即席酒の肴
チキアギはウチナーグチ、ヤマトゥグチではツケアゲ。付け揚げは「あげもの。てんぷら。」(広辞苑)のことで、鹿児島地方では「薩摩揚のこと。」(〃)とのこと。
魚のすり身に塩、味醂、砂糖、澱粉を混ぜてこね、成形して、蒲鉾は概ね蒸す。蒲鉾は蒸すが、チキアギはゴボウ、ニンジンなどを具に混ぜ、平たく成形し、油で揚げる。
家庭料理では薄くスライスしてトーフチャンプルー、タマナーチャンプルーなど炒め料理に加えることが多い。もちろん、そのまま食べることもできるが、焼いて余分な油を落として、醤油やポン酢などをつけて食べると、良い酒の肴になる。
沖縄の蒲鉾はチキアギのように油で揚げたものと、普通の蒲鉾のように蒸したものとに大きく分けられる。普通の蒲鉾はカマボコをそのままウチナーグチ読みしてカマブクと言い、野菜などの具は混ぜない。カマブクの材料に玉子を練りこんで蒸したものはカステラカマブクと言い、カマブクもカステラカマブクも行事の際の御馳走となる。
チキアギと同じく野菜などの具材を混ぜたものを一口大にして、油で揚げたものは「ちぎり揚げ」と言い、野菜などの具を混ぜないで棒状に成形し、油で揚げたものはマルカマブコ(丸蒲鉾)と言う。沖縄の食堂でソバを注文すると沖縄ソバが出てくるが、○○ソバなどと冠の付いていない普通の沖縄ソバであれば、ソバの上には刻んだ青ネギ、煮付けた三枚肉、紅ショウガの他に、スライスしたマルカマボコがたいてい乗っている。
カマブクは行事の際に用いると上述したが、その行事とは盆正月だけでなく、シーミー(清明祭)や、 各種法事など、ほとんどの神事、仏事の行事が含まれる。カマブクとカステラカマブクは、仏前への供え物となるウサンミ(御三味)の中に入っている。
めでたい行事では普通の白いカマブクと並んで、食紅で赤く染められた赤いカマブクも使われる。法事の際は白いカマブクのみ。カステラカマブクは玉子が入っているので薄い黄色をしているが、これはめでたい時も法事の時も使われる。
チキアギやマルカマブクのように油で揚げられたものは、ウサンミの中に加わって仏前へ供えられるということは無い。だけど、日常の食卓ではこっちの方が多い。子供の口にはあっさりした味のカマブクより、こってりした味のチキアギが美味いと感じた。オジサンとなった今は、あっさりカマブクの方が好きになっている。
記:2011.1.23 ガジ丸 →沖縄の飲食目次