サトウキビの敵
イナゴの大群が地平線の向こうからやってくる。それは黒い塊、やがて、空を覆い隠すほどの大きな塊となって穀物のある場所へ降り立つ。彼らが去った後は、農民が苦労して育てた米や麦のほとんどが食い荒らされ、大被害を蒙る。といった光景を、題名は忘れたが、映画のシーンで見たことがある。恐ろしいことである。
イナゴはよく見かける。職場の庭の、草むらになったようなところにたくさんいる。そこで見られるイナゴはハネナガイナゴという種類、サトウキビの害虫となっているらしいが、野原の雑草にいるのが多い。サトウキビの害虫としては、タイワンハネナガイナゴの方がタイワンのつかないハネナガイナゴの上手を行くようである。タイワンツチイナゴもまた、サトウキビの害虫となっているようだ。それらのイナゴたちも、じつは、サトウキビよりイネの方が好きであろう。田んぼの少ない沖縄では、イナゴたちもしょうがなく、粗食に耐えているなのかもしれない。それでも、害虫に変わりは無い。サトウキビは沖縄の基幹農産物である。サトウキビの敵はウチナーンチュの敵と言っていい。
ハネナガイナゴ(翅長蝗):直翅目の昆虫
バッタ科イナゴ属 本州中部以南、南西諸島などに分布 方言名:シェー
翅が腹部よりも長いのでハネナガという名前。蝗は稲子とも書く。
イナゴの仲間は稲の害虫であるが、稲のほとんど無い沖縄ではサトウキビの害虫となっている。他にススキ、チガヤなどイネ科の雑草についているのをよく見る。
体長40ミリ内外。5月頃から成虫が出現。
タイワンハネナガイナゴ(台湾翅長蝗):直翅目の昆虫
バッタ科イナゴ属 南西諸島、台湾、中国などに分布 方言名:シェー
翅が腹部よりも長いのでハネナガという名前。タイワンは南方系のといった意。
食草が同じイネ科の植物で、ハネナガイナゴと混生する。職場の草むらではハネナガイナゴがほとんどだが、サトウキビ畑では本種の方が普通に見られるらしい。で、サトウキビの害虫として知られているらしい。
体長雄30ミリ内外、雌37ミリ内外。成虫の出現時期は周年。
記:ガジ丸 2005.12.5 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行