイゴの仲間を英語ではラビットフィッシュと言うらしい。口がウサギの口に似ているとのこと。
 全長40センチ。内湾域だけでなく、河川の下流域にも生息する。近場にいて美味しいので釣り人たちに狙われる魚。シモフリアイゴと同じく、背びれや臀びれに何本もの棘があり、刺されると非常に痛い。食性は付着海藻類。

  アミアイゴ(網藍子):食用魚
 スズキ目アイゴ科 全長15センチ 方言名:スク
 体に網目模様があるのでアミアイゴという名。
 6月頃、幼魚が大群でサンゴ礁域へ入ってくる。幼魚は3~4センチほどの大きさで、それを網で掬い、塩漬けにする。これが沖縄の有名な酒の肴、スクガラスである。
 成魚の全長は15センチ。内湾からサンゴ礁域に生息する。
 
 スクガラス ガラスは塩辛のこと。島豆腐の上に乗せて出される料理のことをスクドーフと言う。

 記:ガジ丸 2006.3.20 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集