ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

島豆腐

2017年02月03日 | 飲食:食べ物(材料)

 登場数NO1

 床を傷付けてはいけない、壁を傷付けてはいけないなどと厳しい入居条件によって、壁を引っ掻いてはいけない、床に物を落としてはいけないなどと生活するに多少窮屈な面はあるが、新居は静かな環境にあり住み心地良く、部屋はきれいだし、庭もある(自分好みに整備済み)し、駐車場は2台停められるし、私は大満足している。
 2週間ほど前、正確に言うと1月17日、新居の良い点をもう1つ発見した。じつは、その良い点はそれより1ヶ月前からその予感はあった。新居に住み始めて引っ越しが取り敢えず落ち着いてからの数日後、「トーフー」というラッパの音が聞こえ、豆腐屋さんの車が通った。私が子供の頃は日常の光景だった豆腐行商、今ではごく珍しいもの。
 その日、ラッパの音が聞こえる少し前から私は隣に住む大家さんと大家さんの玄関前でユンタク(おしゃべり)していた。車が家の前に来ると大家さんが声を掛け、豆腐屋の車を止め豆腐を買った。たまたまその日、私はスーパーで豆腐を買っていたので豆腐は要らなかったのだが、豆腐屋の若い(三十代?)お兄さんと少し声を交わした。

 「池田屋豆腐って、スーパーにも置いてますよね?」
 「以前は置いていましたが、今はどこにも置いていなくてこうやって売っています」
 「そうですか、毎日この辺は回っているのですか?」
 「いえ、あちらこちら回っていて、この辺りは毎週火曜日の夕方回っています」
 「そうですか、生憎今日はもう既に豆腐を買っているので、次週に買いましょう」
 「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」

 丁寧な若い男だった。人相も良かった、今時の言葉だとイケメンというかもしれない。私の印象では「信用できる人」であった。その人が作る豆腐、興味を持った。
 で、次の週、正確に言うと12月20日、がんもどきとゆし豆腐(沖縄では有名な豆腐料理、おぼろ豆腐のようなもの)を買った。どちらも値段はスーパーで売られているそれより高めであった。どちらも私の好物なので美味しく頂けた。ただ、がんもどきはスーパーのより多少美味いと思ったが、ゆし豆腐についてはあまり差を感じなかった。
 次の週も豆腐屋の車を止め、その日はがんもと味付けおからを買った。おからも美味かった。その次の週(1月3日)は、正月で豆腐屋は休み。そして、次の週(1月10日)は私が豆腐屋のことを忘れて、スーパーで豆腐を買ってしまってパス。
 そして1月17日、遠くから聞こえてくる「トーフー」というラッパの音に気付き、音が近くに来たところで表に出て、運転手の若い男に手で合図し車を止め、「今日は本命を食ってみよう」と決めていた通り、島豆腐を半丁購入する。

 島豆腐は暖かかった。作り立てを車に載せて販売しているようだ。沖縄ではよくアチコーコードーフと言ったりする。アチコーコーは熱いという意であるが、「作り立て」という意も言外に含まれていると思う。子供の頃に行商の豆腐をそう呼んでいた。
 子供の頃の記憶では、アチコーコーは美味しい。その記憶が蘇った私は家の中に入ってすぐ、豆腐の角を手で少しちぎり取って食べた。「旨ぇ~」と思った。で、半丁の三分の一を包丁で切り取って皿に載せ、その上に友人Kから頂いた酒盗を乗せ、まだ6時前、外は明るいのにぐい呑みに日本酒を注ぎ、島豆腐を肴に1杯飲んだ。幸せを感じた。

 これまでたくさんの飲食物を紹介してきたが、『沖縄の飲食目次』を改めて見ると島豆腐がまだ紹介されていない。「何てこと!」と思った。島豆腐は、私の食卓に上る登場回数ではおそらくNO1だ。晩酌の肴となる回数でもきっとNO1、晩酌のエネルギー量としては間違いなくNO1だ。そんな島豆腐なのに未紹介だったとは何て迂闊。
 友人E子が大好きな豆腐があって、それは糸満に会社があり、E子のいる浦添まで週に1回(金曜日)出張販売してくれるもの。その豆腐を、たまたま金曜日にE子の店まで行った時などに頂くことがある。E子が言うように美味しい豆腐であると私も感じている。私が時々買い物に行っているCスーパーに那覇市繁多川にある豆腐屋の「国産大豆の島豆腐」なるものがあって、それをたいてい私は購入している。これも美味い。
 E子の勧める糸満豆腐を食べた時にでも、あるいは、繁多川の国産大豆豆腐を食べた時にでも「島豆腐の紹介がまだ」に気付いてもよかったのだが、思いは及ばなかった。何故かと理由をあげれば、どちらも私が頂く時はアチコーコーではないので、池田屋豆腐ほどの感動はなかったからかもしれない。念のため記しておくが、アチコーコーでなくても池田屋豆腐は糸満豆腐や繁多川豆腐に負けることはない、と私の舌は感じている。

 池田屋豆腐の美味さに感動した翌週、正確に言うと1月24日、池田屋豆腐の車が来るのを玄関前で待って、運転手に合図して車を止め、そして、車の写真を撮った。運転手の若い、人相の良いお兄さんが出てくると、先ずは、
 「美味しい豆腐でした。真面目な豆腐ですね。」と褒め、
 「私のような貧乏人には少し値段が高いと思うけど、値段の価値は十分あります」と、さらに褒めた。お兄さんも「他の豆腐より高め」は認識しているようで、それについても肯きながら「値段の価値は十分ある」に喜んでくれ、「ありがとう」を連発した。
 「先週、1口食って、あんまり美味いもんだから早い時間から酒になったですよ。ブログで紹介したいから写真撮ってもいいですか?」と訊くと、
 「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」と言って、車の横のドアを全開にして、電気を点けて、移動販売の全商品が見渡せるようにしてくれた。
     
     

 その時、私は前週と同様の島豆腐半丁と、今回初めての厚揚げを購入した。島豆腐半丁は今回もアチコーコーだった。「やー、これで今日も明るい内から酒だな」と言いながら若いお兄さんに手を振って家の中。そして、その通り、日本酒を飲んだ。
 池田屋豆腐の商品は、島豆腐やがんもの他にも白和え、生ゆば(とても興味があるが540円と高い)、じーまーみ豆腐などいろいろある。チーズがんもなんてのもある。毎週火曜日が楽しみとなった。「火曜日が休肝日になることはないな」と思った。
     

 記:2017.1.31 ガジ丸 →沖縄の飲食目次