私の鍋料理
1年の8割がたはコンロ下の棚に仕舞われている土鍋を、寒くなると出す。出して、もちろん鍋料理をする。鍋料理は手間がかからず、いろいろな味が楽しめて、肉や野菜をバランスよく摂取することもできて、私は大好きである。
私の鍋料理はだいたいパターンが決まっている。初めは湯豆腐、水炊きなど煮汁に味をつけず、ポン酢で食べるもの。水炊きも、最初は魚介類と野菜、きのこなどのあっさり系で、次に鶏肉を使った脂系となる。ここまでは煮汁に味はついていない。ただし、出汁は魚介、肉、野菜などからたっぷり出ている。
鶏肉の水炊きが終わると、煮汁に味をつけて、ちり鍋となるか、あるいは、おでんになる。おでんには2種類あって、最初は倭国風の練り物を中心としたあっさり系、次に足ティビチ(豚足)を加えたこってり系の沖縄おでんとなる。
沖縄おでんの際は、レタスやチンゲンサイなどの葉野菜をたっぷり、何度も使う。野菜には煮汁が沁み込む。そうやって煮汁も摂取していく。その頃の煮汁は足ティビチからのゼラチンがたっぷり含まれているので、コラーゲン摂取ということになる。足ティビチを食い終わったらお決まりの雑炊となって、煮汁も一滴残さずお腹の中に収まる。
以上で、私の鍋料理は終わるが、湯豆腐から雑炊を食べ終えるまで、だいたい4週間が経過する。4週間ずっと鍋料理というわけだが、ちっとも飽きることは無い。
実家にも土鍋はある。だが、鍋料理を食べた経験は少ない。足ティビチの入った沖縄おでんはあったが、水炊きなどは記憶に無い。すき焼きは時々あったが、それは土鍋では無く、鉄製のすき焼き鍋を使っていた。私の母は料理上手だったので、鍋料理ができないというわけでは無く、おそらく父の好みなのであろう。
父は、今でもそうだが、好き嫌いが多く、特に、野菜や魚介類に嫌いなものが多くて、そのため、鍋料理が少なかったのだと思われる。すき焼き専用鍋があったのは、父が牛肉大好きで、すき焼きも大好物だったからに他ならない。
元々、沖縄には鍋料理なるものは無かったと思われる。沖縄の伝統焼物、壷屋焼きにも土鍋は見たことが無く、琉球料理の本を見ても、私が食べているような鍋料理は無い。ただし、シンメーナービという鉄製の大きな鍋で山羊を煮込んだ料理はある。名前はヒージャー(ウチナーグチで山羊のこと)汁と言うが、料理の形態は山羊鍋といっていい。
ヒージャー汁は、滋養強壮に効き、肉体労働者が概ね好んで食べる。真夏の暑い中、肉体労働をしてブチクン(気絶しそうな状態)となった者にとって、命の薬となる。
現在では、多くの飲み屋さんのメニューに鍋料理がある。ヒージャー汁は季節を問わないが、鍋料理は概ね冬限定である。私の場合は全くそうである。暑い時期に熱い鍋料理なんて、考えただけでブチクンになりそうだ。ヒージャー汁が必要になる。
記:ガジ丸 2009.1.13 →沖縄の飲食目次