ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ソーミン汁

2011年04月04日 | 飲食:食べ物(料理)

 ルーイぞうめん

 ウドンやソバのかけウドンやかけソバのように、茹でたソーメンに熱い出汁をかけたものを沖縄では(一般的かどうか?少なくとも私の周辺では)ソーミンジル(汁)と言う。正式には何と言うのかを調べると、『沖縄大百科事典』に「ルーイぞうめん」とあった。「ルーイぞうめん」と表記されているが、ウチナーグチ(沖縄口)では「そうめん」はソーミンなので、おそらく発音は「ルーイソーミン」だと思われる。
 『沖縄大百科事典』の「ルーイぞうめん」の説明は、「茹でたソーメンの上に豚肉、昆布、椎茸、薄焼き卵などを乗せ、熱い汁を注ぐ・・・(中略)・・・結婚式や誕生祝いなどめでたい時によく出される」であった。倭国のニュウメン(煮麺)に近いものかもしれない。私の母は、豚肉と鰹節で出汁をとって、塩と醤油で味付けした汁を使い、豚肉、椎茸、細切りした薄焼き卵、青ネギを乗せた。確か、何かの行事の時に出た。

  「ルーイソーミン」の「ルーイ」、私は初めて聞くウチナーグチ、何のこっちゃ?と思って調べる。ruuhwiが沖縄語事典にあって、「竜樋」と字があてられ、「首里場内、瑞泉門の下にある竜の形をした樋」とのこと。そこの水が大変美味しいとのこと。「そこの水のように大変美味しいから」なのか、その場所で宴会があり、そこで初めて披露された料理だからなのか、名前の由来は、資料が無く不明。
 ちなみに、「樋」とは、「水を導き送る長い管」(広辞苑)、または「とい」(〃)のことを言うが、沖縄語の「樋」は「樋川」の川を略したものと思われる。「樋川」はヒージャーと読み、「水の湧き出るところ」(沖縄語辞典)という意味を持つ。ルーイは知らなかったが、ヒージャーは山羊という意味で子供の頃から何度も耳にしていて、今でも普通に口から出る言葉だが、「水の湧き出るところ」という意味でもよく知っている。
 
 正式にはルーイぞうめんという名前だが、私も、私の親も、親戚も、友人知人の誰もルーイぞうめんと言ったことは無いし、聞いたことも無い。庶民の呼び名はソーミン汁、私の母もよく作っていた。母の作るソーミン汁は美味しかった。
  実家を出て一人暮らしを始めてからは、母のソーミン汁を食べる機会も減って、その存在も忘れかけていたのだが、今から3年前(2007年)、料理屋さんで、お口直しみたいにしてソーミン汁が出され、久々に食べた。見た目は母の作るソーミン汁と一緒、それなりに美味しかったのだが、母のものとは少し違う。何か一味足りない。
 今年9月の模合(正当な理由のある飲み会)は、メンバーのMTの家で行われた。MTの女房のMMは料理上手(若い頃から沖縄料理は上手かった、私の母には及ばないが)である。その日、彼女のソーミン汁が最後に出された。料理屋で出されたソーミン汁に負けない美味しさ、だけどやはり、母のものとは少し違う。何か一味足りない。

 母が三年前に、父が今年亡くなって誰も住む人のいなくなった実家に、お中元やお歳暮で頂いたソーメンがたくさんあった。ソーメンにも賞味期限がある。で、持って帰って、食べている。お陰で、芋食って生きて行こうという芋生活ができずにいる。
 9月以降、芋の代わりにソーメンを食っている。ソーメンをいろいろ工夫して食っているが、ソーミン汁も数回作った。豚肉から出汁を取り、カツオ出汁も加えて、塩と醤油で味を調えて・・・という母の作り方を真似て作っているが、何度やっても母のものとは少し違う。何か一味足りない。きっと何かコツがあるのだろう。今となっては遅いが、生きてる間に、主婦歴50余年の母の技を習っておくべきだった。
 
 

 記:ガジ丸 2010.10.24 →沖縄の飲食目次